第八章:共産主義が引き起こした政治の混乱
内 容 |
序文 |
1.共産主義は人類を壊滅させる政治 |
2.共産カルトに染まった政治 |
3.共産主義政治の不変の法則-憎悪と闘争の推進 |
4.暴力と虚言:共産主義支配の方法 |
5.全体主義:共産主義政治の末路 |
6.共産主義が欧米にしかけた全面戦争 |
序文
今日、世界のすべては政治と何らかの繋がりがある。政策、法律、事件、スキャンダルに至るまで、すべてが大衆を熱狂させることができる。大統領選ともなれば、世界中の人々が釘付けになる。
共産主義の政治と言うと、多くの人が共産国を連想し、またそれらの国家でさえもすでに共産主義を実践していないと考える。しかし、共産主義は、社会主義、ネオ・自由主義(新自由主義)、進歩主義などと名前を変え、変貌しながら存在している。詳細に調べれば、共産邪霊がすでに世界を掌握していることが見えてくるだろう。
自由社会にいる人たちは、表面的には共産主義の害を理解しているように見える。しかし、『共産党宣言』の出版から170年が経った今、諸国の政府は公に、あるいはこっそりと、マルクス主義を実践している。ある部分においては、自由社会の方が、共産主義を掲げる国家よりもマルクス理論を忠実に実践している。
アメリカは自由社会のリーダーであり、反共産主義の砦である。しかし、2016年の大統領選では、あからさまに社会主義を提唱する人物が当選しそうになった。アンケート調査によると、半分以上の若者が社会主義を支持すると回答している。【1】
ヨーロッパでは既に社会主義が主流の政治勢力となった。あるヨーロッパ議員は、「今日、ヨーロッパは民主、法治、福祉の混合国家である。大多数のヨーロッパ諸国はそれを擁護するだろう。イギリスのトーリー党は首を切られない限り、国民健康保険サービスに関与することはできない」と言った。【2】
共産国家では、共産邪霊が絶大な権力を振るう。邪霊は国家を利用して、大量虐殺、伝統文化の破壊、道徳の堕落、正統な修煉者に対する迫害を行う。その目的は、人類の壊滅である。
東欧の共産主義は没落したが、共産主義のイデオロギーは存続した。スパイによる転覆と破壊が横行した後の冷戦時代、共産邪霊は大陸のあちこちに蔓延した。
共産邪霊は欧米で政権を奪取することはできなかったが、社会主義の政策や暴力の助長、伝統文化の破壊、社会不安の扇動により、社会を転覆させることに成功した。これはすべて、西洋社会に悪魔の敷いた道を歩ませ、人類を壊滅させるためである。自由社会のリーダーという観点から、われわれはここで主にアメリカの状況について検証する。
1.共産主義は人類を壊滅させる政治
共産主義は、共産国家の独裁政治だけに留まらない。われわれが何度も強調しているように、共産主義は邪霊による超常的な力である。それは邪な人間の思考を操り、愚かな大衆を騙し、自分の代理人たちを人間界で働かせる。表面的に別の形式を装いながら、邪霊はかつて自由だった欧米社会を乗っ取ったのである。
a. 国家権力で粛清と大虐殺を行う共産主義
東側の多くの国では共産主義が権力を奪い、政治を支配している。大虐殺、内部闘争、党内粛清、外国政府の転覆にしても、共産党の目的はすべて権力の維持と影響力の拡大である。共産政権は軍、警察、裁判所、刑務所、教育、メディアなど全てを掌握し、自国民の道徳を堕落させながら迫害を加える。
独裁的な共産主義は大々的な宣伝活動を次々と打ち出して人々を迫害し、その暴力のルールを維持してきた。例えば旧ソビエトのグラーグ(強制労働収容所)、政治の粛清、内部闘争、中国共産党で行われた10回に及ぶ内部闘争、また政治運動による中国人大虐殺などである。最近の大規模な宣伝活動は、法輪功に対する迫害である。元国家主席の江沢民は中国の財源の4分の1を消費して法輪功弾圧を行った。
共産党メンバーは、共産主義の政策がすべて権力に結びついていることをよく理解している。共産主義の生みの親であるマルクスとエンゲルスは、パリ・コミューン(パリ市の革命自冶体)の失敗から、プロレタリアート(労働者階級)を指導する独裁政治が必要だと感じていた。レーニンはそれを重く受け止め、暴力で世界初の共産独裁国家を樹立した。スターリンと毛沢東は、虚言、銃口、プロパガンダ、陰謀で権力を奪い、残虐な政権を維持した。絶対的な権力を手にした共産党は自由に人を殺し、ほしいままに壊滅することが可能になったのである。
b. ヨーロッパとアメリカに広がる社会主義のイデオロギー
ヨーロッパはすでに、社会主義政策とそのイデオロギーに支配された。一方、アメリカは特殊である。19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパ中に共産主義が広がったが、アメリカに対する影響は少なかった。1906年、ドイツの経済学者ヴェルナー・ゾンバルト(Werner Sombart)は、『なぜアメリカに社会主義がないのか?』【3】という本を執筆している。しかし、今は状況が大きく変化した。
2016年アメリカ大統領選で、二大政党のうちのある候補者は、公に社会主義を奨励した。共産主義にとって、「社会主義」とは単なる共産主義の「初期段階」を意味するに過ぎない。共産主義と言えば、かつてアメリカでは軽蔑されていたはずである。しかし、その候補者は、人々が「社会主義者」という言葉に神経質になりすぎていると発言した。この候補者は、政党内のリーダーにまで上り詰めた人物である。
2016年、大統領選宣伝活動の最後に行われた調査によれば、主要な左派政党の支持者のうち、56%が社会主義に肯定的な印象を持つと答えた。これは、2011年にピュー・リサーチ・センターが発表した傾向が続いていることを示している。【4】 ピューの調査によれば、30歳以下のアメリカ人のうち、49%が社会主義に対して肯定的な印象を持つ一方、資本主義に対しては47%にとどまった。【5】 つまり、昨今の若者は共産主義に対する理解が浅く、全体的にイデオロギーが左に傾いているということである。
欧米が社会主義に対して憧れを抱いている様子は、初心な若者たちがソビエトや中国で共産主義に熱中した時と似ている。若い世代は自国の歴史、文化、伝統に対する理解が浅い。社会主義は彼らにとって、より優しくて人間的に映り、それに対する警戒心は全くないようだ。20世紀、共産主義は大嘘を宣伝したが、21世紀になってまたもや同じ事を繰り返そうとしている。
「人はそれぞれ各人の最高の能力に応じて社会に貢献するが、消費する時は各人の必要性に応じてしか受け取らない」。マルクスの有名な言葉は、北欧のような、寛大な社会保障を夢見る若者を騙すのに十分だった。北欧の国々では多くの社会問題が噴出しているが、制度を根本から改革しようとしても、すでに社会保障の恩恵を受けている多くの有権者の反対に遭う。その結果、選挙で当選するのは常に社会保障の増大、重税、政府の介入を公約する政治家である。
経済学者のミルトン・フリードマン(Milton Friedman)は言った。「自由より平等を優先する社会は、そのどちらの恩恵も受けないだろう。平等より自由を優先する社会は、高い度合で、その両方を受けるだろう」【6】
手厚い社会保障を推進する国家は、ますます政府を増大させ、有権者から自由を奪っていく。これはまさしく、共産邪霊が人類を奴隷化するための重要な計画の一部である。すべての国家が北欧を模範とする社会主義になれば、世界は民主主義から全体主義へと一歩踏み出したことになる。社会主義の「初期段階」が達成されれば、次は政治家のリーダーが共産主義を実施する段階に入る。私有財産と民主主義が廃止される。社会福祉国家が突然、圧政国家へと変貌するのだ。
c. 政党、立法府、政府、最高裁判所の支配を目論む左翼
厳格な権力分立が確立されたアメリカには、長い民主主義の伝統がある。このような政権を支配することは、東側の国家ほど簡単ではない。欧米を支配するため、邪霊は間接的な方法で政府機関に働きかけ、内通者の開拓を行った。
複数政党制を導入しているアメリカは、二大政党に支配されている。共産主義者は政治の主流に潜り込むため、政党の一つあるいは両方に近づき、アメリカ議会の投票を左右した。また、彼らは政府や裁判所の要職に就き、影響力を行使した。共産主義によるアメリカ政府への浸透はかなり深刻だ。
安定的な投票数を獲得するため、アメリカの左派政党は高所得層とそうでない人々との格差を強調し、敵意をけしかける。その一方で、移民、LGBT(性的少数者)、女性、マイノリティーなどの「弱者」グループを取り込んだ。左派政党は、あらゆる社会層の弱みにつけ込み、共産主義の思想を宣伝し、神が人間に与えた道徳を踏みにじった。左翼に取り込むために、彼らは不法移民をも擁護するのだ。
左翼運動を長く支持してきたある億万長者は、アメリカ大統領選の左派候補者と、主要な左派政治家たちに莫大な資金を提供した。その中でも重要なポストはアメリカ国務長官である。この地位は選挙情勢や紛争を監督するポストである。その億万長者は惜しげもなく大金を支払い、左派政治家を長官のポストに就かせたのである。【7】
左翼政権は不法移民による犯罪に目をつぶる。刑罰から逃れられるように、移民を保護しようとする。左翼の前大統領は、500万人の不法移民に対する恩赦を提案した。しかし、最終的にその草案は最高裁判所で棚上げにされた。
また、左派政党は不法移民の選挙権を獲得しようと奮闘している。もちろん、その動機は移民の利益などではなく、左派政党を支持する有権者を増やすためである。2017年9月12日、アメリカ東部のある市政府は、永住権保持者、学生、労働ビザ保持者、不法移民を含むすべての非市民にも投票権を与えると決定した。このニュースはアメリカ全土に広まり、選挙制度を変革するものとして大きな注目を集めた。【8】
共産邪霊の影響のもと、アメリカの左派政党はこそこそと有権者を抱き込み、政治的な支配力を強めている。アメリカの将来は、そのバランスにかかっている。
d. 左派政権が推進した社会主義と歪んだ政策
前回の左派政権は、共産主義と社会主義の深刻な影響を受けていた。前大統領を支持した多くの団体は、社会主義組織と密接な繋がりがあった。
前大統領は、現代版マルクスと言われるソウル・アリンスキー(Saul Alinsky)の信奉者である。大統領に当選すると、彼は極左シンクタンクの顧問を採用した。彼が計画した国民健康保険は、それに登録しない人に罰金を科すというものだった。彼はマリファナ(乾燥大麻)や同性愛を合法化し、トランスジェンダー(性同一性障害)の軍役を許可する政策を実施した。
カリフォルニア州議会が左翼に独占されていた頃、一部の議員は共産党の政治参加を禁ずる法律を廃止しようとした。これはベトナム系アメリカ人たちの強い反対に遭い、失敗に終わった。
前政権はさらに、「トイレ法」という、とんでもない政策を打ち出して、人間関係を混乱させた。これは、トランスジェンダーがその身体的特徴に関わらず、トイレの性別を選べるというものだ。つまり、自分を女性と認識する男性は、女性トイレを利用することができる。これに伴い、アメリカ全土の公立学校でトイレ法が実施された。この政策に従わない学校は、州政府からの財政支援を失うことを意味した。
2.共産カルトに染まった政治
数千年間、政権の主な形態は君主制度であり、王の権利は神から与えられていた。天は王となる者に神聖な権力を授けた。皇帝や王たちは神と人間の仲介役として、神聖な役割を担っていたのである。
今日、多くの国家は民主主義によって成り立っている。実際のところ、民主主義とは人々に権力があるわけではなく、人々から選ばれた人間が権力を握る。大統領選は民主主義のやり方である。就任後、大統領は政治、経済、軍、外交などあらゆる分野で権力を行使する。
しかし、民主主義はよい人物が当選することを保障するものではない。社会の道徳が滑落する中、当選するのは中身のない、大げさな美辞麗句を並べる人物、あるいは身内びいきをする人物になるかもしれない。神が定めた道徳基準を人間が維持できなければ、民主主義が引き起こす損害は計り知れない。選挙制度の長所が失われ、衆愚政治に取って代わられたら、社会は混乱し、分断する。
ここで政治制度の良し悪しを議論するつもりはない。われわれが述べたいのは、社会の安定を維持するには、道徳が不可欠だということである。民主主義と法の支配は、単に社会が実施している形式に過ぎない。
a. 政教一致の共産カルト
共産党政権は国家権力と統合したカルトである。このイデオロギーを押し付けられた国民は、道徳心も破壊される。同時に、この政権はまともではないやり方で社会を規制し、民衆を壊滅させる。
共産主義は君主政治の延長だと揶揄されることがあるが、それは大きな間違いである。伝統的な中国の君主たちは、自身が道徳を定義することなどしなかった。代わりに、彼らは神や天から定められた道徳に従い、自分を律するよう努めたのである。一方、中国共産党は道徳の概念を自分たちで定めた。そのため、共産党はいくら邪悪な罪を犯しても、自分自身を「偉大で、輝かしく、正しい」と肯定し、自信満々なのである。
道徳を定めたのは神であり、人間ではない。善悪の基準は神の戒律が定めるのであって、政党のイデオロギーや主張ではない。国家が道徳の定義を定めると、教会と国家の癒着が起こる。つまり、中国共産党のように、邪悪なカルトが誕生するのである。
共産党はマルクスを精神的な「神」とし、マルクス主義を普遍的な真実であると定義する。共産主義が約束する地上の楽園は多くの信者を魅了し、信者は己の命を投げ出して奉仕する。そのカルト的な特徴は、教義を作りだすこと、異見者を抑圧すること、指導者を崇拝すること、自身のみが正義であると主張すること、強制的な洗脳とマインド・コントロール、抜けられない組織、暴力と流血殺人の宣伝、殉教の推奨などである。
レーニン、スターリン、毛沢東、金日成などは、すべてカルト的な性格を持っていた。彼らは共産カルト国家の「法王」であり、善悪を決定する絶大な権力を持つ。殺人も虚言も、彼らが行えば、それはより崇高な理念を達成するため、あるいは長期に及ぶ闘争のための正当な行為である。これら国家の市民は、自身で道徳を認識することを放棄させられる。共産党の支配下で、彼らは悪行や嘘をつくことを強要され、国民は精神的な傷を負う。
伝統的で正統な宗教は人々に善を勧めるが、憎悪によって生まれた共産カルトはその反対を促す。共産党も「愛」を前面に出すが、それは憎しみの上に成り立つ「愛」である。例えば、プロレタリアート(労働者階級)同士は友好関係を保つが、それは資本家という共通の敵がいるからだ。中国で愛国心と言えば、反アメリカ、反フランス、反日、反韓国、反台湾、あるいは中国共産党を批判する外国の中国人を敵とみなすことである。
b. 宗教的な特徴を持つリベラル派(自由主義)と進歩主義
欧米で「ポリティカル・コレクトネス」の基準を設けたのは、リベラル派と進歩主義だ。実際、これらは世俗宗教にまで上り詰めたのである。
歴史的に、欧米の左翼は自分たちにさまざまな名称をつけてきた。ある時はリベラルであり、またある時は進歩主義である。この二つのグループに大きな違いはない。
リベラルと進歩主義の究極的な概念は、共産主義のイデオロギーと近似している。彼らは「自由」と「進歩」を絶対的な道徳であると主張し、反対意見を述べる人を異端者と批判する。
リベラルと進歩主義は、共産主義や無神論、進化論、科学主義と同じことをやってのけた。つまり、人間の理性が神への信仰に取って変わることを主張し、彼ら自身を神の位置に押し上げたのである。
彼らは共産主義者たちと共通の敵を持つ。いわゆる偏見などの社会問題の原因をすべて資本主義制度にあるとし、それを転覆しようとするのである。
彼らのやり方は共産主義と同じである。彼らは「最重要」の目的のために手段を選ばず、暴力や虚言も厭わない。
自由主義と進歩主義の疑似宗教的な性質は、歴史の背景に由来する。
18世紀に始まった飛躍的な科学の発展は、人類に自信を与え、進歩主義的な考え方の流行を生んだ。進歩主義の先駆けであるフランスの哲学者ニコラ・ド・コンドルセ(Marquis de Condorcet)は、『人間精神進歩の歴史』(Sketch for a Historical Picture of the Progress of the Human Mind)の中で、人間の理性が幸福と道徳、善への道を開くと主張した。その後、進歩主義がさらに盛んとなり、「理性」が崇拝されるようになったのである。
進歩主義の思想は、「理性」や「良心」を創造主(神)と切り離し、人間は創造主の救済を必要としないという考えである。つまり、人間は自分の道理や良識によって、邪悪な欲望や恐怖、嫉妬などを一掃できる。神がいなくとも、人間は地上の楽園を打ち建てることができる。
進歩主義者の傲慢さは、19世紀フランスの政治家ジュール=アントワーヌ・カスタニャリ(Jules Castagnary)の言葉に現れている。「神の庭から追放されたが、私はその横に新たなエデンの園を造る…その入り口には、進歩を掲げる…そして私は炎の剣を彼の手に渡し、彼は神に向かって言うだろう。『汝、ここに入るなかれ』と」【9】
このような思考に染まれば、人々は幻想の中で人類の運命とその将来をもてあそぶようになる。つまり、人間が神の役割を演じたがるようになる。神なしで「地上の楽園」を創設するという思想は、共産主義の中心的な概念だ。しかし、楽園創設のための闘争は、流血と悲劇を生みだすだけである。
c. 共産主義の変種-現代リベラリズム(現代自由主義)と進歩主義
古典的リベラリズム(古典的自由主義)への反動
人間は生まれながらに既得の権利を持つとする「自然権」から派生した古典的自由主義は、政府や王族を規制する憲法により、個人の自由を保護することを主張した。神が個々の人間に人権を付与し、市民が政府を創設して人々を保護する。政府が国民の信仰や思考を侵害しないように、教会と国家の分離が行われた。
一方、現代自由主義は共産主義の変種であり、「自由」の名の下に行われた古典的自由主義への裏切りだった。現代自由主義は、絶対的な個人主義、つまり欲望に耽溺すること、また道徳と制約を無視することを主張する。さらに、彼らは機会の平等よりも、結果の平等を重視する。
例えば、現代の自由主義者たちは、富の分配の議論になると、納税者の権利よりも受給者の要求ばかりに焦点を当てる。差別撤廃の政策を議論すると、彼らは歴史的な被害者ばかりに焦点を当て、この政策によって現在、被害を被っている人々を考慮しない。法曹界では、冤罪の可能性を理由に、犯罪者に対する処罰を遮ろうとする。教育においては、学力の低い、あるいは恵まれない子どもたちを守ることを口実に、才能ある学生をないがしろにする。彼らは「言論の自由」を言い訳として、淫らな内容の出版物に対する規制を撤廃する。
現代自由主義はこっそりと、「自由の権利」を主張することから逸脱し、「平等の権利」を主張するようになった。しかし、彼ら自身は「平等主義」という名称を嫌う。この言葉は共産主義を連想させるからである。
古典的自由主義において、寛容は美徳だった。しかし、共産邪霊は現代自由主義の隙につけこみ、「寛容」を道徳の破壊に利用した。自由主義の父であるジョン・ロック(John Locke)は、『寛容についての書簡』の中で、宗教的な寛容と、教会と国家の分離について彼の視点を語っている。ロックによると、国家は支配的な権力を持っているが、個人の信仰については寛容であるべきである。個人の信仰が正しかろうが愚かであろうが、それは神の判断に任せるべきことである。人間の魂は個人の支配下にあり、国家は、その権力を用いて個人の信仰を決めたり、放棄させたりすることはできない。
一方、現代自由主義は「寛容」の真の目的を無視し、それを「良識の欠如」に転換した。彼らの主張は、「どんな状況でも価値判断をしないこと」という政治概念に発展した。価値判断をしないということは、つまり道徳的な態度の欠如、および善と悪、正と邪の混同である。それは普遍的価値観の否定と破壊であり、自由を盾に、甘い言葉で反道徳、反伝統を推し進める邪悪への道である。LGBT(性的少数者)の象徴である虹の旗は、価値判断が欠如した典型的な例である。司法当局が介入しようとすると、現代自由主義者たちは個人の自由と平等、および差別被害者の擁護を口実に反撃するのだ。
また、現代自由主義は、滑稽なほど性別を混乱させた。2003年、カリフォルニア州は新たな議会法案196を可決させた。これは、雇用主や非営利団体が、トランスジェンダー(性同一障害)あるいは実際の性別と異なる服装をしていることを理由に求職者を拒否した場合、最高で150万ドルの罰金を科すというものだった。【10】 カリフォルニア上院は「性のアイデンティティー(自己統一性)」について、「自分が認識する性と誕生時に決められた性が同一するか否かに関わらず、個人が決定した性がアイデンティティーである」と定義した。【11】
進歩主義の本質―道徳の歪曲
現代の進歩主義は、社会科学でダーウィンが主張した進化論を適用している。その結果は、「進歩」の名のもとに続く、伝統的な道徳からの乖離と、道徳の歪曲である。
伝統的な価値観に基づき、人類が智慧を絞って生活環境を改善したり、富を増やしたり、文化の高みを追及したりするのは当然のことである。19世紀末から20世紀初頭、アメリカの「進歩の時代」において、社会や経済発展に伴って起きたさまざまな腐敗行為に対し、政府は適切な政策で正そうとした。
しかし、共産主義がアメリカに浸透すると、「進歩」「進歩主義」という言葉に有害なイデオロギーが注がれた。世界大恐慌の後にニューディール政策が打ち出され、その後は公民権運動(第五章を参照)、対抗文化運動、フェミニズム、環境運動(第十六章で詳述する)などが興った。1960年代を皮切りに、アメリカ社会は大きな転換期を迎えた。
現代進歩主義の本質は、伝統的な社会秩序や神が与えた道徳を否定することである。伝統的な道徳には善悪と正邪の基準があり、それは神に由来している。進歩主義革命の時、無神論者たちは伝統的な道徳を邪魔者とみなし、道徳基準の見直しを求めた。彼らは絶対的な道徳基準が存在することを否定し、社会、文化、歴史、そして現状に基づいて、自分たち独自の、相対的な道徳基準を設定しようとする。進歩主義革命により、この相対的な道徳基準が欧米の政治、教育、文化などあらゆる分野に広がったのである。
マルクス主義は、道徳を相対的に設定した典型である。つまりプロレタリアート(労働者階級)の利益にかなうことが道徳であり、そうでないことが不道徳である。彼らの「道徳」はプロレタリアートの言動を制限するのもではなく、プロレタリアートを支配する独裁者が敵に打撃を与えるための武器でしかない。
共産主義と進歩主義は近似している。進歩主義が共産主義に乗っ取られたのは当然の過程であるが、人々がそれに気づいていないことも事実だ。今日に至っても、共産主義は進歩主義のスローガンのもとで、公に人々を騙し続けている。
リベラル派(自由主義)と社会主義路線の進歩主義
上記に述べたように、リベラル派と進歩主義は、建国の精神を土台としたアメリカ憲法と伝統的価値観からはなはだしく逸脱した。この潮流は、アメリカを変貌させて破壊し、すべての伝統的価値観、道徳、現行の社会制度を覆すものである。
『共産党宣言』の中で、マルクスは資本主義を打倒する手段として10項目を挙げている。
「労働階級による革命の最初のステップは、労働階級を支配階級の地位に押し上げ、民主主義の闘争で勝利することである」
「プロレタリアート(労働者階級)は政治的に優位な立場を利用し、少しずつブルジョワジー(資本家階級)から資本を奪い、すべての産業機関を集中させて国家の手に掌握させる。つまり、支配階級として組織されたプロレタリアートが掌握する。さらに、全体の生産力のスピードを可能な限り速める」
「もちろん、最初は、個人の財産やブルジョワジーの生産環境に対する独裁的な食い込みがなければそれは成立しない。従って、それは経済的に不十分で脆弱であるように見えるが、しかし運動を通して、彼らを追い越し、さらなる旧社会秩序への食い込みを余儀なくさせ、全体的な生産方式の革命が避けられないようにする」
「これらの手段はもちろん、国ごとに異なるだろう」
「しかし、一般的に、ほとんどの先進国家は、このやり方を適用できるだろう」
宣言の中で示した10項目のうちの多くはアメリカやその他の国家で実施されており、政策は左寄りに進んでいる。最終的には、共産主義の政治が支配するだろう。
1.「土地所有(私有)を収奪し、地代を国家支出に振り向ける」
2.「強度の累進税」
3.「相続の全ての権利を廃止する」(アメリカ政府は1916年から相続税を導入した)
4.「すべての亡命者および反逆者の財産の没収」
5.「国家資本および排他的独占をもつ国立銀行によって、信用(マネー、金融システム)を国家の手に集中する」(中央銀行としての機能を持つアメリカ連邦銀行は1913年に設立された)
6.「すべての運輸機関を国家の手に集中する(鉄道の国有化)」(アメリカには郵便局と鉄道を監督する国家機関がある)
7.「国有市場、生産用具の増加、共同計画による土地の耕地化と改良」
8.「すべての人々に対する平等な労働強制、産業軍の編成、特に農業のために農業の生産性向上=生産力を上げること」(1935年、アメリカは社会保障局と労働省を設立した)積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)の法律により、女性は軍人を含むすべての職業に就くことができるようになった。
9.「農業と工業の経営を結合し、都市と農村との対立を次第に除くことを目指す」
10.「すべての児童の公共的無償教育、今日の形態における児童の工場労働の撤廃。教育と物質的生産との結合」
表面的に、共産主義は建設的なことを提案しているように見える。しかし、彼らの目的は国家の幸福ではなく、政治権力である。
人間が幸福と進歩を求めるのは間違いではない。しかし、伝統的な道徳や価値観を否定し、いわゆる「~主義」といったイデオロギーがそれに取って変わった時、それは共産邪霊が人間を堕落と破滅に導く便利な道具となってしまう。
3.憎悪と闘争を推進―共産政治の不変の法則
初章で詳しく述べたように、共産主義は憎悪から生まれた邪霊である。従って、闘争と憎しみは共産政治の重要な要素である。共産主義は人々の間に憎悪と分断をしかけ、人間の道徳を堕落させ、独裁者を据え付けて権力を掌握する。人々を互いに闘争させるのが彼らの主なやり方である。
1925年に書かれた著書『毛沢東選集』(Selected Works of Mao Zedong)は、中国社会の階級について分析している。その第一章は、次の言葉で始まる。「誰がわれわれの敵なのか? 誰がわれわれの友人なのか? これが、革命における第一の問題である」【12】 共産党は、以前は存在しなかった階級という概念を造り上げ、任意に分断した人々を互いに戦わせた。これが、彼らが権力の座に就くための「魔法の」武器である。
闘争を仕向けるために、共産党はいくつかの社会問題を大げさに取り上げる。すべての社会問題は道徳の堕落に起因するのだが、それがさも社会構造に原因があるかのように主張する。彼らは一つの階級を標的にして彼らを抑圧者と叩き、社会の病巣を除去するために、彼らと闘争せねばならぬと宣伝する。
共産党の政治が主張する闘争は、資本家と労働者の間だけではない。キューバ共産党のリーダー、フィデル・カストロ(Fidel Castro)は、キューバ国民の敵はフルヘンシオ・バティスタ(Fulgencio Batista)とその支持者であり、抑圧者である大農場の主が不平等と不正の源であると言った。共産党は、「抑圧者」を排除することで、平等な楽園を造ると約束した。共産党はこの約束を理由にしてキューバを支配した。
中国の毛沢東は、小作人たちに土地の所有を、労働者に工場の所有を、知識人たちに自由、平和、民主を約束した。この約束により、農民が地主に反抗し、労働者が資本家に反抗し、知識人たちが政府に反抗した。その結果、共産党が権力を掌握した。
アルジェリアの共産主義者ベン・ベラ(Ahmed Ben Bella)は、異なる宗教や民族間で憎しみを駆り立て、イスラム教徒とキリスト教徒が、アラブ人とフランス人が対立した。ベラはこれを踏み台として、アルジェリアに共産主義を樹立した。【13】
一方、アメリカの建国の父たちは、アメリカ憲法に則って国家を樹立し、すべての市民がそれに従っていた。アメリカの家族、教会、地域社会は強い絆で結ばれていた。このような社会階級のない場所で、階級闘争をでっち上げるのは難しかった。
しかし、共産邪霊はどんな材料でも利用して分断を挑発する。労働組合を利用して、雇用主と労働者の闘争を造り上げた。黒人、イスラム教徒、アジア人、ヒスパニックを利用して白人と分断し、対立させた。女性の権利を主張し、男女の闘争をけしかけた。LGBT(性的少数者)運動により、性のアイデンティティーの闘争が始まった。新しい性が造られ、その闘争はより激しくなった。
異なる宗教の信者を分断し、「ダイバーシティー(多様性)」をスローガンに、伝統的な文化と西洋の遺産に挑戦する。異なる国籍の人々をグループ分けし、移民の「権利」を主張しながら、外国人と市民の間に闘争を造る。これが進むと、今度は移民と市民が法執行官(警察や保安官など)に対して戦いを仕掛けるようになる。細分化された社会では、ほんの小さな過失が闘争を誘発する。社会の闘争が当たり前になり、大衆の心に憎悪の種が埋められる。しかし、それはまさに共産党の目的なのである。
共産主義が推進するのは「分断」と「憎悪」である。レーニンは、「われわれは、大衆が、われわれに反対する者に対して憎しみ、反感、軽蔑を抱くような言葉で書かなければならない」と述べている。【14】
欧米で共産邪霊が使った手法は、あらゆる「社会正義」で社会問題を誇張し、社会に憎悪と闘争を仕向けることである。
1931年、9人の若い黒人が2人の白人女性を強姦したかどで逮捕され(スコッツボロ事件)、アメリカ全土で民族間の緊張が高まった。アメリカ共産党が黒人たちの無罪釈放を訴え、多くの注目を集めた。この運動を始めた一人、フランク・マーシャル・デイビス(Frank Marshall Davis)は後に、アメリカの左派大統領のメンター(助言者)を務めている。【15】
ポール・ケンガー(Paul Kengor)によれば、スコッツボロ事件におけるアメリカ共産党の目的は、黒人や社会正義派(進歩主義者など)の党員を増やすことではなく、アメリカを不平等で人種差別の国であると侮辱することだった。彼らは、アメリカ全体で不正が行われており、左翼イデオロギーだけが邪悪なアメリカの社会制度から解放できると主張した。【16】
1935年、黒人青年が万引で逮捕された後に殴り殺されたという噂が広まり、ニューヨーク・ハーレムの黒人たちが暴動を起こした。アメリカ共産党はこの事件に飛びつき、黒人のデモを組織した。後に、元アメリカ共産党メンバーのレオナルド・パターソン(Leonard Patterson)がその暴動の組織者だったことを告白している。
パターソンによれば、共産党員は、対立を扇動して過激化するレーニンの戦略について、十分な訓練を受けているという。彼らはデモ参加者を暴徒化させて路上で戦わせ、対立がない場所でケンカをでっち上げるやり方を熟知している。【17】
現代のアメリカ社会で起きた大規模な社会闘争や暴動には、すべて共産党組織が関わっている。1992年、ロサンゼルス市民で黒人のロドニー・キングが飲酒運転で逮捕され、白人警察官から殴打されている動画が世界中に流れた。裁判所の評決が終わり、集まっていた抗議者たちが解散しようとした矢先、誰かが金属製の広告板を通りかかった車両に投げ込んだ。抗議者たちは暴徒化し、放火、破壊、略奪が始まった。【18】
この事件について、ロサンゼルス保安局のシャーマン・ブロックは、放火、略奪、暴動に共産主義者が関与していたことは疑いの余地がないと語った。事件当時、革命共産党、社会労働党、進歩主義労働党、アメリカ共産党などの共産党系組織のチラシがばら撒かれた。あるチラシには、「王の評決に対抗せよ!…銃口を向けろ!…兵士は労働者と団結せよ!」と書かれていた。ロサンゼルス警察によれば、評決が発表される前に、すでにチラシが配られていたという。【19】
レーニンは初期の頃、共産主義者に対して、「勃発―抗議―路上のケンカ―革命軍のグループ。これが、一般的な暴動の発展段階である」と指導している。【20】
今日、欧米社会で暴動と暴力を挑発する組織は数えきれないほど存在する。「分割できない」(Indivisible)「反ファシスト」「反愛国主義」「ブラック・ライヴズ・マター(BLM・黒人の命も大切だという社会運動)」「ファシズム拒絶」などさまざまだが、彼らはすべて共産主義者あるいは共産主義の思想に共感する人たちである。暴力的なアンティファ(Antifa・ファシストに反対する組織)は、無政府主義者、社会主義者、自由主義者、社会民主主義者などさまざまな共産党系の人間の集まりである。ファシズム拒絶(Refuse Fascism)は、極左のアメリカ革命共産党党首が創設した組織である。大規模な抗議集会や暴動の背後にはこれらの組織が存在し、2016年大統領選の結果を覆そうとした。【21】
言論の自由を盾に、欧米社会で彼らは休むことなくさまざまな対立を挑発し続けている。彼らの真の目的とは何か。それを理解するには、アメリカ共産党が党員に向けて発表した報告書が参考になるだろう。
1956年議会報告書:
「党員と前衛組織は、継続的にわれわれに反対する者を辱め、その信用を貶め、品格を下げること。…妨害者たちが苛立ってきたら、彼らにファシスト、ナチス、あるいは反ユダヤ主義というレッテルを貼ること。われわれに反対する者たちと、すでに黒い噂が絶えない人物とを、継続して関連づける。これを繰り返せば、その黒い交際は大衆の心に『事実』として受け止められるだろう」【22】
4. 暴力と虚言:共産主義支配の方法
共産党の教義によれば、どんな手段も過激ではない。実際、共産党は、暴力と虚言は世界征服と支配のための手段であると公言している。共産党がソビエトに誕生してから今日まで、この期間は一世紀のうちのほんの一瞬に過ぎないが、同党はその間に、およそ1億人の人々を死に至らしめた。共産党メンバーは、虚言、殺人、放火、誘拐など、あらゆる極端な手段を使う。それらは邪悪の極みであり、衝撃的だが、驚くべきことに関与者のほとんどが、それらの行為を全く後悔していないのである。
共産邪霊がねつ造した虚言の規模は、共産国家でも欧米でも、各国さまざまである。でっち上げ、フェイク・ニュース(虚偽報道)、政敵に濡れ衣を着せるなど―これらは比較的小さな嘘である。継続的で、複雑かつ系統的に行われる虚言は、中規模の嘘である。例えば、中国共産党が天安門焼身自殺事件をねつ造し、法輪功に対する憎しみを扇動したことなどがこれにあたる。
大規模な嘘もあるが、これを看破することは最も難しい。なぜならば、大規模な嘘とは邪霊そのものだからである。その規模は巨大であり、操作は多面的で、期間は恐ろしいほど長く、影響下に置かれた人数は膨大である。その中には、虚言のために心血を注いだ協力者も含まれる。
邪霊は、共産主義の理想として「偉大なる団結」という嘘を掲げた。このスローガンは少なくとも短期間で反証できないため、すべての共産主義プロジェクトを支える大嘘となった。
前章で、進歩主義が共産主義に乗っ取られた経緯について述べたが、これも大嘘の一部である。過去数十年間、共産主義はさまざまな社会運動を乗っ取り、人々を騒動と革命に巻き込んだ。これはまさに、邪霊が意図して起こした出来事である。その一つが環境運動であるが、それは第十六章で述べることにする。
a. 共産主義支配下の暴力と虚言
共産党は階級間の対立を推進する。彼らにとって、それは死ぬまで続く闘争である。『共産党宣言』には、「共産主義者は自分の見解と目的を隠すのを潔しとしない。彼らは、これまでのすべての社会秩序の暴力的転覆によってのみ、自分の目的が達せられることを、公然と宣言する」とある。【23】
レーニンも『国家と革命』(The State and Revolution)の中で述べている。「上記で述べたように、また後に詳述するが、マルクスとエンゲルスの理論である暴力的革命の必然性は、そのブルジョワジー国家(資本家階級の国家)にある。ブルジョワジー国家が徐々に衰退し、プロレタリアート国家(労働者階級の独裁国家)が取って変わるということはできない。原則として、暴力的な革命によってのみ、それが可能である」【24】
パリ・コミューン(パリ市の革命自冶体)やロシア革命、中国共産党が仕掛けた労働者農民運動など、権力を奪取する過程で、彼らは過激な暴力と流血の惨劇を引き起こした。彼らの敵が年配者であろうが弱者であろうが容赦せずに放火し、略奪し、殺害した。その邪悪さは魂に衝撃を与えるほどだった。残虐な政権下で行われた犯罪は膨大であり、もはや記録することは不可能である。
共産カルトは暴力と虚言で権力を維持する。虚言は暴力の潤滑油であり、大衆を奴隷化するための道具である。虚言は暴力に一区切りつけたり、中断させたりすることもあるが、基本的に虚言は続く。共産党は何でもすぐに約束するが、それを遂行する意志はない。大衆の不満を解消するため、共産党は恥も外聞もなく、どんな言い訳でも並べ立てる。
共産党は地上の楽園を造ると約束したが、これこそまさに大きな嘘である。彼らが実らせたのは、地上の地獄だけだった。
中国の毛沢東、アルジェリアのベン・ベラ、キューバのフィデル・カストロは皆、独裁政権は絶対に樹立しないと宣言していた。しかし、権力を握った途端、彼らは高圧的な独裁政治を実施し、異見者や民衆を迫害した。
さらに、共産党は悪賢く自分たちの言語を歪曲した。言語操作は、共産カルトが人々を騙すための主な手口である。言葉の意味合いを変え、あるいは全く逆の意味に変化させる。歪曲された言葉が繰り返されることにより、それは人々の心に深く植えつけられる。例えば、「神」という言葉が「迷信」と同義語になった。「伝統」が「遅れている」、「愚か」が「封建制度」、「西洋社会」が「敵国」または「反中国」、「プロレタリアート(労働者階級)」が「国家の貴重な財産」である。大衆には全く権力がなくても、共産党は「すべての権力は人民にある」と唱える。不正を指摘すると、「国家転覆を画策している」という有様だ。従って、邪悪な共産カルトに汚染された人と交流すると、意思の疎通が難しいと感じるだろう。なぜならば、言葉の意味合いが捻じ曲げられてしまったからだ。
共産カルトは嘘を宣伝するだけではない。それは国民全体に嘘をつかせるような環境を醸成する。例えば、強制的に政治授業を受けさせたり、政治的な立場を表明させたり、政治的な思想をチェックするなどである。人々は心で信じてもいないことを、無理やりしゃべらされる。それは人々の道徳を傷つけ、正しい事をする意識を低下させる。モーゼの十戒は、「偽証してはいけない」と警告している。孔子は、「もし民衆が君主に対する信念を失えば、国は成り立たない」と述べている。
共産カルトの虚言に気づいた人々も、今度はさらなる虚言で応酬する。共産邪霊は人々が嘘をついていることを知っているが、全く気にすることもない。嘘はゲームの一部に過ぎないし、虚偽の文化で道徳を堕落させたのは、共産党だからである。しかし、共産党にとって危険なのは、人々が真実を語り始めた時である。
これまで繰り返し述べたように、中国共産党は人間の肉体だけでなく、その道徳を滑落させようとしている。この点において、同政権はある程度の成功をおさめたと言えるだろう。
b. 共産主義が欧米で暴力を焚きつける方法
共産邪霊を構成しているのは憎悪であり、その理論は憎しみに満ちている。それは階級闘争を宣伝し、すべての問題の根源は伝統的な社会構造にあると主張する。それは、金持ちが貧乏人を搾取していると言って革命と暴力をそそのかす。共産主義運動が広がり、邪霊による操作、暴力、虚言が蔓延した欧米社会は、すでに憎しみと恨みに満ちている。
共産党による広範囲の暴力の推進に加え、共産邪霊に操られた共産党系グループも暴力を崇拝する。アメリカの左翼に愛されるソウル・アリンスキー(Saul Alinsky)は、政治の指導者になる前はギャングの一味だった。彼自身は共産主義者であることを否定していたが、彼の政治的イデオロギーや闘争への対処法は、共産主義そのものである。
ソウル・アリンスキーの著書『過激派のルール』は、アメリカにおける路上運動支持者たちのバイブルである。アリンスキーは本の中で、「『過激派のルール』は、(持たざる者)のために、いかに彼らが(持つ者)の権力を奪うかについて書かれている」と述べている。彼は豊かな者から奪い取って貧乏人に与え、アメリカを共産主義に変えようとしていた。
アリンスキーは過激な革命よりも、緩やかな浸透を主張しているように見えるが、実際には、彼は暴力の信奉者である。彼はただ、さりげなく行っていただけである。過激派で知られるブラックパンサー党は、毛沢東の「政権は銃身から生まれる」という言葉を崇拝していた。アリンスキーは最初、投票箱を好むが、後で使えるように銃を取っておく。アリンスキーのやり方は、中国共産党と似ている。つまり、しばらく低姿勢を維持した後、最後に打撃を与える。彼のルールの一つは、攻撃的なアプローチを仕掛けることである。反対者を脅迫し、最終的に混乱と破滅をもたらすのが彼のやり方だ。
アリンスキーをよく知る著作家のデイビット・ホロウィッツ(David Horowitz)は、アリンスキーとその追随者たちは、現行の制度を改革する気など全くなかったと指摘する。彼らの目的はすべてを破壊することであり、その過程を闘争であると認識していた。【25】 従って、彼らは目的のために手段を選ばず、いつ、どのように暴力を振るうのか、どのような虚言を流すのかを決めているだけだった。
アメリカ社会では、一部の政治家や工作員たちが、欺瞞、個人攻撃など卑劣な手段で敵を攻撃している。まるで共産主義者のように、彼らは暴力に訴える。暴力的な社会は不安定であり、分断が起きやすくなる。今日、主要な左派政党と右派政党は、まるで冷戦時代の共産圏と自由社会のようである。両党の思想は相容れず、つまり水と油の関係である。
2016年に新大統領が誕生してから、極左のアンティファがあちこちで暴動を起こし始めた。アンティファの標的は決まっている。つまり、新大統領の支持者と、その他の保守派である。アンティファはどこでも彼らについて回る。アンティファたちは新大統領の支持者のスピーチを妨害したり、襲撃したりする。
中東やアフリカからの大量の移民がヨーロッパでさまざまな社会問題を起こしている。左派エリートは、「ポリティカル・コレクトネス」を理由に、現行の移民政策を非難する政敵に暴言を吐き、怒鳴り散らした。【26】
2017年6月、共和党議員スティーブ・スカリス(Steve Scalise)が野球の練習中に他の政党の支持者から銃撃され、重傷を負った。左派政治家は、スカリスが銃撃されたことについて、「よかった」と発言した。後に、彼は政党の主要ポストから降ろされた。
これらの暴力的な騒動の背後には共産邪霊がいる。ほとんどの人々は、闘争を望んでいるわけではない。ほんの数人の共産活動家だけで騒動を起こしているのである。
邪霊の影響のもと、無名の政党や政治家たちは、人々の権利を守り、民主社会のルールを遵守すると公言する。しかし、彼らは権力を掌握したとたん、あらゆる手段を駆使して反対する者を弾圧し、市民の権利を奪う。2017年2月、アメリカ西部の上院会期中に、ベトナム系アメリカ人議員がトム・ヘイデン(反ベトナム戦争を唱える過激派)に与えられた賛辞に対して抗議するスピーチを行った。【27】 すると、マイクの音声が突然途絶え、この議員は議会から退去させられた。もしこのような傾向が続けば、最終的には共産的な専制政治になっていくだろう。
c. 共産主義が虚言で欧米を混乱させる方法
欧米において、共産主義のイメージは最悪である。欧米で共産主義が影響力を発揮するには、嘘をつくしか方法がない。
共産主義や左翼組織のスローガンはお決まりだ。「自由」「進歩」「公共の利益」などを掲げ、大衆の心を掴む。しかし、彼らの真の目的は社会主義を推し進めることである。これは、共産党が「地上の楽園」を約束して人々を騙した手法と同じである。
一部の政党が提唱する政策は、共産主義そのものである。ただし、その政策は見栄えがよく、名称も違う。例えば、社会主義的な健康保険制度は「社会主義」と呼ばず、代わりに「人々の健康保険」(People’s health care)と呼び、この制度は国民の意見を反映していると主張する。雇用主に最低賃金を要求するとき、彼らは「生活賃金」と呼ぶ。その間、欧米政府の力は増大し、人々の生活に干渉していく。
共産党系の政治家やその利益集団は、空っぽの公約を掲げて当選する。共産党が誕生したばかりの頃、民衆の心を掴むために嘘をつき続けたのと同じやり方である。これらの政治家は、高水準の社会保障を約束し、国民全員に仕事と医療保険を与えると主張する。その費用を誰が負担するのか、どうやってその制度を長期的に維持するのかについては、誰も言わない。彼らは公約を掲げるが、それを達成しようなどとは最初から思っていないのだ。
アメリカ西海岸の議員候補で元左派政治家のベニート・バーナル(Benito Bernal)が、左翼政治の内情を暴露している。彼によれば、まず政党が立ち上がると、そこには連邦機関の長官や連邦議会議員、州政府や市政府メンバーなどが含まれている。彼らは政府機関の各レベルを操作する25年計画を立て、将来の大統領候補のために備えるという。この組織には地域の社会問題、例えばギャング闘争、不登校児、十代の妊娠、不法移民、社会公正などの相談に乗る専門部隊もある。その目的はもちろん、彼らを政府に依存させることである。バーナルはこれを「奴隷制度」と呼ぶ。【28】
「私がこの組織の人間に質問したところ、彼らは逆に、私に三つの質問をしてきました。『第一に、もしこれらの問題が解決してしまったら、次の大統領候補は何を提案したらいいのかね? 第二に、これらの問題を解決するために、どれだけの資本がわれわれの都市に流入しているか分かっているのか? 第三に、これらの問題を解決するために、どれだけの雇用が生まれていると思うのか?』これを聞いて、私は非常に驚きました。彼らは人々の痛みや、ギャング闘争、子ども同士の殺し合いなどから、利益を得ていると言っているのですから」
同党の投票記録を詳細に見れば、彼らが人々を絶望させ、抑圧し、貧困化させているのが見えるとバーナルは指摘する。同党は、人々の悲惨な境遇から利益を上げているのだ。彼は後に、同党から脱退している。
2008年のアメリカ大統領選で、40年の歴史を持つリベラル系組織「共同社会組織即時改革協会」(Association of Community Organizations for Reform Now、ACORN)が、数千人におよぶ有権者の不正登録を行っていた疑いが浮上した。【29】
2009年、同組織のスキャンダルが発覚し、アメリカ全土を巻き込む大問題となった。ACORNは低所得層の住宅や賃金、教育、選挙参加などの問題を解決し、社会公正を目指すという名目で、政府から莫大な資金と援助を受けていた組織である。二人の覆面調査官が売春婦と斡旋業者になりすまし、ACORNの各地事務所を訪れた。ACORNの職員に売春業について相談すると、彼らは会社と身分証明書の偽造、資金洗浄、資金隠匿、調査逃れ、警察への虚偽、脱税などさまざまな「売春経営のノウハウ」を詳細に教えてくれた。【30】 同団体は繰り返し否定したが、やり取りはすべて隠しカメラで撮影されていたため、世間の強い反発を買った。彼らは公的資金を打ち切られた後、閉鎖に追い込まれた。
政治家が力説する公約は、表面的には魅力的だ。しかし、後で待っているのは悲惨な結末である。ハーバード大学の教授二人はこれを「カーリー効果」と呼んでいる。【31】
フォーブス誌は、カーリー効果について次のように要約している。「政治家や政党が経済成長を緊縮させる政策を実施すると、集票情勢のバランスを彼らに有利にさせることができ、かつ長期的に議会を独占することが可能になる。さらに、都市を貧困化させ、それに取り組む人間にアピールすることも、政治的な成功への道である」【32】
明確に言うと、政治家たちが実施している労働組合や政府プログラム、マイノリティー(少数派)が経営する企業への税優遇措置などは、全て財源と税金の歪んだ再分配である。これは、一般企業や富裕層から高い税金を徴収することを意味する。その結果、この政策で受益した社会層(特に貧困層や労働組合など)がその政治家の支持基盤となる。いわゆる「金持ち重税法」が政府のプロジェクトに利用される。富裕層や企業家たち(自分の金を徴収されたり、浪費されたくない人たち)は、都市を離れ、ますますその政治家に反対する市民が少なくなる。そこで、その政治家は安定した、長期的な支持を得られ、政治組織を設立できるのだ。しかし、徐々にその都市の税収と仕事は減少し、最後には破産する。
フォーブス誌は、全米の人口25万人以上の貧困都市トップ10を挙げ、カーリー効果の影響が広がっていると指摘する。今日、左翼政治家が独占するアメリカ西部の富裕な都市は、これらの政策による深刻な問題を抱えている。【33】
左翼はさらに、言葉の意味合いを変化させる。例えば、保守派にとって「平等」は大まかに言えば、機会の平等を意味する。これによって、人々は公正に競い合い、ごく自然な実力主義社会が生まれる。左翼にとって、平等とは結果の平等である。仕事に懸命であろうがなかろうが、その結果は皆平等に受け取らなければならない。
保守派が考える寛容とは、異なる信念や意見を許容することである。個人的利益が損害を受けても、人間は容量を広くして寛大でいることを目指す。しかし、左翼は、罪を許容する「寛容」である。彼らの自由と正義は、伝統的な概念と大きく異なっている。彼らは社会運動の政策、例えば同性愛の推進、男女共同トイレ、マリファナの合法化などあらゆる人倫を乱すことを「進歩的」と呼ぶ。まるで、彼らが道徳的に進んでいるかのようである。しかし、これらの政策は、神が人間に与えた道徳を破壊している。これが、左翼政党が打ち出す政策が道徳を破壊する仕組みである。共産邪霊は、この政治の仕組みを利用して、自分の目的を果たそうとしている。
かつて、人々はアメリカこそが真に自由な社会であり、共産主義に対抗する最後の砦だと信じていた。しかし今日、目の前にあるのは、高い税金、高水準の福祉国家、集産主義、大きな政府、社会民主、「社会公正」などの政策(このすべては社会主義とマルクス・レーニンのイデオロギーから生まれたDNAで成り立つ)であり、これらが崇拝され、実施されているのである。特に、若い世代は歴史に対する認識が浅く、共産主義の暴虐を知らない。若者たちは共産主義の偽装に騙され、理想的な幻想を追い求める。彼らは何も知らずに、破滅への道を歩んでいるのである。
5.全体主義ー共産主義政治の末路
共産国家が全体主義であり、個人のすべてを管理していることは良く知られている。一方、非暴力系の共産主義は、緩やかに、徐々にその権力を増大させて個人の社会生活に介入し、最終的には全体主義へと向かう。非共産国家であっても、国民はいつでもその自由を奪われる危険がある。さらに恐ろしいのは、それらの全体主義政府が科学と最新技術を用いて個人を監視しており、生活のすべてを支配していることである。これは、人類の歴史上、類を見ないことである。
a. 自由意志と寛容を殺す全体主義
人間が神から与えられた伝統文化に則れば、神は人間にさらなる文化の成長を授ける。神から啓発を受けて伝承された文化は、人間と神を結ぶ重要な絆である。この文化を基礎として、さまざまな社会的組織が生まれ、そこから政治的な要素も派生した。
神は人間に自由意志を授け、自分自身で物事を決める能力を与えた。人間は、自己修養や道徳的な振舞いを通して、自分や家族のために責任を負い、自分自身を管理する。19世紀のアメリカ政治を学んだフランスの政治学者アレクシ・ド・トクヴィル(Alexis de Tocqueville)は、アメリカを称賛している。アメリカ人がよく内省すること、邪悪に対してよく理解していること、問題に忍耐強く取り組むこと、社会問題の解決に暴力が少ないこと、などの美点を挙げている。彼は、アメリカの偉大さは、自分の誤りを的確に正す能力にあると指摘した。【34】
一方、共産邪霊の目的は、全体主義政治によって人間を伝統と道徳から逸脱させ、神へとつながる道を遮ることである。共産主義国家の国民は、何も知らされないうちに、神の子からすでに悪魔の手下へと変貌させられた。徐々に、彼らは悪魔のルールに従うようになったのだ。
共産国家において、政府は経済、教育システム、メディアなどすべての社会的資源を占有する。従って、すべては共産党リーダーの指示に従い、その方法は虚言、邪悪、暴力である。自分の良心に従い、善に向かう人間は、共産党のイデオロギーに反するために、敵とみなされる。排除された人間は下層民の扱いを受け、社会の底辺でもがき苦しむか死ぬだけである。
自由社会でも、政府は全体主義に向かっている。「大きな政府」がすべてを支配しているからだ。独裁政策の特徴の一つは、中央政府が経済計画を立て、誘導するというものだ。今日、欧米政府はますます経済介入し、彼らの計画を達成しようとしている。彼らが利用するのは、国庫の収入と支出、税金、債券金融である。
同時に、彼らの管理は経済だけにとどまらない。個人の信仰、家族、教育、経済、文化、エネルギーと資源、移動手段、コミュニケーション、旅行など多岐に及ぶ。中央政府による管理が地方政府にまで及び、すべての市民の生活が管理下に置かれる。数多くの法律や審査が必要となり、その結果は、これまでになく膨らんだ強大な権力をもつ政府である。例えば、健康保険が必須となり、加入しなければ罰せられる。公共の利益のためなら、政府はいつでも個人の財産と権利を奪うことができる。
全体主義政府は「ポリティカル・コレクトネス」を使う。これは個人の言論の自由を奪い、人々が何を話し、何を話してはいけないのかを指図する。不当な政策に対して公然と非難する人は、「ヘイトスピーチ」(差別的発言)というレッテルで攻撃される。ポリティカル・コレクトネスに反対する人たちは、排除され、また解雇されるケースもある。極端な例としては、脅迫を受けたり、襲撃を受けたりする。
伝統的で正統な道徳基準の代わりに、逸脱した政治基準を設け、それを法律、規制、世論攻撃などで強制するならば、もはや言論の自由はない。残るのは社会的恐怖と圧力のみで、人間の自由意志や思いやりを求める自由はなくなる。これが、全体主義政治の本質である。
b. ゆりかごから墓場までー福祉制度
今日、福祉政策は普遍的な現象である。国家や政党、保守かリベラルかに関わらず、その実態に違いはない。共産国家から欧米に来た人々は、その寛大な恩恵に驚く。子どもたちの無料の教育、健康保険、年配者のケア・サービス。彼らはこれこそまさしく「真の共産主義」だと気づくのだ。
今日、福祉国家が適用しているのは、共産主義をそのまま資本主義社会に持ってきただけではないだろうか。共産国家との違いは、ただ暴力的な革命がないことである。
よりよい生活を求めることは、間違いではない。しかし、政府が設立する福祉国家には重大な欠点がある。世界のどこでも、無料で提供される食事はない。高水準の福祉とは、強制的な税徴収を意味し、福祉自体が問題になってくる。
イギリスの法科学者ダイシー(Dicey)は、次のように述べている。
「1908年以前、人間は、金持ちでも貧乏でも、自分の健康管理については、完全に個人の自由に任されていた。彼がまとうコートが黒なのか茶色なのかさえも、国家は気に留めることもしなかった。…しかし、国民健康保険法は、長期的に見て、国家にもたらされ、つまり納税者にもたらされ、次は雇用保険がもたらされるだろう。これはつまり、国家が、無職であるという邪悪から個人を守る義務があると自認しているのだ。…国民健康保険法は、社会主義の教義と一致している…」【35】
北欧型の社会福祉が多くの国で導入されている。繁栄した社会主義の模範として、欧米でそれを模倣しようとする考えもあった。北ヨーロッパの国内総生産(GDP)あたりの税率は世界一高く、一部の国では50%近くに上る。
専門家は、社会主義制度の医療福祉に6つの重大な欠陥があると指摘する。第一に、人間は無料サービスを限りなく欲しがるものであり、このシステムは持続不可能である。第二に、医療機関では勤務態度についてのボーナスや罰則もない。どれだけ働いても報酬は一定しているため、仕事に対する責任感を奪う。これは政府にとって大損である。人々は制度の抜け穴を利用して盗んだり、また違法な地下ビジネスも生まれる。また、人々の生死を決める医療制度を政府が管理すると、融通のきかない官僚主義に悩まされる。【36】
2010年、ヨナスというスウェーデン北部に住む男性が大けがを負い、縫合のため救急病院を訪れた。彼は外来受付を訪ねたが閉まっており、救急室で3時間待たされた。傷口は出血していたが、何の手当も受けられなかった。仕方なく、彼は自分で手当てしようとしたが、病院の規則に違反したとして通報されてしまった。病院の器具は、公的な承認がなければ触ってはいけないことになっていたのだ(彼は看護師が去った後に、針と糸を拾っただけだった)。【37】 これはほんの一例であるが、実情はさらにひどい。すべての国民が無料の医療制度を利用したがるため、そこには資源の乱用が起きる。供給が間に合わなければ、そこには長蛇の列ができ、すぐに救助を必要とする患者がサービスを受けられない。これが社会主義医療制度の弊害である。
それは、単に非効率な制度の問題ではない。最も危険なのは、政府がゆりかごから墓場まで、すべての人間の需要を管理するという仕組みである。とても理想的に見えるが、実際は全国民の政府に対する依存であり、それは独裁政権へ一歩近づいたことになる。
トクヴィル(Tocqueville)が述べている。「もし独裁主義が、今日われわれの社会に樹立されたなら、それは異なる性質を持つだろう。つまり、より広範囲で、より穏やかである。それは国民を苦しめずに、彼らを劣化させるだろう」 【38】 現代の福祉国家をうまく言いあてた言葉である。
c. 全体主義へと導く過剰な法律
全体主義の政治は、個人が善を行う自由を奪い、邪悪がはびこる空間を与える。市民は悪人を諫める法律を作りたがるが、それこそまさに邪悪が望むところである。今日、社会には数えきれないほどの複雑な法律や規制がある。アメリカには7万を超える税法律がある。健康保険法は2万ページに及ぶ。裁判官や弁護士も勿論、すべての法律を覚えることはできないし、ましてや一般市民なら尚さらである。連邦レベルから州、郡、都市に至るまで、毎年平均4万件の法律が作られている。市民は知らないうちに、法律に違反しているかもしれない。刑罰は、罰金から禁固までさまざまである。
中には、釣りの時に使う釣り針の種類や、公衆でスープをすする音まで規制がある。すべてのすべてに法律があり、規制がある。カリフォルニア州は、エネルギー消費条件を満たす薄型テレビのみを許可すると決定した。同州でのプラスチック袋使用は禁止された。ある都市では、自分の裏庭に小屋を建てる時にも政府の許可を必要とする。
過剰な法律は道徳感覚を鈍らせる。実際、多くの法律は、常識的な道徳に反している。しかし、法律が氾濫すると、人々は道徳の基準によってではなく、法律によって判断されてしまう。時間が経てば、邪霊の代理人たちが邪悪なイデオロギーを人間の法律に適用させるだろう。
いくら法律がよくても、それは単なる外的な力に過ぎず、人間の心を変えることはできない。老子曰く、「法令が多ければ多いほど、泥棒と追いはぎが増える」。邪悪が蔓延したら、法律もなす術はない。法律が多ければ、政府はより支配を強めることができる。しかし、社会問題の原因は、悪魔が人間の悪の部分を拡大させていることである。しかし、人間はその現実を分かっていない。彼らは問題を是正するために新たな法律を作るが、問題の核心を忘れている。国は悪循環に陥り、徐々に独裁国家へと進んでいくのである。
d. テクノロジー(技術)による支配の強化
全体主義政府は、国家機関と秘密警察を利用して国民を監視する。現代の科学技術は極端な監視システムを可能にし、政府は国民すべての生活をチェックしている。
雑誌「ビジネスインサイダー」は中国共産党が国民を監視する10の方法を挙げている。【39】
1. 顔認識技術で大勢の中から個人を選び出す。
2. グループチャットの管理者に、人々の会話の内容を監視させる。
3. 個人のスマホにアプリケーションをダウンロードさせ、持ち主の写真やビデオを監視する。
4. オンラインショッピングを監視する。
5. 特別なメガネをかけた警察官が、雑踏や路上、駅などで個人を識別する。
6. 「ロボット警察」を各駅に設置し、乗客の顔をスキャンして逃走犯を特定する。
7. 顔認識技術で信号無視を根絶する。
8. 警察が歩行者のスマホを任意にチェックする。
9. 個人のソーシャルメディアの投稿を追跡し、家族や居場所を特定する。
10. 予測機能のあるソフトを発明し、人々に知られないようにデータを集める。危険人物を特定する。
フィナンシャル・タイムズは中国が導入しているクレジットのポイント制度が悪意に満ちていると報道した。「これは、中国の2020年計画の核心である。クレジットのポイントをデータ化するだけでなく、市民の政治的傾向を測っている」「同様の制度で「愛国心」を測定することができる。それは個人がどれほど共産党の路線や価値観に近いかを評価できるのだ」【40】
個人情報とビッグ・データを駆使して、政府は標的にした市民を解雇させたり、銀行の融資を取り消させたりすることができる。免許を無効にし、あるいは病院での診療を受けさせないなども可能だ。
今日、中国は世界一の監視システムを備えている。公共の場でも路上でも、監視カメラは至るところにある。ほんの数分でブラックリストの人間を14億人の中から特定することができる。スマホのウィーチャット(日本のラインに相当するチャット機能)に埋め込まれたソフトが、すべての会話を監視している。政府から身を隠せるところはない。科学技術が発達し、政府がより大きくなれば、欧米も社会主義への道を歩むようになるだろう。その結果は、継続的に監視し、圧力をかけ、管理する社会だ。これは、決して大げさなシナリオではない。
6. 共産主義が欧米にしかけた全面戦争
共産邪霊が浸透した今日のアメリカ社会は深刻に分断された。左翼は伝統文化を重んじる人々を権力でねじ伏せた。「戦争」という言葉は、少なくとも誇張ではない。
通常、アメリカの大統領選は両党が激しく対立し、激戦を繰り広げるが、選挙が終わればその熱も冷める。政治も正常な状態に戻っていく。
しかし、2016年選挙戦の初期の頃、政府のある左派高官はすでに、両党の大統領候補をどうやって扱うかを計画していた。選挙戦が終わると、左翼は選挙のやり直しを求めて裁判を起こした。新大統領が就任すると、左派のワシントン市長は大統領に反対する「爆発的な支持」があると発言した。野党の上層部は、激高したリベラル議員たちが、あらゆるところで新大統領を妨害し、彼に「全面戦争」【41】 を仕掛けたがっていたと告白している。
左翼はあらゆる手段を駆使して目的を達成しようとする。政敵を倒すためにはどんな政策にも反対する。政党によって異なる政策を目指すのは普通のことだが、母国の安全を守るという共通の理念があるはずだ。しかし、ある州政府は「聖域都市」法を設けた。この地域にいる移民は、在留資格の有無を調査されることがなく、地元市政府も連邦法執行機関に移民書類を提出する必要がない。
選挙戦の前、左翼の主流マスコミは、左派政党の候補者を持ちあげる報道を続け、国民に当選は確実という印象を与えた。そのため、多くの人はその選挙結果に茫然とした。選挙戦が終わると、マスコミは左派政治家と結託し、新大統領のマナー問題をセンセーショナルに取り上げ、フェイク・ニュースが続出した。マスコミは新大統領の実績をすべて無視する一方、左派政党の候補者にまつわる深刻な問題を報道しなかった。
正常な社会において、異なる団体や政党が異なる見解を持ち、対立が起こることは往々にしてあるだろう。しかし、そのような対立は一時的で地域的なものであり、最終的に、双方は平和的な解決の道を模索するのが普通だ。もし一方の団体が共産邪霊の階級闘争に憑かれているのなら、政争はエスカレートして戦争となる。調和や平和的な妥協は不可能となり、一方が片方を破り、現行の制度が完全に壊されるまで戦争が続く。
この包括的な戦争に反映されたのは、政治の駆け引き、方針の策定、世論戦争、深刻な社会の断絶、過激派と暴動の増加といった全面対決である。これこそまさに、共産邪霊が望んでいたことである。
2016年、AP通信と広報研究センター(Center for Public Affairs Research)の調査によれば、回答者の85%が、過去に比べて政治的に分断されたように感じると答えた。80%が、アメリカが重要な価値観において、深刻に分断されたように感じると答えた。【42】
国が結束するには、共通の価値観や共有する文化が必要である。異なる宗教には異なる教義があるが、善悪の基準は似ているはずである。これで、アメリカの民族集団が調和しながら生活することができる。しかし、価値観が分断されてしまえば、国自体が結束できるかどうかは疑問である。
結論
すべての人間は、心に弱さと悪を持っている。権力、富、名声への欲求は、人類の誕生から存在していた。邪悪は意図的に、人間の心に潜む悪を利用し、すべての国に彼の「代理人」を派遣した。国家は、あたかも人間の身体のようである。すべての機関(たとえば企業や政府など)は人間の臓器にも似ている。それぞれの臓器が異なる機能を持ち、その義務を遂行する。しかし、もし邪悪の代理人が国に浸透したら、それはまるで外来の意識が人間の魂を乗っ取ってしまったのと同じである。つまり、外来の意識が人間の身体を支配しているのである。
もし、誰かが社会を揺り動かし、邪悪の支配から目覚めさせようとするならば、この稼働しているシステムはあらゆる手法で拒絶してくるだろう。例えば、メディアを使って反対者の品位を貶めたり、個人攻撃や偽情報で大衆を騙したり、敵意を仕向ける、政府の法令を無視する、反対者への援助の打ち切り、社会全体を分断と対立に追い込むなどである。反対者でさえも、何も知らない世間一般の人々を、邪悪に対抗する人たちに対して敵意をけしかける。多くの人々が、このシステムの創設者であり、またその被害者でもある。彼らは悪事に手を貸したが、本当の人類の敵ではない。
国家や私有の権力を持つ者は、圧倒的に有利な経済的資源へのアクセスと結集力で、国内あるいは世界で、すべての人間に利益をもたらすことができる。一方、その権力を悪用すれば、巨大な災難を引き起こす。今日の世界政治の背後には常に共産主義が絡んでいる。この章の目的は、読者が正と邪を識別し、邪悪の陰謀を認識し、政治を正しい道へと引き戻すためである。
レーガン元アメリカ大統領は言った。「時々、われわれは、社会が複雑になりすぎて自己管理が難しくなったし、エリート集団による政府の方が、人民のための、人民による政府よりも優秀だと思う誘惑にかられる。しかし、誰も自分自身を管理する能力もないのに、一体われわれの誰が他人を管理する能力があるというのか?」【43】 同様に、トランプ大統領は、「われわれは政府を崇拝しない、神を崇拝するのだ」と言った。【44】
政権は、伝統的価値観に基づいて正しい道に戻る必要がある。神の祝福だけが邪悪の陰謀に対抗し、人間を奴隷化と滅亡から救うことができる。神が人間に与えた伝統と価値観に立ち戻ることにより、人間は苦難から脱出できるのだ。
参考文献
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[11] 同上.
[12] Alexis de Tocqueville, Democracy in America, Volume 1, trans. Henry Reeve (New Rochelle, New York: Arlington House).
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[21] Jonah Goldberg, “Trump’s Populism Is Not Reagan’s Populism,” National Review, April 4, 2018. https://www.nationalreview.com/2018/04/donald-trumpr-ronald-reagan-populism-different/.
[22] Paulina Firozi, “Trump: ‘In America We Don’t Worship Government, We Worship God,’” The Hill, May 13, 2017. http://thehill.com/homenews/administration/333252-trump-in-america-we-dont-worship-government-we-worship-god.
[23] Emily Ekins and Joy Pullmann, “Why So Many Millennials Are Socialists,” The Federalist, February 15, 2016, http://thefederalist.com/2016/02/15/why-so-many-millennials-are-socialists/.
[24] Steven Erlanger, “What’s a Socialist?” New York Times, June 30, 2012, https://www.nytimes.com/2012/07/01/sunday-review/whats-a-socialist.html.
[25] Werner Sombart, P. M. Hocking, Why is There no Socialism in the United States? Palgrave Macmillan; 1st ed. (1976 edition).
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[28] Milton Friedman, Rose D. Friedman, Free to Choose: A Personal Statement, Mariner Books, reprint edition. (November 26, 1990).
[29] Matthew Vadum, “Soros Election-Rigging Scheme Collapses: The Secretary of State Project’s death is a victory for conservatives,” FrontPage Magazine, July 30, 2012, https://www.frontpagemag.com/fpm/139026/soros-election-rigging-scheme-collapses-matthew-vadum.
[30] Rachel Chason, “Non-Citizens Can Now Vote in College Park, Md.,” Washington Post, September 13, 2017, https://www.washingtonpost.com/local/md-politics/college-park-decides-to-allow-noncitizens-to-vote-in-local-elections/2017/09/13/2b7adb4a-987b-11e7-87fc-c3f7ee4035c9_story.html?utm_term=.71671372768a.
[31] 羅秉祥:〈西方人本主義倫理與基督教思想〉,《輔仁宗教研究》,第十五期(2007 年夏),頁75-126.
[32] Brad Stetson, Joseph G. Conti, The Truth About Tolerance: Pluralism, Diversity and the Culture Wars (InterVarsity Press, 2005), 116.
[33] California Code, Health and Safety Code 1439.50. https://codes.findlaw.com/ca/health-and-safety-code/hsc-sect-1439-50.html.
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[36] Bilveer Singh, Quest for Political Power: Communist Subversion and Militancy in Singapore (Marshall Cavendish International (Asia) Pte Ltd, 2015).
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[41] Chuck Diaz, “Stirring Up Trouble: Communist Involvement in America’s Riots,” Speak up America, http://www.suanews.com/uncategorized/the-watts-riots-ferguson-and-the-communist-party.html.
[42] V. I. Lenin, The Revolutionary Army and the Revolutionary Government, https://www.marxists.org/archive/lenin/works/1905/jul/10.htm.
[43] Blake Montgomery, “Here’s Everything You Need To Know about the Antifa Network That’s Trying To Solidify A Nazi-Punching Movement,” BuzzFeed News, September 7, 2017, https://www.buzzfeed.com/blakemontgomery/antifa-social-media?utm_term=.byGA2PEkZ#.hd4bxVe0B.
[44] 1956 Report of the House Committee on Un-American Activities (Volume 1, 347), quoted from John F. McManus, “The Story Behind the Unwarranted Attack on The John Birch Society,” The John Birch Society Bulletin (March 1992), https://www.jbs.org/jbs-news/commentary/item/15784-the-story-behind-the-unwarranted-attack-on-the-john-birch-society.
【引用元】第八章:共産主義が引き起こした政治の混乱(上) | 大紀元 エポックタイムズ (epochtimes.jp)
第八章:共産主義が引き起こした政治の混乱(下) | 大紀元 エポックタイムズ (epochtimes.jp)