かつて社会主義国だったチェコにおいて、チェコ議会下院は先日、「刑法」第403条の改正案を可決し、共産主義運動の支持や宣伝を処罰の対象とすることを決定した。刑罰は最長で1年から5年の懲役となる可能性がある。この改正案は、今後上院の承認を経て、大統領の署名によって正式に発効することになる。
チェコの近代史
ナチスドイツの占領下にあった第二次世界大戦が終結した後、ソ連の影響の下で、1948年からチェコスロヴァキア社会主義共和国となった。 1968年に「プラハ(現・チェコ共和国の首都)の春」と呼ばれる民主化運動が進められたが、ソ連を中心とするワルシャワ条約機構軍に鎮圧され、1969年、新たにチェコとスロバキアの連邦制による国となった。
1989年民主化革命が起こり、チェコスロバキア共産党政権が倒れ、大規模な流血に至らなかったことから、ビロード革命と呼ばれている。 1993年にはスロバキアと分離して新しい国となり、その後、1999年にはNATOに加盟、2004年にはEUに加盟した。
下院での「刑法」第403条の改正案可決
改正が予定されている第403条の内容は以下の通りである。
ナチズム、共産主義、その他明確に人権や自由の抑圧を目的とする運動を創設・支持・宣伝した者、または人種、民族、国家、宗教、階級に対する憎悪、あるいはその他の集団への憎悪を扇動した者は、1年から5年の懲役刑に処される。
この提案には、出席した160人の下院議員のうち86人が賛成票を投じ、反対票はなかった。
提案者の一人であるキリスト教民主同盟(KDU-ČSL)のシモン・ヘレル(Šimon Heller)議員は「ナチズムと共産主義には多くの共通点があります。強制収容所、殺人、全体主義的支配。私たちはなぜ、この二つの同じく罪深いイデオロギーに対して異なる態度を取らなければならないのでしょうか?」と述べている。
【引用記事】NTDジャパン
チェコ上院議長ら90人、台湾訪問へ 中国反発、米国評価
2020年8月、チェコのミロシュ・ビストルチル上院議長をはじめとする約90人の代表団が台湾を公式訪問した。この訪問は、中国から強い反発を受けたが、米国は高く評価している。ビストルチル氏は、訪問が「チェコの元大統領ヴァーツラフ・ハベル氏の精神を受け継ぐもの」と強調した。ハベル氏は、共産主義政権を倒したビロード革命の立役者であり、台湾の国際社会復帰を支援していた。この訪問には、ハベル氏の遺志を継ぎ、同年2月にヤロスラフ・クベラ前上院議長が中国の反発を振り切り、訪台予定だったが、中国大使館から脅迫され直前の1月に急逝したそのクベラ氏の遺志を引き継ぐ意味も込められている。
チェコは、台湾とは国交がないが、人権や民主主義といった価値観を共有するパートナーとして関係作りを熱心に進めてきた。
チェコ政府に対するサイバー攻撃は「中国に責任」と非難
産経新聞(2025年5月28日)によると、東欧のチェコ政府は5月28日、外務省の機密情報に対するサイバー攻撃で「中国政府に責任がある」と断定し、非難した。抗議のため、中国大使を呼び出したと発表した。北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)は、それぞれ声明でチェコに連帯を示した。
世界に浸透する共産主義の脅威と対策
チェコの法改正案は、共産主義への警戒を示すものであり、過去の教訓を踏まえたものだ。共産主義は、人権侵害や全体主義を引き起こしてきたことをチェコは熟知しており、国際社会での対応が求められる。
共産主義は、政治、経済、法律、教育、メディア、芸術、文化を含むすべての社会分野を転覆させ、支配してきた。今日、人類は危機的な状況に直面している。
特に、中国共産党は、歴史上(毛沢東時代)8千万人もの自国民を虐殺し、近年では今世紀最大の人権侵害と言われる法輪功(気功)に対する迫害や、ウイグル人など少数民族や香港への弾圧問題などが国際社会で問題視されており、こうした動きに対して民主主義諸国が連携を強める傾向が見られる。
米国でも「中共が最大の脅威」と対中政策を強化している。しかし時は遅く、共産主義のイデオロギーは変質した形で世界中に浸透し、着実に根を下ろしている。
日本と中国の関係
チェコは、2019年に北京との姉妹都市協定を解消し、台北市と姉妹都市協定を結んだ。これに対し、日本はどうか?日本は現在、中国と381の友好都市提携を結んでおり、この数は1973年に神戸市と天津市が提携を結んで以来続いている。この状況は、日本が共産主義や中共の脅威を適切に認識していないことを示している。知らない内に日本も乗っ取られかけている中で、日本もチェコのように、将来の共産主義の脅威を防ぎ、自分や家族、日本を守るためにも共産主義(悪魔)を知ることは大事なことだ。
共産主義とは何かについて:『悪魔が世界を統治している』(九評編集部)
【参考資料】自治体国際化協会北京事務所