「RedState」の報道によると、米国に亡命した中共国家安全部の副部長・董経緯氏が米国防情報局(DIA)に提供した情報には10の内容が含まれていたと言う。董氏は習近平総書記と密接な関係だったと言われ、結党記念間近に国家安全部の官僚が亡命したことは、党内の全員が中共の高圧的管理下で危険にさらされていることを浮き彫りにしたと言える。
ニュース最前線 香港(2021年6月21日)によると、習近平総書記が中国共産党(中共)の上層部を率いて「永遠に党を裏切らない」と誓った6月18日は、中共国家安全部の副部長である董経緯氏が米国へ亡命した微妙なタイミングだった。中共当局は同日、デマを打ち消すための報道を行ったが、人に知られたくないことを自ら漏らし墓穴を掘ったと見られている。
米国東部時間6月17日午後8時(日本時間6月18日朝)、これまで中共高官の米国への亡命を報じてきた「RedState」が、再び更なる詳細を明らかにした。「RedState」はある情報筋の話を引用し、亡命した高官は中共の国家安全部の副部長である董経緯氏であると報じている。この情報筋によると、董氏はカリフォルニア州の大学に通う娘を訪ねるとしていた。今年2月中旬にカリフォルニア州に到着した後、彼は米国防情報局(DIA)に連絡し、亡命して情報を提供するつもりだと伝えた。その後2週間ほど「目立つところに身を潜めて」いたが、その後DIAの保護下に入り、人々の視野から姿を消した。
「RedState」の報道によると、董経緯氏がDIAに提供した情報には以下の10の内容が含まれていたと言われている。
1.中共ウイルス(SARS-CoV-2)の初期の研究
2.中共ウイルスの蔓延が米国や世界にどのような危害を与えるかを予測したモデル
3.中共ウイルスをはじめとする生物兵器の研究にどの組織や政府が資金を提供したかを示す財務記録
4.中共に情報を提供した米国市民のリスト
5.米国で働いている、あるいは米国の大学に通っている中共スパイのリスト
6.米国のビジネスマンや公務員が中共政府から資金を受け取っていることを示す財務記録
7.(無自覚も含め)米国政府高官が中国・ロシアの情報機関職員と行った会合の詳細
8.中共がいかに米国CIAの通信システムをハッキングしCIAのために働く数十人の中国人の命が失われたか
9.中国側が掌握しているハンターバイデンのノートパソコンのハードディスクのコピーおよびハンターのポルノ問題やその家族の中国企業との取引に関する情報
10.米国の大学に通う中国人学生の少なくとも3分の1は中共の軍事資産や「千人計画」に関わっており、しかも多くは偽名を使っていること。実名を使用しない理由の一つとしてこれらの学生の多くが軍の高官や中共指導者の子供であること。
「RedState」が明らかにした多くの重要な内容と最近華人のネット上で噂されている董経緯氏の亡命は、お互いに裏付けあい補い合う効果があるため、すぐに激しい議論を引き起こした。
注目すべきは「RedState」の報道から約3時間後の北京時間6月18日、中共の複数のメディアが噂を否定する報道を行ったことだ。どの党メディアも中共国家安全部の責任者が「スパイ防止座談会」を開催したとする統一的な報道を掲載しており、董経緯氏の亡命に関する「噂を払拭する」ための意図的なものと思われている。
しかし、おかしなことに、党メディアによって転載された報道は内容がほとんど同じだが、唯一の違いとして座談会の主催者の表現が2パターンあった。
中共中央テレビ(CCTV)は国家安全部の責任者が座談会を主宰したとし、「責任者が指摘した」、「責任者が強調した」などの表現が使われていた。中共中央政法委員会傘下のメディア「長安剣」は、座談会主宰者として「国家安全部の董経緯副部長」を直接名指しし、その後の表現として「座談会が指摘した」、「座談会が強調した」などが用いられていた。さらにCCTVも間もなくして「長安剣」の報道内容に変更した。どちらの報道も文章のみで、現場の写真や動画は無かった。中共メディアによる統一報道は「噂を打ち消す」ための意図的なものと考えられている。しかし、香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は、政府メディアが座談会の開催場所について言及せず写真もないことを指摘している。
時事評論家の横河氏は、「噂を払拭する最も簡単な方法は会議の写真、できれば映像を見せることだ。そうすれば噂は自然と消える。見せられないのは本人がそこにいないからだろう」と述べた。
また、横氏は次のようにも述べている。「正規の報道としての必須条件は、まずどんな座談会なのか。座談会名が何か。次にどんな人が参加したのか」「国家安全部副部長として、誰が会議を開いているかくらいは知っておくべきだろう」「開催した理由や座談会名も無いので、中国政界の基本的な報道のルールに合っていない。というよりも、今回は方法が無くなった時の緊急対応のようなもので、急いで何かを出し、話を作り上げた感じがある」
パリに本部がある「Intelligence Online」サイトの紹介によると、董経緯氏と習近平総書記の関係は密接だという。董氏は河北省の中共国家安全部の副部長で、習総書記の警備を担当する多くの人々を養成し習派に属する人物である。中共は結党100周年を目前に、政治的安定維持が最重要課題となっている。結党記念間近に習総書記と密接な関係だった国家安全部の官僚が亡命したことは、党内の全員が中共の高圧的管理下で危険にさらされていることを浮き彫りにしたといえる。