産業危機が表面化か 中国は中古部品の新車への利用を推奨

時事

米中関係が急速に悪化し、アメリカの一連の厳しい制裁を受けている中で、中国は自動車メーカーが再製造に利用するために中古自動車部品を回収することを奨励している。ある研究者は、これは中国の経済危機が全面的に始まっているのではないかと語っている。

【NTD TV 8月22日】

8月11日、中共発展改革委員会は『自動車部品再製造管理暫定弁法(意見募集稿)』(以下、暫定弁法)を公布し、一般からの意見を募集しました。暫定弁法では、自動車メーカーがアフターサービスシステムを利用して再製造用に中古自動車の部品を回収することが奨励されており、具体的には中古部品回収専門業者が、メンテナンスチャネルを利用して、要件に適合する中古部品を再製造企業に提供することが奨励されています。

今年に入り中共政権は深刻な内憂外患に悩まされています。疫病の流行や洪水の氾濫、経済の失墜、外交の惨敗、国際社会からの包囲と批判といった複数の危機に見舞われるなか、米中経済のデカップリングにも直面しているこのタイミングで中共がこの暫定弁法を公布したことは、大きな注目を集めました。

米サウスカロライナ大学エイケン校の謝田教授は、「このことは中国の経済と産業の危機を際立たせている。もともとの人々の予想よりももっと早い。みたところ全面的に始まったようだ」と述べています。

米サウスカロライナ大学エイケン校の謝田教授
「今年の初めに産業チェーンが国外移転したことで、中国の全ての業界が衝撃を受けた。自動車業界については、中国には独自の自動車産業すらないことを私たちも知っている。エンジンをはじめとする、自動車産業全体で最も重要な部分は実際には輸入に依存している」

謝田教授は、中共は自国の科学技術が進歩しただの、国産自動車がどうのと豪語しているが、産業チェーンが国外に移転してしまい、一部の産業は内部循環に切り替わりつつあると述べています。

米サウスカロライナ大学エイケン校の謝田教授
「さらに、中共の外貨準備高が枯渇し、重要部品を輸入する資金が尽きてしまったら、中共に問題が発生する。そしてもう一つのもっと大きな問題が、中国の高速鉄道に発生する可能性がある。中国の高速鉄道の重要部品の多くは日本やドイツ、フランスから輸入している。それが止まってしまったら、もしくはそれを調達する資金が枯渇したら、中国の高速鉄道の運行が停止するかもしれない」

中古部品を修復して新車に再利用することは国際的にも許されていません。中共の今回のやり方は、中国自動車業界の技術力や自主解決力が弱いことを如実に表しています。

中国のある自動車部品業者の代表の黄建林(こう・けんりん)さんは新唐人テレビに対し、中国も以前は中古部品の新車への利用を禁止しており、一部の自動車修理工場が国外から新車を購入して分解して使用した場合は処罰されていたと明かしています。

中国のある自動車部品業者の代表、黄建林さん
「彼らがこんな要求をするのは、国外から輸入品が入って来ないからだろう。今、デカップリングの話が出ているではないか。それも理由の一つだろう。彼らの要求がどれだけ厳しくても、部品が壊れて車が動かなくなったら部品を交換しなければならない。彼らは国内での内部循環を許可すると言うが、ごまかすことができるならごまかし、修繕できるのなら修繕すればよい。新品とか中古とかいうことにはこだわるなということだ」

多くのネットユーザーが、中共の新たな規則に対し、中古部品を新車に取り付けるのなら、その車は新車なのか、それとも中古車なのかと疑問を投げかけています。また、摩損した中古車部品を改修して新車に取り付けた場合、安全上の問題が生じるのではないのかと憂慮する声もあがっています。

時事評論家の章天亮氏
「この政策が公布されたため、メンテナンス業界や自動車解体専門業界の一部は、基準を下回る部品を新車に取り付けるだろう。運転し始めた時は分からないだろうが、本来なら10万マイル走行できたはずなのに、5万マイル走っただけで壊れるだろう」

時事評論家の章天亮(しょう・てんりょう)氏は、イラクがこういう状況にあると説明しています。イラクでは、米国の制裁により輸入ができないために、自動車が壊れても修理ができず、同じモデルの別の車が壊れたら、部品を寄せ集めてやっと道路を走れるように修理しています。

米サウスカロライナ大学エイケン校の謝田教授
「中国の今後の数年間で、中古車の部品やエンジンを取り外して回収再利用することに頼るのなら、車のアップグレードやモデルチェンジがなくなる。この業界は終わりだ。キューバでは、三十年代、四十年代の古い車や中古車がまだ現役だ。こうした車が廃棄処分になったら部品が取り外され、別の車に取り付けられて、内部で循環する。中国はキューバが歩んだ道を歩んでいるように思う」

ラジオ・フリー・アジアは中国の経済専門家の話として、中国の多くの分野が原材料不足という問題に直面しているため、廃棄物のリサイクル利用に頼らざるを得ないのだと報じています。

中共が施行する新たな規則は、中国と旧ソ連の関係が悪化した時期に、ソ連が中国に対する全面封鎖を実施した後の中国の状況をほうふつさせます。米国と中国のデカップリングが進んだら、中共は旧ソ連との関係が悪化したころの政策を実施する可能性があるとの予測もあります。

現在、中共はすでに米中の経済デカップリングに向けてさまざまな準備を行っています。最近では経済の「内部循環」が強調され、中国ハイテク企業の最大手、ファーウェイも、米国の技術の使用を回避するための、いわゆる「南泥湾(なんでいわん)プロジェクト」を開始し、企業内の戦力を補強しています。