先月、米国第9巡回区控訴裁判所は、テクノロジー大手のシスコシステムズと2人の元幹部が、中共による法輪功学習者の特定と逮捕、拷問、虐殺を支援したとして告発した訴訟について審理し、判決を下した。
この判決は、2014年に下級地方裁判所が出した、シスコの元CEO(最高経営責任者)であるジョン・チェンバース氏、および中国事業担当の元副社長であるフレディ・チャン氏に対する損害賠償請求を棄却した判決を大きく覆した。
ニュージャージー州選出の共和党下院議員であり、議会中国問題執行委員会の議長でもあるクリス・スミス氏は、「もっと早く提起されるべきだったが、理由が明らかにならず長年延期されてきた今回の訴訟は、シスコのような企業が利益のために中共および国内の重大な人権侵害や弾圧に意図的に協力し、それを見て見ぬふりをすることで、中国国民に耐え難い苦痛をもたらしてきたことを浮き彫りにした」と述べた。
シスコ社は、いかなる不正行為も否定し、訴訟の主張には根拠がないとした。しかし、米国巡回裁判所のマーシャ・バーゾン判事は、シスコ社の行為が中共による法輪功迫害のための「ほう助および煽動」に相当し、拷問を含む国際法違反において「重大な作用をもたらした」と指摘した。
中共による法輪功への迫害
法輪功は1992年中国で伝え出された気功で、宗教や政治に関与することはなく、身体の健康と道徳心の向上に顕著な効果があったため、わずか数年の間に1億を超える人々に愛好されるようになった。しかし、当時の国家主席・江沢民(2022年11月30日に死去)は法輪功の爆発的な人気に強く嫉妬し、法輪功に対する弾圧を発動した。しかもこの迫害を正当化するために、法輪功を共産党の支配を脅かす危険な宗教団体であるかのようにでっちあげ、法輪功を非合法化し、法輪功学習者を迫害する専門機関(610 弁公室)を設立した。
その後、中共は法輪学習者の大量拘束、拷問、強制転向、虐殺を行い、その様子は米国務省、国連、その他世界中の多くの権威組織によって十分に記録されている。2019年、英国政府の委員会である「中国法廷」は、長年にわたって中国全土で法輪功学習者や他の囚人の大規模な強制臓器摘出が行われていることを認定した。
人権法律財団が代理人としてをシスコ社を提訴
今回の訴訟は、法輪功学習者数人の代理人として、ワシントンD.C.を拠点とする人権法律財団が提訴したもので、原告側は、シスコ社がルーター技術を意図的にカスタマイズし、中国政府が法輪功学習者を特定、追跡、拘束できるようにしたと主張している。
シスコ社の幹部が特に法輪功学習者をターゲットにしたシステムの作成に協力したという証拠には、シスコ社のマーケティング資料が含まれ、同社は高度なビデオと画像分析器を「法輪功の画像情報の90%以上を認識できる唯一の製品」と宣伝していたことだ。
訴訟ではまた、シスコ社が中国政府に、法輪功のインターネット活動パターンを深く分析したデータベースを提供し、それによって中共は法輪功のインターネット・ユーザーを特定することができたとしている。
・法輪功のインターネットトラフィックパターンに基づいて、中共に対してリアルタイムで監視と通知を提供する複数のロギング/アラートシステム。
・法輪功学習者の個人情報プロフィールを保存し、拷問を含む尋問や「強制転向」の際に使用するアプリケーション。
・中共が法輪功学習者を特定し、拘束することを可能にする全国的なビデオ監視システム。
シスコ社は、自社のカスタマイズが法輪功弾圧に利用されることに加担していただけでなく、その目的を達成するためにすべての作業を行ったと原告側は主張した。この訴訟の一部は、2008年の米上院人権公聴会の前夜に記者団にリークされたシスコ社の内部文書に端を発している。
この90ページに及ぶ文書は、シスコの内部プレゼンテーションであり、同社のエンジニアが中共のインターネット監視プログラムを、中共とのビジネス拡大の機会と見なし、特に弾圧の道具としてルーターを中国に売り込んでいたことを示していた。
米国企業には表現の自由を守る「道徳的義務」がある
イリノイ州選出の民主党議員ディック・ダービン上院議員は、米国企業には表現の自由を守る「道徳的義務」があると主張している。
人権法律財団の執行理事兼上級訴訟パートナーとして訴訟を起こしたテリー・マーシュ氏は、この訴訟の特徴は、シスコが中共に「普通」の製品を提供したのではないことを示していると述べた。それどころか、シスコは「拷問を容易にし、強制転向の進捗状況を追跡する 」機能を備えた製品を作り出したのだと指摘した。
マーシュ氏はリアル・クリア・ポリティクス(RCP)に電子メールで、「重要なのは、訴状では、当時中国は同様のツールを作成できなかったと主張しているため、支援のタイミングは重要だった」とし、これはツールの偶然の不正使用のケースではないと述べた。
原告は、中共がシスコに対し、中国における法輪功学習者への暴力的な弾圧を推進するための機能を必要としていることを明らかにし、シスコが中国市場で有利な足がかりを得るためにそれらの機能を製造したと主張している。
マーシュ氏は、判決は米国内での行為に関する具体的な申し立てによって決まると付け加えた。「訴状では、ツールの設計、部品の製造、継続的な支援の提供など、申し立ての核となる行為は主にカリフォルニア州で行われたとされている」と述べた。
ハドソン研究所の宗教自由センターのディレクターであるニーナ・シア氏は、「もし企業が、残忍な政権の支配する 機関と協力し、中国の法輪功学習者や宗教的信者、少数民族、反体制派を弾圧するために働いて、その手を血で 汚しているのであれば、これらの企業は摘発され、裁かれなければならない」と指摘し、「この訴訟は、この問題に光を当て、他の問題を阻止する上で重要な役割を果たすだろう」と 示した。
【引用記事】
・大紀元(2023年8月23日)
・大紀元(2023年8月26日)
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