米議員、IOCの免税資格はく奪求める新法案提出 「人権弾圧で中国当局と共謀」

時事
国際オリンピック委員会(IOC) 本部前のロゴ (Photo by FABRICE COFFRINI/AFP via Getty Images)

強制労働により生産された新疆綿がオリンピック関係の衣類に使用される恐れがあると指摘された問題について、国際オリンピック委員会(IOC)は1月19日、「中国産の綿は使用していない」と発表した。しかし、米下院の超党派議員はIOCが中国当局による人権侵害を無視しているとして、対抗措置となる「無責任なオリンピック協力法案」を議会に提出したという。

 

米下院の超党派議員は1月19日、国際オリンピック委員会(IOC)が中国当局による人権侵害を無視しているとして、対抗措置となる「無責任なオリンピック協力法案」(Irresponsible Olympic Collaboration Act、IOC Act)を議会に提出した。

共和党のマイク・ウォルツ下院議員と民主党のジェニファー・ウェクストン下院議員が共同で提出した同法案は、米当局者や国際人権団体の2022年冬季五輪開催地を他国に移すという要求や呼びかけを、IOCが聞き過ごしたことへの対抗措置であるという。法案は、IOCが米国内で享受する免税優遇資格をはく奪すると規定する。

米国連邦税法501条C項4号では、IOCは公益団体、社会福祉団体などと認められ、免税優遇の対象となっている。

ウォルツ議員は19日のリモート記者会見で、記者団に対して「IOCの言動を見ると、IOCは社会福祉団体とはかけ離れたものである」と話し、「われわれは、IOCは免税ステータスを保有し続けるべきではないと考える」とした。

ウェクストン議員は、IOCは人権問題より利益を重んじていると批判し、「来月開催のオリンピックを前に、IOCは依然として中国当局を支持し、当局によるウイグル人大虐殺や他の人権侵害行為の隠ぺいを手助けし、唆している」と指摘した。

「(中国当局による)人権侵害問題で引き続き共謀しているIOCは、慈善団体ではない。IOCに免税ステータスを与えてはいけない。米納税者の税金を彼らへの補助に充ててはならない」とウェクストン議員は述べた。

スイスに本部を置くIOCの主な収入源は、大会のテレビ放映権料や各国のスポンサー企業からの資金提供だ。

ウェクストン議員によると、2018年、IOCは米税務当局に対して20億ドル(約2278億円)規模の免税申請書を提出した。議員は、「無責任なオリンピック協力」法案が議会で採択されれば、IOCにとって大きな「懲罰」になると語った。

人権団体がIOCを批判 「IOCは北京五輪関連商品の生産について強制労働が関わっていないと保証できない」

WWD(2022年1月7日)によると、40カ国400団体によって構成される「ウイグル自治区の強制労働を終わらせるための連合(Coalition to End Forced Labour in the Uyghur Region)」は、国際オリンピック委員会(IOC)が北京冬季オリンピック関連商品の生産にウイグル人の強制労働が関わっていないと保証できないことに対して大きく反発している。

IOCは、サプライヤーに求める最低限の社会的・環境的要件をまとめた“サプライヤー・コード”をウェブサイトに掲載している。そこには人権、労働条件、廃棄物の最小化、輸送の最適化、倫理などが規定されている。一方、IOCの公式ウエアのサプライヤーである「アンタ スポーツ(ANTA SPORTS)」は、新疆ウイグル自治区から綿花を調達しており、矛盾した状況が露出した形だ。

これに対して、IOCが監査結果を発表した。

五輪ウエア「中国産の綿は使用していない」IOC監査結果を発表

大紀元(2022年1月20日)によると、中国の新疆ウイグル自治区における強制労働により生産された新疆綿が五輪関係者の衣類に使用される恐れがあると指摘された問題について、国際オリンピック委員会(IOC)は19日、「中国産の綿は使用していない」と発表した。米議会はIOCに対し、新疆綿の使用を公言する中国メーカー2社との契約情報開示を求めていた。

IOCは声明のなかで、2021年9月から実施してきた第三者機関による監査で「強制労働や奴隷労働、児童労働」は見つからなかったと結論づけた。問題視されてきた大手繊維メーカーの恒源祥が使用する綿は中国原産ではないとした。安踏体育用品(アンタ)が提供する衣類については、リサイクル素材を使用し「綿自体を使っていない」と主張した。

米議会の「中国に関する議会・政府委員会」は、両社が新疆産の綿使用を公言していると指摘。強制労働はないとする両社の主張を認めた根拠を示すようIOCに求めていた。恒源祥は中国の電子商取引プラットフォーム上で「3000時間日光に照らされた高品質の新疆綿」と自社製品を公然と宣伝していた。

高品質の新疆綿」を宣伝する中国メーカー 五輪衣服を提供か 米議会、IOCを追求

IOCは声明で、強制労働などの著しいコンプライアンス違反は確認されなかったものの、安全衛生や労働時間、賃金などの違反があったと認めた。各サプライヤーと合意した是正措置プログラム(CAP)を通じて改善しているという。

IOCは監査について、同委員会の製品が製造されている市場について深い知識を持つ、独立した第三者監査会社によって行われたと強調。IOCが監査を依頼し、費用を負担しているとも述べた。

米国は中国・新疆ウイグル自治区での人権弾圧を「ジェノサイド」と認定し、北京冬季五輪に外交使節団を派遣しない「外交的ボイコット」を表明している。さらに先月、強制労働を理由に同自治区からの輸入を全面的に禁止する「ウイグル強制労働防止法案」を成立させた。

【引用記事】
・大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2022/01/85484.html
・大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2022/01/85145.html
・WWD https://www.wwdjapan.com/articles/1304883