北京冬季オリンピック(五輪)が間もなく開幕(2月4日)する。出場選手たちや北京当局、国際社会にとって前例のない困難なイベントとなるだろう。国際人権組織の「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が五輪参加選手たちを招いて、セミナーを開催した。共産主義国家では選手たちの安全が十分に保障されないことを懸念してのことのようだ。
北京五輪で人権問題めぐる発言自粛、専門家が警告
ロイターによると、人権団体の専門家らは1月18日、来月の北京冬季五輪に参加する選手に対し、身の安全のために中国国内にいる間は人権問題について語らないよう警告した。非営利の国際人権組織であるヒューマン・ライツ・ウォッチが主催したセミナーで語った。
人権団体はかねてから、中国政府によるウイグル族などイスラム系少数民族の扱いを問題視し、国際オリンピック委員会(IOC)が中国を五輪開催地に選定したことを批判してきた。米国は中国のウイグル族への弾圧をジェノサイド(民族大量虐殺)と見なして非難しているが、中国は人権侵害を否定している。
国際的なアスリートらによる団体「グローバル・アスリート」の代表であるロブ・ケーラー氏はセミナーで、「選手はほとんど守られないだろう。沈黙は共犯にもなるが、参加選手には何も語らないことを勧める。彼らには五輪で競技をし、帰国した際に発言してほしい」と語った。
北京五輪大会組織委は「人権問題発言の選手を処罰する」と警告
セミナーの翌日(1月19日)、北京冬季五輪の大会組織委員会が、オリンピック精神や中国のルールに反する言動をした選手について、処罰する方針を明らかにしたとBBCが報じた。
大会組織委員会の国際関係部局の副責任者楊舒(ヤン・シュウ)氏は、「オリンピック精神に沿った表現は、いかなるものも間違いなく保護される。オリンピック精神に反した行動や発言、特に中国の法律や規制に違反するものは、いかなるものも特定の処罰の対象となる」と述べた。
処罰としては、選手の参加資格の剥奪が考えうるとした。
中国は、少数民族ウイグル族など主にイスラム教徒らを集団虐殺していると非難されている。中国はこの疑惑を繰り返し否定している。
五輪選手たちは誰が守る?
北京冬季オリンピックが間もなく開幕(2月4日)する。出場選手たちや北京当局、国際社会にとって前例のない困難なイベントとなるだろう。
コロナ禍の中、東京五輪では選手や大会関係者を外界と隔離する「バブル方式」が採用された。北京冬季五輪では、さらに監視が強化された「閉環(クローズド・ループ)管理」方式で開催される。選手、大会役員、報道関係者、そして膨大な数のスタッフが、到着した日から帰る日まで、クローズド・ループ内で飲食、睡眠、仕事、競技を強いられることになる。
「人権問題の発言をした選手は処罰する」という中国の大会組織委員会だが、『オリンピック憲章』によれば、規則違反をした選手への対処はIOCが行うべきであり、主催者(中共)が行うべきものではないはずで、中共の露骨な脅しといえる。
クローズド・ループの中に隔離された選手や大会関係者たちの人権は誰が守るのだろう。
中共政権は、身体を健康にし社会に貢献したいと実践している法輪功学習者に対し、身に覚えのない罪をでっちあげ、22年もの間残酷な迫害を続けている。
このことからも、国際人権組織の「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が北京冬季五輪に参加する選手たちを招いて、セミナーを開催した理由が見えてくるだろう。共産主義国家では、選手たちの安全が十分に保障されないからだ。
【引用記事】
・ロイター https://jp.reuters.com/article/olympics-2022-rights-idJPKBN2JS2A2
・BBC https://www.bbc.com/japanese/60063866