中国共産党の「臓器狩り」生存者、法輪功学習者の生々しい証言

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国黒竜江省出身の法輪功学習者、程佩明氏は7月3日、米ワシントンで会見を開き、中国共産党(中共)によって本人の同意なく肝臓を摘出された経験を明らかにした。これを受けて、臓器収奪について複数の米議員があらためて非難を表明。法輪功への25年におよぶ残酷な弾圧をやめるよう、党に求めた。

程氏は中国を2015年に離れ、米国当局の協力を経て2020年に渡米。米国での医療診断で、肝臓と肺の一部が摘出されていることがわかった。

「私は千辛万苦のすえ、魔の巣窟から逃れ米国に来ることができた。私の願いは、この悲痛な経験を公にして、中共による残酷な迫害と臓器摘出の犯罪を明らかにすることだ。米国に感謝申し上げる」

◇死からの生還

程氏は会見で、その半生を語った。1965年に黒竜江省鶏西市で生まれ、1998年から法輪功(気功)を始めた。中共によって5回も連行され迫害を受け、2001年12月に8年の刑を言い渡された。

黒竜江大慶刑務所に収監されていた2004年11月16日、健康であるにもかかわらず、大慶第四病院に移された。「危篤」状態だから「手術で死亡する確率は8割」と程氏の家族は警察に告げられた。

「(警官は)手術の同意書にサインするよう求めたが、私は拒んだ。その時、6人の警察官が私を押さえつけ、麻酔を打った。19日に目覚めたとき、右足はベッドに鎖でつながれ、片腕には点滴が打たれ、両足にも静脈注射の管が刺さっていた。鼻に酸素チューブが入れられていた」

程氏は約一週間後の23日、大慶刑務所に戻された。当時は「毎日咳をして、左肋骨に痛みとしびれがあり、起き上がることができなかった」という。今でも左腕と肋骨に痛みが残っている。胸部左側には、35センチにわたる切開痕がある。

 切除された肝臓について述べる程佩明さん(明慧ネット)

◇二度目の病院への連行

程氏は会見で、自分が2度目の臓器狩りにあいかねない状況だったことを明らかにした。

2006年2月14日、刑務所における拷問が続くことへの抗議として、程氏はハンガーストライキで抗議していた。

20日後の3月2日、体調不良ではないにもかかわらず、程氏は大慶の別の病院に移送された。「私は5階に閉じ込められ、足かせでベッドの枠につながれ、2人の警察官に監視されていた。そこに医師が来て、私の腹を触り『明日手術をする』と告げた」

その日、程氏の妹が来院。看守は手術の目的は「飲み込んだカミソリの刃」を取り出すことで、「死亡する確率は8割」と言われたという。

「嫌な予感がした」と程氏はふりかえる。

3日未明、程氏は監視の目をかいくぐり、非常階段を通って病院から脱出した。中国公安部はB級指名手配令を出し、5万元の懸賞金をかけた。

「のちに明慧網で法輪功学習者の臓器が生きたまま摘出されているというニュースを見て、恐ろしくなった。病院での経験を思い返すと、身震いする。最初の病院で行われた『手術』が何を意味するのか、あとからわかった」

◇米国で検査 肝臓の切除があきらかに

程氏が中国で受けた手術について知るため、米医療機関ではMRIやCT、超音波検査など細かな検査を受けた。記者会見に同席した、米ハーバード医科大学で画像診断研究を行う法輪功修煉者チャールズ・リー(Charles Li)氏がその詳細を報告した。

「分析によると、程氏の肝臓左葉が切除されていることが確認された」

リー氏は、程氏のCTスキャンでは肝臓左側の2区域と3区域が欠損していると説明した。アジア人男性の左肝と右肝の比率はおよそ45対55だが、程氏は27対73だった。このほか、CTスキャンの3D再構成で手術切除の痕跡がみられた。

程氏の診断結果は肝移植医を含む10人の医師が分析しており、上記の所見を認めたという。

◇臓器狩り生存者は「奇跡」

米カトリック大学の名誉教授セン・ニー(Sen Nieh)氏は会見の場で、程氏が生存できたことは、まさに「奇跡」だと述べた。そして、喫煙や飲酒といった悪習慣のない39歳は、最適の“ドナー”だっただろうと見解を述べた。

「(最初の臓器移植)手術は服役から2年目に行われ、まだ6年の刑期が残っていた。病院から刑務所に戻れば『ドナー』となる可能性があったのだ」

医学研究分野で働いた経験のある在米独立評論家の横河(Han He)氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、「中国では、臓器のために人が殺される」と答えた。

「強制臓器摘出それ自体が違法なため、基本的に(摘出された人物のなかに)生存者はいない。部分移植や不適合だったなどの特殊な状況で、程氏の臓器は全摘されることなく、生き残ることができた」

「被害者の証人はめったに現れないが、強制臓器摘出の事情を知る医師は多いはずだ。しかし、自ら犯罪行為を公にする勇気あるものは少ない」

◇国務省が調査指示

程氏が米国に来て自身の経験を公に語るうえでは、コロンビア大学法学部教授のロバート・デストロ(Robert Destro)元米国務省人権担当次官補が、決定的な役割を果たしている。

デストロ氏は、2015年に中国を離れた程氏の状況を知った後、国務省の民主主義・人権・労働局から東アジア太平洋局に対して、この事件の調査と状況把握を指示したことを明らかにした。

「提供された情報に基づき、事件はさらなる調査に値すると判断した。程氏を米国に招き検査とさらなる調査を受ける手続きをした」

デストロ氏は、臓器収奪は「恐ろしい形の人身取引だ」と指摘。世界的にみられる犯罪ではあるものの、中国では「(共産党)国家が奨励しているといった十分な情報証拠がある」と強調した。

◇米政治家、中共の臓器収奪と法輪功への迫害を非難

過去25年間、中共は法輪功学習者に対して、全国規模の徹底的な弾圧を行ってきた。明慧ネットによれば、学習者は公職追放、学業中断、違法拘禁、絶命にいたるほどの拷問などが行われてきた。

特に深刻なのは、臓器収奪だ。

2019年、英国ロンドンに本部を置く民間裁判機関である中国(臓器収奪)法廷(China Tribunal)は、「臓器収奪は、中国全域で、何年にもわたり、かなりの規模で行われてきており、法輪功学習者がおそらく主な臓器源である」との結論(裁定の要旨)を下した。

この結論については、米国務省が6月に発表した「2024年度 人身取引年次報告書」(英語原文)にも記載されている。

 

◇米議会、臓器収奪犯罪者に対する制裁法案 下院可決

近年、米議員は、臓器収奪を阻止するための強力な法的措置を講じることに力を入れている。

今年5月、上院議員マルコ・ルビオ(Marco Rubio)氏や下院議員クリス・スミス(Chris Smith)氏は、ブリンケン国務長官に書簡を送り、臓器収奪を阻止するために可能な限りの手段を尽くすよう求めた。

スミス氏は超党派の中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)の委員長であり、ルビオ氏はその委員会の委員を務める。書簡の中で、米国務省の懸賞金プログラムを利用して情報を求め、最終的に臓器摘出を目的とした人身売買という恐ろしい行為に関与した中国の個人に責任を負わせるよう呼びかけた。

6月25日、下院の超党派議員は全会一致で「法輪功保護法案」(Falun Gong Protection Act, H.R. 4132)を可決した。この法案は、中国国内で臓器収奪に参加し協力した個人に対して米国が制裁を課すことを要求している。制裁措置には、米国内の資産凍結、米国への入国禁止、ビザの取り消し、最高100万ドルの罰金および20年以下の禁固刑などが含まれる。

この法案は、上院で同様のバージョンが可決され、大統領の署名を得て法律となる。

程氏は記者会見で、交友のあった学習者20人以上が迫害によって死亡したと述べ、彼らのためにも正義を訴え続けるとした。

「私が今日ここに立っているのは、自分のために声を上げるためではない…同じ時に迫害された人たちと約束をしている。『誰であれ、生きて外に出られた者は、必ず中で行われた罪深き迫害と真相を世界に伝える』と」

法輪功は1992年中国で伝え出された気功で、宗教や政治に関与することはなく、身体の健康と道徳心の向上に顕著な効果があったため、わずか数年の間に1億を超える人々に愛好されるようになった。しかし、当時の国家主席・江沢民(2022年11月30日に死去)は法輪功の爆発的な人気に強く嫉妬し、自分の権力を乱用し中国共産党を利用して、1999年7月20日に法輪功に対する弾圧を発動した。以来、生体臓器狩りにまで及ぶ残虐な迫害は今なお続いている。

【引用資料】中国語VOA