対立深まる米中　“民主主義サミット”の裏で　人権派発言を警戒し徹底監視＝中国

人権
人権派弁護士の王全璋さんの外出を止めている警官と見られる人物

バイデン米大統領は9日、100カ国・地域以上の首脳らを招き、オンライン形式の「民主主義サミット」を初めて開催した。バイデン氏は、権威主義が台頭する中で権利と自由を守ることは今の時代の「決定的な課題」であるとし、世界の民主主義強化を訴えた。サミットには111人の首脳らが参加し、2日間の日程で行われた。権威主義的な中国やロシアは招待国に含まれていない。一方で、台湾のほか、人権団体から首脳陣が権威主義的な傾向を持っていると非難されているフィリピン、ポーランド、ブラジルなどは含まれていた。

最近、北京オリンピックの外交的ボイコットや民主主義サミットの開催をめぐり、米国と中国の対立が深まっている。争点となっているのが中国の人権問題だ。

12月10日は国連が定める「世界人権デー」だが、それを前に、中国では著名な人権派弁護士が自宅で軟禁状態となっているなど徹底監視されている実態が日本テレビの取材で分かった。

10日、中国外務省報道官は「中国共産党の100年は人権を獲得し、尊重し、保障し、発展させた100年だった」と民主主義サミットで中国などを批判したバイデン政権に強く反発した。

しかし、日本テレビでの取材では、10日、北京にある人権派弁護士の家まで続く階段には、複数の男が居座り人の出入りを見張っていた。その家に住むのが、人々の権利を守る活動が当局ににらまれ「国家政権転覆罪」で４年半、服役した王全璋さんだ。去年4月、ようやく釈放されたが、そのあとも厳しい監視が続いている。

王さんは、人権派弁護士の中でも、いち早く法輪功学習者の案件を引き受けていた。以前、強制立ち退き、キリスト教徒、言論弾圧された記者などの案件も扱っていたが、中国共産党政権による法輪功への弾圧が始まってから、法輪功の案件に専念していた。

王さんが９日に撮影した映像にも家の前には黒い服の人たちがいた。さらに、子どもを学校に送ろうとした際には、家の前にいた見知らぬ女とこんな会話があったという。

女：大丈夫（子どもを）送ってやるよ

王さん：そんなの安心できるわけない

王さんの妻：冗談じゃない。あんた誰なのか知らないのに子どもを託すわけない！

別の日、王さんの妻が「身分証明書を出してください。一体誰なの？」と、正体を明かすよう問い詰めたところ、男は「それ必要だと思います？結構長く付き合ってきたじゃないか」と、威圧するように立ちはだかり、彼らは身元を明かさないが警察関係者だとみられている。

人権派弁護士・王全璋さんは「家の前にいる彼らから言われたのは、きのうは米国の民主主義サミットがあって中国の人権が注目されていると。だから私たちは見張られていて外に出られない」と語った。

10日は国連が定める「世界人権デー」で、人権派弁護士・王全璋さんは「（ＥＵ）大使館からイベントに出席するよう要請されていたが、男らに参加を許してもらえない」とも話した。

王全璋さんの発言が欧米メディアに報じられることなどを警戒し、軟禁状態にしているのだ。
人権派弁護士・王全璋さんは「政府が敏感になるイベントがある日は今のような状況に直面することになる。よくある状況です」と語った。

・709事件から5年―人権派弁護士・王全璋さんが帰宅

 

この日、他の人権派弁護士や関係者の家の前にも不審な集団の姿があった。複数の人権派弁護士らが軟禁状態となったことも、日本テレビの取材でわかったという。

・日テレニュース「中国　徹底的監視…人権派“締め付け”実態」

 

他の人権派弁護士の家族の状況がツイッターに投稿されていた。

Twitter文（日本語訳）
12月9日午前6時ごろ、余文生弁護士の妻である許艶さんは自宅で約9人によって家に閉じ込められた。ドアを開けることも外出することもできない状態が12月10日の夕方まで続き、その後も外出が許されるのかは明確な返事がないという。

必死にドアを開けようとする許艶さんに対して、外にいる見張り２人が１、２回バタンとドアを強く閉め返したため、許艶さんの肋骨が当たりその後痛みがずっと続いたという。

動画内の会話（日本語訳）
「見てください。ドアを開けることができません」
「開けてみます。開きません。ほら、見て下さい。背も高くがっつりした体型の男２人が片足はドアに付けてもう片足は壁につけてドアを塞いでいます。とてもじゃないですが、女の力で開けれるような状態ではありません」

外の見張りに対して
「こんなことをして面白いのか。これが中国なのか！」

「中国はこのようなやり方で人権を守ってくれるのか！」

「『世界人権デー』と言うのに公然と人の家に来て外出を制限するのか。私が外に出ると何か不都合なことでもあるのか。後ろめたいことでもあるのか。あなた達は国民をいじめること以外に何ができるのか？」

「『世界人権デー』に私が外で何か事を起こすとでも言うのか。あなた達は誰の指示でここに来たのか？人権を守り、法律を遵守し、法を持って国を治めると叫んでいるのがあなた達じゃないのか。あなた達こそ守るべきではないか！」

「私の主人は監禁されてもうすぐ４年になろうとしている。あと２ヶ月と21日で主人がやっと家に帰って来るのに、あなた達は未だ私達家族に対して抑圧し迫害している。これは人権を守り、法律を遵守する行為なのか？４年間監禁されるなか、主人は身体障害者になってしまった。それでも気がすまないのか！」

 

10日、「世界人権デー」に合わせて中国の人権について問われた中国政府は――「中国は人権を尊重する」と主張する一方で、人権派弁護士らへの徹底的な監視が続いている。「言論を緩める」という言葉を流しては、監視をしていないように見せかけるのが、中国共産党の新たな策略といえる。

中共政権の矛盾を突き、国際社会の正義と良知ある人々に、共産主義の邪悪な本質を知らしめ、中国で迫害を受けている人々の生存権、基本的人権などを守ることが急務となっている。