中国共産党(中共)などの外国勢力による越境弾圧に対抗するため、米テキサス州のグレッグ・アボット知事は最近、「SB1349法案」に署名した。これにより、テキサス州は全米で初めて越境弾圧を防止する法律を成立させた州となった。
テキサス州のアボット州知事は、5月24日に「SB1349法案」に署名した。
この法案は、外国政府やテロ組織による脅迫や嫌がらせからテキサス州内にいる個人を保護することを目的としており、信仰の自由や言論の自由といった基本的人権の保護を強化するとしている。法案は9月1日に施行される見通しだ。
米非営利団体「ナショナル・アーマー」は、X上で次のように表明している。これは米国初の「反・越境弾圧法」であり、テキサス州が中共などの外国の敵対勢力に対して、最初に警告を発したものである。「SB1349法案」は、外国勢力によるテキサス州内での越境弾圧を初めて刑事犯罪として定義した。さらに、新法ではこの種の行為に対する法執行機関の訓練を義務付けており、州政府主導の調査研究を通じて関連する脅威の評価を行うことも求めている。
米国在住の中国人人権派弁護士・呉紹平氏は、米連邦レベルではこれまで、越境弾圧行為を明確に定義する法律が存在しないと述べ、そのため、テキサス州の新たな法案は非常に重要な意義を持つと指摘している。
米国在住の人権派弁護士 呉紹平氏
「この法律は、何を越境弾圧と呼ぶのかを明確に定義しています。例えば、各種の攻撃、脅迫、尾行などが具体的に列挙されており、非常に詳細な法的表現が含まれています。これにより、法執行機関は法律に基づいた対応が可能になります。この法律は、法の力によって自国の司法主権が中共から侵害されることを防ぐものであり、もう一つの側面としては、越境的な侵害を受けている亡命者や信仰団体など、海外在住の個人の自由と安全を守ることにもつながります」
今年2月、米下院の国土安全保障委員会は『中共の脅威に関するブリーフィング』を発表し、中共による米国内でのスパイ活動や越境弾圧がエスカレートしていることを明らかにした。
トランプ政権はこれに対し、「我々の主権を侵害する時代は終わった」と断固たる姿勢を打ち出した。
大紀元のコラムニスト・王赫氏は、中共による越境弾圧が米国全土で極めて顕著になっており、各界からの反発を招くとともに、政界でも強い関心を呼んでいると述べている。
大紀元のコラムニスト 王赫氏
「最終的な目的は、アメリカを引きずり下ろし、中国共産党が世界を支配することにあります。その過程の中で、中共は国内で法輪功を迫害しており、アメリカにいる法輪功の学習者たちが真相を伝えるための非常に効果的な活動を行っていることが、中共が嫌がる最大の要因となっています。そのため中共は、アメリカ国内で長年かけて築いてきた資源や影響力を総動員して、法輪功を徹底的に弾圧しようとしているのです。最近では、法的手段を使った“法律戦”や、大々的な“世論戦”を展開し、各地での嫌がらせや破壊行為を行ってきました。さらには、(神韻公演の)劇場に爆弾を仕掛けるというような脅迫まで行われており、その行動は極めて卑劣で、中共自身が自らの道を閉ざすような行為だと言えるでしょう」
呉紹平氏は、これまで中共が法輪功学習者に対して街頭で嫌がらせを行い、そのことを警察に通報しても対応が難しいケースが多かったと指摘し、今後はそうした状況が変わっていくと述べている。
※法輪功:
1992年に中国で伝え出された気功で、身体の健康と道徳心の向上に顕著な効果があったため、わずか数年の間に1億を超える人々に愛好されるようになった。ところが、当時の国家主席・江沢民(2022年11月30日に死去)は法輪功の爆発的な人気に強く嫉妬し、中国共産党を利用して、1999年7月20日に法輪功に対する弾圧を発動した。以来、法輪功学習者は不法逮捕や拷問、強制労働、性的虐待や集団レイプなど、更には「生体臓器狩り」にまで及ぶ残虐な迫害を受けている。
※神韻芸術団:
2006年に設立され、米国・ニューヨークに本部を置く、独立した非営利団体。中国共産党に よって破壊された中国の伝統文化の復興に取り組んでおり、共産主義以前の中国の美しさと善良さを復活させることを目的としている。
呉紹平氏
「テキサス州のようにこのような法律ができれば、立法の段階でこの種の行為が刑事犯罪であると明確に定義されます。それによって、こうした越境弾圧や“ロングアーム管轄”のような行為に対して、直接この法律を適用して取り締まることが可能になります。この効果はこれまでとは大きく異なります」
「SB 1349法案」の共同発起人の一人であるテキサス州のコール・ヘフナー議員は、SNSで「これはテキサス州の議員たちによる共同の努力の結果です」「テキサス州は、外国のスパイが我々の領土で言論を抑え込もうとする企てを決して許しません」と投稿した。
王赫氏は、テキサス州が「第一の一撃」を放ったことで、他の州や連邦政府に対しても大きな示範効果をもたらすと述べ、この動きが中共にとって大きな脅威となり、警戒心を高めることになるだろうと語っている。
王赫氏
「中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省(DHS)、司法省などは、中共の代理人や、越境弾圧に類する多くの行為に対して、これまでにも多くの人物を逮捕し、個別の事件として取り組んできました。テキサス州の今回の立法は、連邦政府にとっても一つの後押しになる可能性があります」
非営利団体「ナショナル・アーマー」は、米国の他の州でも中共の影響力に対抗する同様の法案を推進する動きが広がっていると述べている。
テキサス州による対中共対抗策は、今回が初めてではない。昨年11月、テキサス州のアボット知事は、中共による州内での影響力工作を阻止するため、3本の行政命令を相次いで発令している。
【引用記事】NTDジャパン(2025年5月29日)