大紀元(2021年3月12日)によると、3月5日開幕の全国人民代表大会(全人代)で、全人代代表で「中国の肺移植の第一人者」として知られる無錫市人民病院の陳静瑜副院長が、臓器提供率を「文明都市を評価する基準の一つ」にし、地方当局に臓器提供率の向上を促す提言書を提出した。
陳氏は4日、中国メディアのインタビューで、中国の臓器提供率が非常に低く臓器不足が深刻で、毎年約30万人の臓器不全患者が移植を必要としているが、移植を受けられるのは約1万人にすぎないと述べた。
陳氏によると、中国の保健当局は現在、「臓器提供率の向上」を最もランクの高い総合病院(三級甲等病院)の業績評価の一環としている。この評価はすべての病院に適用するだけでなく、地方政府が行政力で社会全体を動員し、臓器提供の雰囲気を作る必要があるという。
陳氏は中国では臓器が極端に不足していると主張している。しかし、陳氏が副院長を勤めている無錫市人民病院では、臓器移植に必要な肺の供給が十分に確保されていることが、メディアの報道で明らかになっている。
陳氏は2015年のインタビューで、「もともと、今年は死刑囚からの臓器移植が禁止され、脳死での臓器提供だけでは高品質の肺の供給が不足するだろうと考えていた。思いがけないことに、今は3日に1件くらいのペースで肺移植を行っている。去年よりも忙しく疲れている」と述べた。
中国共産党機関紙・人民日報系の健康時報は2018年3月14日付の報道で、陳氏が「中国の肺移植の第一人者」として、「移植臓器専用レーン」の開設を推進したことや、同氏が率いるチームが世界トップ3の「肺移植センター」にランクインしたことなど、同氏の「功績」を称えた。
報道によると、陳氏が2002年9月28日に最初の肺移植を行って以来、中国での肺移植の70%が陳氏とそのチームによって行われてきた。2018年の全人代期間中、陳氏は3月3~7日まで、北京で3回連続の「緊急」肺移植を行った。
陳氏は昨年3月1日、中国メディア「澎湃新聞」の取材に対し、肺移植は日常化しており、自身も2~3日に1件の肺移植手術を行っており、これまでに1000件以上の肺移植手術に携わってきたと語った。
一方、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の流行が続くなか、陳氏は再び中国国営メディアの注目の的となった。2月29日、当局の支援のもと、同氏の医療チームは中共ウイルス患者に「世界初の両肺移植」を行った。患者の入院から移植完了まで、わずか5日間というドナー肺の入手期間の短さは、世界に衝撃を与えた。しかし、中国当局はこれまでと同様、ドナー情報の公開を拒否している。
公式情報によると、陳氏は現在、南京医科大学付属無錫市人民病院の副院長、胸部外科部長、無錫肺移植センター長、中国臓器移植協会の会員などを務めている。2008年に全人代の人民代表に選出され、国務院から特別手当を受給している。
提言の動機
台湾国際臓器移植関懐協会(TAICOT)の副会長である黄世維氏は、衛星放送の新唐人テレビ(NTD)のインタビューで、「中国では臓器が不足している」という陳氏の主張に反論した。「中国では、これまで肺移植用の臓器が不足したことはない。臓器移植は通常、1~2週間で完了する。これは現在も続いている。臓器を手に入れられないのは、十分な資金が提供されていないからであり、これは非常に収益性の高い産業である」と指摘した。
ハーバード大学の元医学研究員で、国際NGO「法輪功迫害追跡国際組織(WOIPFG)」(以下、追査国際)の代表を務める汪志遠氏は大紀元の取材に対し、臓器移植大国である米国では、このような移植には通常2〜3年かかるが、陳氏のチームが行った肺移植は、ドナーの選定から採取決定まで、わずか3~4日しかかからず、ドナーの出所が非常に疑わしいと述べた。
同氏によると、世界第2位の臓器移植国である中国では、臓器の提供は非常に少ないが、臓器の供給は十分にあるという、謎に包まれた大規模な闇のドナーバンクが存在する。
「これは、中国共産党が、投獄された法輪功学習者や反体制派などから強制的に臓器を摘出しているためだ。長年にわたり、中国共産党の臓器狩り疑惑に関する世界の関心が高まってきたが、中国共産党は回答や現地調査を拒否している。臓器提供率を上げれば、当局や医療関係者による大規模な臓器狩りを隠蔽することもできる」
追査国際は、中国での強制臓器摘出に関与した疑いのある病院や医療関係者を追跡調査するため、2003年1月20日にニューヨークで設立された。無錫市人民病院と、同院の陳副院長をはじめとする複数の医師が調査対象リストに入っている。