西側諸国で最初に中国と国交を樹立した北欧最大の国家・スウェーデンだが、「中国への怒りが」爆発している。首都ストックホルムにある中国大使館と中国当局による、スウェーデンの政治家やジャーナリスト、言論人、人権活動家などへの“恫喝(どうかつ)”、つまり中国共産党の“戦狼外交”に、スウェーデン国民の堪忍袋の緒が切れたという。
スウェーデンでも「中国への怒り」が爆発! 西側諸国で最初に国交樹立も…中共批判の作家懲役刑が決定打 孔子学院はすべて閉鎖、宇宙公社は中国との契約打ち切り
夕刊フジ(2020年10月12日)によると、スウェーデンでも「中国への怒り」が爆発しているという。「自由・民主」「人権」「法の支配」という基本的価値観を共有する、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国は、軍事的覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国共産党政権に対峙(たいじ)するため「日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)」を推進している。こうした動きは、欧州でも英国やフランス、ドイツにも広がりつつあるが、西側諸国で最初に中国と国交を樹立した北欧最大の国家・スウェーデンを激怒させた理由・背景について、ノンフィクション作家、河添恵子氏が考察した。(一部抜粋)
「オピニオン 中国のスウェーデン攻撃は民主主義では受け入れられない」
スウェーデンの外交政策シンクタンク「ストックホルム自由世界フォーラム」は10月1日、こんなタイトルのリポートを発表した。執筆者は、元欧州議会議員である同フォーラム議長と、シニアフェローの2人である。
英語でつづられたリポートは、「世界中の自由で開かれた社会は、中国共産党政府から攻撃を受けている。(異国の)政府を脅かし、批判者を沈黙させ、メディアに従順を強制するために、金満な経済力を利用している」などと警鐘を鳴らしている。
そして、首都ストックホルムにある中国大使館と中国当局による、スウェーデンの政治家やジャーナリスト、言論人、人権活動家などへの“恫喝(どうかつ)”を告発している。中国共産党の“戦狼外交”に、スウェーデン国民の堪忍袋の緒が切れたのだ。
米世論調査会社「ピュー・リサーチセンター」が昨年12月に発表した、スウェーデンでの「対中感情調査」で、「国民の70%が中国に否定的な感情を抱いている」ことからも、それは明らかだ。
しかも、新型コロナウイルスの感染拡大後、両国関係は修復不可能なレベルにまで悪化しているという。
スウェーデンは、1950年5月9日、前年10月に建国した中華人民共和国と国交を樹立した「最初の西側諸国」である。今年は、両国の外交関係にとって大きな節目となる「国交樹立70周年」という記念の年だったが、両国間では祝辞すら交わされていない。深刻な亀裂は、中国のある人物への対応が原因となっている。
中共を批判する「禁書」を扱っていた香港「銅鑼湾書店」の大株主の1人で、作家でもあるスウェーデン国籍の桂民海氏が2015年、タイで中共当局に拉致・連行された。彼を擁護したスウェーデン人のジャーナリストは、中国大使から「狂気」「無知」「反中」などと誹謗(ひぼう)中傷を受けた。
国際ペンクラブのスウェーデン支部は昨年11月、桂氏に対し、「言論・出版の自由賞」を授与した。アマンダ・リンド大臣(文化・スポーツ・民主主義・少数民族担当)が授賞式に出席すると、中国当局は「出席者は、中国では歓迎されなくなる」と威嚇した。
スウェーデンのステファン・ロベーン首相は「この類の脅しには絶対に屈しない。スウェーデンには自由があり、これがそうだ」と、テレビ番組で強く反発。リンド大臣も「桂氏を今すぐ解放すべきだ」と要求した。
しかし、中国浙江省の裁判所は2月、桂氏に対して「懲役10年」の判決を言い渡した。理由は外国で違法に機密情報を提供した、だった。
スウェーデンは、国家安全保障の観点から、中国との関係を見直す動きを加速させた。
ロイター通信は9月21日、スウェーデン宇宙公社(SSC)が、宇宙船やデータ通信を支援するため、衛星地上基地の使用を認めるとした中国との契約について、「地政学的な情勢の変化を理由に延長しない」と決めたと報じた。基地はスウェーデンのほか、オーストラリアやチリにある。
中国当局は「両国の宇宙協力は商業ベースで、国際慣行を順守しており、宇宙の平和利用が目的だ」と契約継続を望む弁明をした。だが、近年、北大西洋条約機構(NATO)との関係を深めているスウェーデンの国営企業の決定が覆るはずがない。
「関係をすべて断ち切る」
大紀元(2020年4月24日)によると、「私たちは中国との政治的接触をすべて断ち切っている。これは、中国大使館がスウェーデン政府に向けた脅威のためだ」と、リンショーピング市議会ラース・ビキンゲ議長は地方紙のインタビューで語っている。
国内紙によれば、地方都市のリンショーピング、ベステルオース、オーモール、ボルレンゲ、ダーラナは、中国の地方都市との姉妹都市関係を解消したという。
また、中国広東省からの代表団は今年12月にリンショーピングを訪問する予定だったが、「歓迎しない」と断った。
中部のダーラナ市は、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の発生源である湖北省武漢との姉妹都市関係を終了させている。
また、ダーラナ市は湖北省との間の若者の民主化に関する協力関係も結んでいたが、解消されているという。
英タイムズ紙は4月21日、スウェーデンでは、中国共産党の対外宣伝組織とされる中国語教育機関「孔子学院」をすべて閉鎖する動きがあると報じた。
ジェームズタウン研究所の調査報告によると、孔子学院は、儒教思想の普及や研究とは関係なく、中国共産党のソフトパワーを着々と広めるための道具であると指摘している。
中国研究家のスティーブン・モッシャー人口研究所会長は、孔子学院は「トロイの木馬」であり、海外の若者に「中国脅威論」を払しょくするための狙いがあるとみている。
孔子学院の問題に注視してきたグレン・アンソニー・メイ氏によると、中国共産党にとって体制を揺さぶる敏感問題である台湾、チベット、六四天安門事件、法輪功迫害などは、孔子学院の教室や教材のなかで取り扱うことが禁じられているという。
香港大紀元新唐人共同ニュース(2020年4月29日)
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