FCCC報告書、中国の外国人記者を阻む「嫌がらせや取材妨害など」

人権
河南省の被災地で、市民に包囲されているドイチェ・ベレの男性記者(スクリーンショット)

中国で活動する各国記者で構成する中国外国人記者クラブ(FCCC)は、1月31日に発表した年次報告書で、中国当局からの脅迫、ネット上の嫌がらせで、中国にいる外国人特派員の人数は大幅に減少したと指摘した。

報告書は、「中国政府は、外国人ジャーナリストとその中国人同僚、取材対象者に対してネット上の嫌がらせや中傷、ハッキング、ビザの却下などを含む新たな脅迫の手段を講じている」とした。

FCCCの調査に回答した外国人記者の99%は、中国での取材状況は国際的な水準を満たしていないと認識している。調査は2021年12月に実施された。FCCCに加入する30カ国・地域の特派員192人のうち127人から回答を得た。

報告書は、中国当局が独立した報道に対して妨害を続け、外国人記者へのビザ発給を厳格化するなか、中国国内での取材活動は難しくなり、「リモート報道になりつつある」との見方を示した。

報告書によると、2021年、6人の外国人記者は中国本土に滞在するリスクが非常に高いことを理由に、中国本土を離れた。

FCCCは、「過去の事例を見ると、中国当局は民事または刑事訴訟に関わり、あるいは裁判に掛けられた外国人の中国からの出国を禁止する」ことを挙げ、今後、中国で外国人記者の人数はさらに減少すると示した。

回答者のうち46%は、中国支社の記者数が足りないと述べた。

中国は2020年初め、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルといった米国の報道機関のジャーナリスト多数を国外追放した。2021年11月には双方のジャーナリストに対するビザ制限緩和で米中が合意したが、報告書によると、同年末の時点で中国はまだ、合意の下で約束した米ジャーナリスト数人のビザを発給していない。

中国当局は2020年8月、オーストラリア国籍を持つ元中国国際テレビ局(CGTN)キャスター、成蕾(チェン・レイ)氏を逮捕し、同年12月にはブルームバーグ・ニュース北京支局で働いていた中国人のヘイズ・ファン(範海茲)氏を拘束している。FCCCの報告書はこの2人の事例についても言及。中国当局はファン氏拘束後、同氏に関する情報をほとんど提供していない。ブルームバーグ・ニュースの親会社ブルームバーグ・エル・ピーは、ファン氏が国家安全を危うくする活動に関与した疑いで拘束されていることを確認している。

中国国営テレビの豪州人キャスター、中国で拘束

報告書によると、62%の回答者は、取材活動中に「少なとも1回」中国の警官や当局者に妨害された。47%の人は、「得体の知れない人物に阻まれた」と答えた。12%の人は「手荒な扱いを受けた」と話した。

 

2021年7月、中国・河南省で発生した洪水被害を現地取材する海外メディアが、地元住民から妨害を受ける事件が複数、起きている。市民らは外国人記者を取り囲み、「中国を妖魔化しようとしている」と批判した。米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、共産党の洗脳によって「町中に外国を敵視する市民がいる」と指摘した。

FCCCは報告書の中で、一部の中国国民は中国当局の宣伝に煽られ、外国人記者を攻撃したと指摘した。報告書は、中国当局者や各国の中国大使が公の場で常に欧米メディアの記者を批判すると糾弾した。

報告書は、中国当局による厳格なゼロコロナ政策の下で、「大半の記者は駐在都市を除く地域で報道活動が難しくなった」ことも指摘した。例えば、ウイグル族などの少数民族に対する人権侵害が伝えられる新疆ウイグル自治区への立ち入りも難しい状況にあり、2021年、新疆ウイグル自治区を訪れたジャーナリストのほぼ90%は、「大抵の場合、私服の男たちによって、あからさまに後をつけられた」と報告した。

FCCCは、中国本土から離れる外国人記者が増え、現地での取材活動ができなくなっていることで、中国に関する報道の質が落ち、「損失を被った」との認識を示した。

【引用記事】
・大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2022/02/85904.html
・Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-02-01/R6LVHVT1UM0X01
・CNN https://www.cnn.co.jp/world/35182902.html