大紀元(2021年3月16日)によると、中国の人権問題に長年取り組むデービッド・マタス弁護士は3月11日、京都で開かれた第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)の補足会議を開き、法輪功学習者及び無実の囚人から移植用臓器を強制摘出する中国の臓器狩り問題について講演を行った。マタス氏は、深刻な人権侵害を行う中国は「犯罪国家」であると非難する一方、この問題に関する報告を長期間、無視してきた国連人権理事会の不作為を批判した。
国連犯罪防止刑事司法会議は、5年に1度開催される、犯罪防止と刑事司法分野における国連の最大規模の会議だ。日本で開催されたのは1970年京都大会以来で実に半世紀ぶり。中共ウイルス(新型コロナウイルス)感染防止策として、期間中の各会議はオフラインとオンラインの混合形式で行われ、マタス氏はカナダからオンラインで参加した。
マタス氏は「臓器売買および臓器摘出のための人身取引」と題した11日の補足会議で、中国は、人身取引停止や人種差別廃止、国際組織犯罪防止、拷問防止などの国連条約の署名国でありながら違反を繰り返しており、国連はこの問題に対処することを避けていると批判した。
また、以前ジュネーブで予定されていた、国連高官とマタス氏ら専門家一行との臓器摘出問題に関する会合が突然キャンセルされた経緯についても言及し、国連の無力さに苦言を呈した。
直前の会合キャンセル
1.中国政府に対し、強制臓器摘出を直ちに終了するよう求めること
2.人道に対する罪の加害者の起訴につながる調査を開始すること
3.中国政府に対し、法輪功の残忍な迫害を直ちに終わらせるよう求めること
国連人権高等弁務官事務所を通じて、マタス氏は、国連薬物犯罪事務所の担当官と2014年3月21日に面談する約束を交わした。マタス氏らはスペイン、カナダ、米国、台湾など世界各地の専門家とともに渡航用意していたが、予定日の3週間前、「残念ながら会合の時間はつくれない」と突然キャンセルの連絡を受けた。
フライトのチケットも購入済みであり、突然のキャンセルは不適切であると伝え、マタス氏ら一行はジュネーブの事務局に向かった。会合が設けられない理由について、当日、国連薬物犯罪事務所の人身売買・密航担当課長がメールで返答した。課長は、一行が駆けつけた想いを理解するとしたものの「私の担当は人身売買と密航であり担当外のため」と切り捨てた。
マタス氏は、国連の国際組織犯罪防止条約締約国会議の過去の会議では、臓器摘出を目的とした臓器売買は人身売買と同一視していたにも関わらず、担当外であるとの主張は理解に苦しむと批判している。
また、国連人権理事会は「国家の主権を尊重する」という側面から、中国のような深刻な人権侵害国の主張も「尊重」しており、国際的な制裁が不能になっていることを指摘した。
スピーチの最後で、マタス氏は、「臓器売買問題に真剣に取り組んでいる人は、(国連ではなく)他の場所で訴えた方がいい」と国連の能力に失望を示した。
中国は犯罪国家 改めて強調
まず、信条を理由に中国共産党当局に拘束された法輪功学習者は、系統的・定期的に採血され臓器の状態を検査される。血液型・組織型の情報は地元の移植病院や移植病棟に回覧される。
中国の病院は、世界の移植患者に「オンデマンド(需要に応じて)」で臓器を提供すると広告を出している。生死にかかわる心臓や肺でさえ事前に移植手術の予約ができる。患者は紅包に入れた現金(訳注:謝礼)を病院と医師に渡す。
移植患者(レシピエント)と適合する法輪功学習者は、収容施設の内部の部屋に連行され、筋肉弛緩剤と抗凝血剤を打たれる。動けなくなったところで、白いライトバンに入れられ臓器が摘出される。臓器摘出の過程で学習者は亡くなる。遺体は刑務所・拘置所内の火葬場で焼かれる。白のライトバンは摘出された臓器を、移植患者の待つ病院へ送り届ける。
マタス氏はあらためて、この臓器収奪の過程は、国連の「国際組織犯罪防止条約」の「人身取引防止に関する議定書」の条項にあてはまるとし、中国共産党による臓器摘出は人身取引だと主張した。
国連人権理事会には、深刻な人権侵害国家である中国やキューバ、サウジアラビアなども2021年の理事としてメンバー入りしている。米国の同会離脱を調整した元米国連大使ニッキー・ヘイリー氏は同年1月25日、国連人権理事会は「人権侵害者を守っている政治的偏見のはきだめ」とSNSに投稿して批判した。
米インド太平洋軍が運営するメディア、IPデフェンス・フォーラムは2021年2月の記事で、中国共産党の高級官僚などが世界保健機関(WHO)や国際民間航空機関(ICAO)、食糧農業機関(FAO)、インターポールなど重要な国際機関の要職に就くことで中国の政治的な影響力を及ぼし、中国共産党政権を支持するよう誘導していると指摘した。