2025年、米ワシントンで開催された国際人権フォーラムにおいて、元北京大学法学部教授である袁紅冰氏が登壇。中国共産党(中共)による「法輪功」への迫害と、それが国境を越えて展開されているという衝撃の実態が明かされた。
中共が国外でも思想や信仰への抑圧を行っている「越境弾圧」という新たな人権侵害の形――その実情と背景とは。
法輪功迫害は「21世紀最大の人権災害」
袁氏は壇上で、中共が法輪功学習者に対して行ってきた組織的弾圧について、
「法輪功学習者による勇敢で悲壮、そして粘り強い迫害への抗議活動は、現代中国において最も影響力のある、壮大で力強い人権運動の一つを成しています」
と述べ、信念を貫こうとする人々の精神力とその影響力の大きさを評価した。
続けて、
「法輪功学習者が推進してきた『九評(共産党についての九つの論評)』の伝播や真相を伝える活動は、中共の暴政がいかに反人道的・反自由・反人類的であるかという邪悪の本質を力強く明らかにしました。また、法輪功学習者たちが発起した中共およびその関連組織からの脱退運動は、14億の中国人の精神の奥底から湧き上がった、奴隷的支配に対する壮大な蜂起と捉えることができるでしょう」
と語り、この運動が中国社会の変革に結びつく可能性があることを示唆した。
弾圧されても消えなかった信念
袁氏はまた、中共による弾圧が法輪功を押し潰すどころか、逆にその存在を強めていると指摘している。
「今日に至るまで、法輪功は弾圧によって消滅させられるどころか、かえってますます強くなっています。法輪功学習者たちが創設したさまざまなメディアは、現在、海外の中国語メディアの中で最大規模の存在となっています。欧米諸国が中共の暴政の反人類的な本質を深く理解するうえで、これらのメディアは代替不可能な役割を果たしています」
これらのメディアは、信仰の自由だけでなく、言論の自由、そして民主主義社会における真実へのアクセスを守るための砦としても機能していると言える。
中共党首による“密命”――標的は創始者と海外メディア
袁氏は中共内部の情報として、2022年の党大会前、習近平党首が「海外の法輪功学習者への新たな迫害を命じた」と証言。中共が策定した謀略は「一つの中心、二つの基本点」で、その中心とは、法輪功の創始者である李洪志氏に対する人格攻撃と道徳的なイメージを破壊をすること。そして二つの基本点とは、法輪功学習者が創設したメディアに対して、世論戦と法律戦を展開することだとされています。
袁氏は次のように説明。
「いわゆる“世論戦”とは、欧米の民主国家における主流メディアを利用して、デマや中傷、虚偽情報を流布し、法輪功に対して全面的な情報攻撃を仕掛けることを指します。」
さらに続けて、
「“法律戦”とは、欧米の司法制度を利用して、法輪功の創始者や神韻芸術団、そしてその他の法輪功学習者が設立した文化機関やメディアに対して、悪意のある訴訟を起こすことを意味します。虚偽の告発や事実に反する主張を用いた、執拗かつ濫用的な訴訟を通じて、法輪功の名誉と道徳的なイメージを損なおうとするのが狙いです。」
袁紅冰氏は、現在中共が法輪功に対して仕掛けている世論戦や法律戦は、決して単発的なものではなく、米国社会に対する中共の広範な統一戦線工作や浸透工作の一環であると強調している。
テキサス州が下した「越境弾圧」への一撃
このような“見えない侵害”に対抗するため、米国では具体的な動きが始まっている。2025年5月、米テキサス州は「SB1349法案」に署名。中共を含む外国勢力による越境的な脅迫や嫌がらせを刑事犯罪と定義する、全米初の越境弾圧対策法である。
この法案は、米国内で活動する亡命者や信仰団体の安全を保障し、9月から施行予定。人権団体「ナショナル・アーマー」も「民主主義国家が中共などの圧力に屈しない意思を示す重要な一歩」と評価している。
法の力が信仰の自由を守る時代へ
在米中国人の人権派弁護士・呉紹平氏は、この法案の意義を次のように述べている。
「この法律は、越境弾圧を明確に定義し、攻撃や尾行、脅迫といった具体的な行為を対象とするものです。法の力によって、自国の司法主権と、人々の自由な精神が侵害されることを防ぐことができます」
※法輪功:
1992年に中国で伝え出された気功で、身体の健康と道徳心の向上に顕著な効果があったため、わずか数年の間に1億を超える人々に愛好されるようになった。ところが、当時の国家主席・江沢民(2022年11月30日に死去)は法輪功の爆発的な人気に強く嫉妬し、中国共産党を利用して、1999年7月20日に法輪功に対する弾圧を発動した。以来、法輪功学習者は不法逮捕や拷問、強制労働、性的虐待や集団レイプなど、更には「生体臓器狩り」にまで及ぶ残虐な迫害を受けている。
【引用記事】NTDジャパン(2025年6月12日)
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