大紀元(2020年12月2日)によると、元米国防総省高官の中国専門家は最新著書で、もし中国共産党による秩序が世界で実現すれば「世界は中国共産党(中共)支配下の中国のようになってしまう」と指摘した。
米シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)でアジア研究プログラムのディレクターを務めるダン・ブルメンタール(Dan Blumenthal)氏は11月17日、新刊『中国の悪夢:崩壊する国家の大いなる野望』(The China Nightmare:The Grand Ambitions of a Decaying State)を発表した。
米国防総省の中国、台湾、モンゴル担当上級部長を務めたブルメンタール氏は、国内に多くの問題を抱えながらも、世界秩序の再構築しようとする中国共産党は、米国のみならず世界全体にとって大きな脅威だと述べた。同氏はこれを「中国の悪夢」と呼んでいる。
ブルメンタール氏によれば、中共は、中国を中心とした戦略的パートナーのネットワークを作り、中共の権威主義体制に寛容的な国際秩序を確立したいと考えている。もし、この秩序が実現すれば「世界は、中共支配下の中国のようになってしまうだろう」「社会はより圧迫され、政府の統制手段への依存度が強まり、以前よりも閉鎖的で非民主的になる」と同氏は記している。
ブルメンタール氏は、中共主導の経済成長を否定する。中国経済は長年、減速を続け、債務は高水準にある。また、習近平政権は企業への統制を強め「経済発展のエンジンを壊しており、イノベーションを抑圧している」と指摘した。
さらに、環境悪化や高齢化など社会問題に直面している。中共は「西側イデオロギーの汚染」と呼ぶ、民主主義社会の自由、法治を極度に恐れている。このため、経済界や教育界の統制を強めている。主席任期の廃止、腐敗の取り締まりなどで中共政権の内部にはひびが入り、習近平体制は国内からの強い圧力に直面している。
ブルメンタール氏は、「国内問題に悩まされている中共は、挫折感と野心を持ち合わせ、そのために外に飛び出している。野心が満たされない強国は、別格の脅威になる」とした。中国が国際社会に組み入れられることで、その内部問題が世界に波及する恐れがあるという。「中国の悪夢が私たちの頭上に広がる」と懸念を示した。
新型コロナウイルスの発生はわかりやすい例だという。過度な権力集中と政治的圧力により、武漢の地方役人は感染の流行を報告せず、自体を暴露した医師らの口を塞いだ。隠蔽された地域的な伝染病が、パンデミックに変化し、世界で数十万人の死者を出し、数億ドルの経済損失をもたらした。
国際社会は新型コロナウイルスの世界的な流行を許した中国にネガティブな印象を抱いた。しかし、習近平体制は圧力よりも大きな影響力を持つ、対外侵略行為を各所で繰り返した。ブルメンタール氏はアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)主催のオンライン会議で述べた。
「各国が感染症に対処すべきときに、中共はインドの国境で衝突を起こし、オーストラリアがウイルスの出所に対して国際調査を実施すると発表したことに政治的圧力を強め、欧州諸国に中国が出所だというウイルス関連情報を削除するよう圧力をかけた。さらに、南シナ海で強引な行動を続け、台湾を脅迫し、更に香港自治を抑圧した。新疆ウイグル人などの少数民族に対する政策を引き続き実行した」と例を挙げた。
「疫病が蔓延しても、北京は世界的な偽情報キャンペーンを続け、領土主張を進め、インド太平洋地域に影響力のある領域を作るために近隣諸国を圧迫し続けた。中国の壮大な戦略的野望は、世界的なパンデミックの中でも休むことはない」と付け加えた。