中国「人権派」2人、世界人権デー前に所在不明に

人権
唐吉田・元弁護士(大紀元)

中国の人権活動家として知られる元弁護士ら2人が、12月上旬から相次ぎ半月以上も所在不明となり、「当局に拘束された」との見方が強まっている。世界人権デーや北京冬季五輪を前に「国際的な騒ぎになると困るため、監視下に置いたのだろう」との意見もある。

2人は国外にいる重病の家族を見舞うため出国を希望していたが、「国家安全」を理由に当局に阻止されていた。12月23日には有志でつくる中国人権弁護士団が、自由や出国の権利を奪うのは「政府が負う人道主義に反する」との抗議声明を発表した。

関係者によると、所在不明の2人は元弁護士の唐吉田氏(53)と、作家の郭飛雄氏(55)。過去に体制批判などで当局側に拘束されたことがある。

唐氏は12月10日に駐中国EU代表事務所が主催する「国際人権デー」行事に出席する予定だった。開始時刻の数時間前に「安心できない」と知人に電話で伝えた後、連絡が取れなくなっているという。

中国の著名な人権活動家でもある郭氏は、2021年1月28日、ガンを患う在米の妻の看病のために上海浦東空港から米国行きの飛行機に乗ろうとしたが、当局の言う「国家安全上のリスク」の理由で止められ、出国できなかった。12月5日頃、郭氏は「また逮捕された」との発信後、所在不明になったという。

 

著名な人権派弁護士の唐吉田氏

唐吉田氏は、中国の著名な人権派弁護士で、長年にわたり、土地収用の被害者、法輪功学習者、言論の自由、市民的・政治的権利、その他の弱者の権利を守るために活動してきた。2009年、2010年、2011年、2013年、2014年の数回にわたり、非合法的に拘留された。2010年、唐吉田氏は北京市司法局から「裁判所の規律を乱した」という理由で、弁護士資格を剥奪された。

2014年3月下旬、唐吉田氏をはじめとする4人の人権派弁護士は家族に委託され、行方不明の法輪功学習者を探すために、黒竜江省建三江青龍山農場にある「洗脳教育クラス」を尋ねた。

法輪功弾圧の延長として、共産党は学習者を擁護する弁護士も弾圧する。4人の弁護士は拉致されて拷問を受けた。唐吉田氏は殴られて肋骨10本と歯が折れ、王成氏は胸骨が折れ、江天勇氏は胸部と腹部全体に打撲傷があり、肋骨が8本折れ、張俊傑氏は背骨が折れていた。この事件は「建三江事件」とも呼ばれている。

その後、当局による病院への圧力と脅迫により、唐氏は治療を受けることができず、第一脊椎と第二脊椎に結核菌が侵入した。しばらくして、北京軍総病院が唐氏を入院させ、手術を施した。しかし、病院には武装警官2人が唐氏を日常的に監視した。治療を終えないまま、病院の医師は唐氏を強制退院させた。

2016年9月、唐氏は北京で原動機付三輪車に轢かれ、腰を骨折し、腕を負傷した。警察はまだ犯人を特定できていない。 腰椎の結核が深刻化し、中国では有効な治療が受けられないため、2017年11月に香港で治療を受けようとしたが、「国家の安全を脅かす」との理由で、唐氏の出国は拒まれた。

唐吉田氏、日本に留学中の娘が重病 出国許可されず

人権派弁護士である唐吉田氏は、多くの人権課題を請け負ったことで、中国共産党当局から弁護士資格を剥奪され、10年以上にわたり出国禁止令が出されている。5月初旬、日本に留学している唐氏の娘が肺結核を患い入院したとの話を受けて、唐氏は出国許可を当局に申請した。

唐氏は自身のSNSで娘の状況を綴った。娘は脳浮腫を発症して、人工呼吸器を挿管している。日本の病院医療スタッフによる懸命な治療が続いているという。「娘にはいろいろな苦労をかけた。今までの借りを返すためにも、もっと彼女のそばにいてあげたい」と嘆いた。RFAのインタビューによれば、唐氏の娘は脚や腰にも結核菌が浸入したという。

新型コロナウイルスの流行により、当時、日本と中国を結ぶほとんどの旅客便の路線は停止していたが、日本政府は、この案件の緊急性を認め、唐氏に対して家族訪問ビザを発給した。6月2日、唐氏は福建省福州の空港から出国を試みたが、空港で中国当局者によって阻まれ、出国できなかった。唐氏の航空チケットは、破り捨てられたという。

海外の有識者 唐氏の出国許可を求める

海外の有識者は5月23日、公開書簡を作成して、唐氏が出国する権利の正当性および必要性を訴えた。同書簡には、ニューヨーク大学法学部教授のジェローム・コーエン氏、シカゴ大学客員教授の滕彪氏、台湾の中央研究院法学研究所の陳玉枝氏など学者や弁護士など100人以上が署名している。

同書簡は、中国共産党政府に向けて「人道主義と人権上の義務の尊重に基づき、唐氏が娘を見舞うため出国を許可するように」と呼びかけている。

書簡の文書は、世界人権宣言第13条2項「すべての人は、自国を含むいかなる国からも出国し、自国に戻る権利を持つ」を引用して、唐氏の出国が許可されないことの不当性を指摘した。また、中国当局の主張する、唐氏の出国に関する「国家安全上のリスク」が具体的に何を指すのかは説明がないとして、その不透明性を非難した。

 

唐氏を支援している東大の阿古智子教授は、今回唐氏が行方不明になったことについて、「拘束されたとみてほぼ間違いない」と指摘している。北京冬季五輪を前に「国際的な騒ぎになると困るため、監視下に置いたのだろう」と話す。

唐氏は12月20日、「10年前と同じだ」と一度だけ知人に短い連絡を寄せたといい、民主化運動を組織した疑いで連行された2011年2月を指すとみられる。当時は拷問に近い仕打ちを受けて肺結核を患っており、阿古氏は「今回も十分な食事も与えられず、尋問されている恐れがある」とみている。

・大紀元https://www.epochtimes.jp/p/2021/06/74166.html

・大紀元https://www.epochtimes.jp/p/2021/05/73110.html

・産経新聞https://www.sankei.com/article/20211225-PKMFSEI6IFJNFAPK4RO5JWDMM4/

 

中国の人権弁護士は、共産党による弾圧の対象になることも多い。2015年7月9日以降、23省で数百人の人権弁護士らが逮捕、拘禁、召喚、事情聴取された。その後、懲役刑、弁護士資格の剥奪、偽りの自白、出国禁止リスト登録などの措置が取られた。この弾圧は「709弁護士逮捕」と呼ばれ、日本を含む世界各国でも報道された。

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