専門家「ゲームで遊ぶと中共に情報を盗まれる」テンセントは相次ぎゲーム企業を買収

時事
2020年10月30日、上海のサッカースタジアムで、対戦ゲームトーナメントのイベントが行われた(GettyImages)

大紀元(2020年11月3日)によると、ウィーチャット(微信・WeChat)やティックトック(TikTok)などの中国アプリの使用は、中国共産党(以下、中共)によって個人情報が盗まれるリスクがあるため、米国やインドは国家の安全保障上の脅威とみなしている。専門家はこれに加えて、中国のゲームは詳細なユーザーデータを収集しており、アプリよりも大きな問題だと指摘している。

シンクタンク・新アメリカ安全保障センター(CNAS)は10月28日発表文章で、ゲームを通じて中共に監視される可能性があると警告を発した。執筆者の一人は、米国家安全保障局の元職員でコンピュータセキュリティの世界的な権威でもある、デイブ・アイテル(Dave Aitel)氏。もう一人は、CNAS非常勤研究員であるジョーダン・シュナイダー(Jordan Schneider)氏。

「テンセント」はゲーム市場を支配

テンセントは、モバイル・オンラインゲームの世界最大手として、近年、海外の有名なゲーム開発元を積極的に買収している。米国のアクティビジョン・ブリザード社、「リーグ・オブ・レジェンド」の開発元であるライアットゲームズ社、「フォートナイト」の開発元であるエピックゲームズ社、「ヘイ・デイ」の開発元であるスーパーセル(Supercell)社、およびゲーマーが使用する人気通信プラットフォームの「ディスコード(Discord)」などが、続々とテンセントによって買収されている。

前述記事で、2人の専門家は「ティックトックやウィーチャットなどはさておき、テンセントによる世界のビデオゲーム市場の支配こそ、最も差し迫ったセキュリティ上の脆弱性だ」と指摘している。

中国のビデオゲームは本当に米国の国家安全保障に脅威をもたらしているのか。2人の専門家の目から見れば、これは疑いの余地もないという。

彼らは記事の中で、「中国はすでにビデオゲームを利用してソフトパワーを広め、米国市民のデータを収集している。 さらに、北京は何百万人ものプレーヤーのコンピュータにアクセスでき、中共のスパイに絶好の機会を提供している。彼らはゲームを利用して諜報活動を行える」と指摘している。

テンセント傘下のウィーチャットが大量の個人データを収集し、ユーザーのテキストメッセージの内容検閲を行っているという十分な証拠があるため、同社は米政府の調査を受けている。

米財務省の対米外国投資委員会(CFIUS)は、テンセントの投資先である米ゲーム開発会社のエピックゲームズやライアットゲームズに対し、米国ユーザーの個人データの取り扱いについて、情報提供を求める書簡を送付したという。ブルームバーグが報じた。

CFIUSは、安全保障上の観点で外国企業の対米投資を審査する政府機関であり、対米投資に安全保障上の問題があると判断すれば、米大統領に外国企業の活動中止を勧告できる。

2人の専門家は、「中共の一貫した政治的優先順位の問題は、その影響力の及ぼすゲームの中でもすでに反映された」と記事の中で指摘した。

ハリウッド同様の手法で 中共式の導入

昨年、米国のブリザード・エンターテイメント社が開発・運営を行うオンライン対戦ゲーム「ハースストーン(Hearthstone)」のトーナメントのライブ配信中に、「光復香港、時代革命」という香港デモのスローガンを叫び、香港への支持を表明した香港人選手Blitzchung氏が失格となり、1年間の出場停止、賞金取り消しとなった。同氏へのインタビュー動画も後に削除された。

また、中国のゲームメーカーである「miHoYo」によって開発および運営されるオンラインゲーム「原神(Genshin Impact)」は、今年9月28日に全世界で発売され、世界的なヒットとなっている。しかし、そのプレイヤーは、「香港」「台湾」「法輪功」などの特定の政治用語がゲームのチャット機能から禁止されているという。

詳細は、独立系ジャーナリストの橋本一馬氏によって明らかになった。橋本氏はツイッターに投稿した動画の中で、「台湾」と「香港」のつづりで入力してもこれらの文字が表示されないと指摘した。

「中共は同様の手法でハリウッドに中共の検閲を導入させた。そしてこれらの中国のゲーム市場からお金を稼ごうとする欧米の企業に影響を及ぼし続けるだろう」と指摘した。

CNASの2人の専門家は、「中国の法律では、他国のゲーム開発元が中国ゲーム市場へ参入する場合、テンセントや網易(NetEase)などの中国大手企業とパートナーシップ契約を義務付けている。

日本でも中国ゲームは人気が出ており、米国に次いで高い売り上げを記録している。

中国IT企業大手・網易は、日本でも大人気のゲーム「第五人格」「荒野行動」「ライフアフター」を提供している。

中国製ゲームは現在、米国や日本、韓国、台湾ほかアジア諸国でも人気を得ている。中国当局の公表データ・中国遊戯産業年会2019年の報告によると、中国ゲームの海外市場の売り上げは前年比21%増の115.9億ドルに達した。アメリカ、日本と韓国の売り上げはそれぞれ30.9%、22.4%、14.3%となっており、この3カ国は全体の7割を占めている。

2人の専門家は記事の中で、「ほとんどの場合、プレーヤーは本名、支払い情報、生年月日、位置場所のほか、ゲーム内のチャット機能を利用して一定のボイスサンプルを作成する必要がある。つまり、ゲームから収集されたこれらのデータの方は、ティックトックなどから収集されたデータよりも詳細で悪用されやすい。これらのデータはすでに中国のゲーム会社の手に渡り、保管されていると考えるのが妥当だ」と説明した。

中共の法律によれば、中国国家安全保障部はこれらの情報を国営および民間企業から入手する権利がある。

では、「入手したこれらのゲームプレーヤーのデーターをどうするのか?」という疑問に対して、2人の専門家は、「今では、わずか10分程度の音声があれば、その友人や家族を欺ける偽装ボイスを作成できる」と答えた。

2人は、2018年に米国人事管理局にハッキングしたのが中共のハッカーである可能性が高いということを特筆している。中共はすでに米政府のクリアランスを申請するすべての人の個人情報を詳細に把握している。そして、中共の国家安全保障部は、この2つのデータストリームを組み合わせることができるため、ビデオゲームをプレイするたびに、政府関係者がどこにいるのかを知ることができるようになるかもしれない。

専門家によると、最近のゲームには、アンチウイルスプログラムと同じ特権を持つ、コンピュータ上で動作する強制的な「なりすまし防止ソフト」が付属しているという。これは、利用者が知らぬ間にあらゆる操作を実行できることを意味する。

中共スパイは、このアクセス権を使用すれば、狙いを定めたファイルをフォルダーに入れるだけで、ユーザーの情報が手元に入る。「やりたい放題できる」状態を作り出すことができる。

2人の専門家は、最後にいくつかの解決策を提示した。「米国が中国の投資家によってサポートされているゲームを完全に禁止した場合、それは米国にとってはあまりにも壊滅的」だという。対応策として、ゲームデータの透明性を確保するために、ソフトウェアにライセンスを発行することだと提案する。

さらに「米国は、米国のクラウドプロバイダーに機密データの保存を要求することも出来る」または「外国投資リスク審査近代化法を選択的に使用し、テンセントおよび他の中国のゲーム会社に対して、米国の機密データにアクセスできると思われたゲームから、資金撤退を強制することもできる」などを掲げた。

しかし、こうした短期的な措置は米国へのリスクを減らすが、盗まれたデータは取り戻せない。2人は「米国政府はゲームデータを保護するために、できるだけ早く行動を起こす必要がある」と強調した。