米議会「越境弾圧政策法案」を提出 中共の人権侵害へ対応強化

人権

2025年7月31日、米国議会の上下両院で超党派の議員たちが共同で「越境弾圧政策法案」を提出した。この法案は、中国共産党(中共)による人権侵害や、神韻芸術団・法輪功といった団体を含む特定の人々への脅迫行為の増加、米国内外への介入や影響を背景に、米中関係の新たな焦点となっている。

この画期的な法案の特徴は、外国の独裁政権やその関係者が、米国内外で「体制に批判的な意見を表明する人々(異議人士)」や、在外華人コミュニティなどに対して、ストーキング(つきまとい)や脅迫、攻撃を行う行為に対し、責任を問う仕組みを確立する点にある。

また、この法案は、こうした「越境弾圧」への対策をアメリカの外交政策の最優先事項とし、関連分野での外交努力を強化するとともに、国内外で民主主義と人権の原則を広げる包括的な戦略の一部として位置づけている。

◆「越境弾圧政策法案」の主な内容と狙い
法案の主な内容と狙いは、次のとおりである。

1.外国政府による嫌がらせから国民を守り、加害者に責任を負わせるための明確なアメリカの政策を制定すること。

2.「越境弾圧」を、外国政府が海外で活動家、記者、学生、移民コミュニティなどを黙らせ、脅迫し、危害を加える行為であると定義すること。

3.国務省が中心となり、同盟国や多国間機関、市民社会組織の協力を得て、包括的な対抗戦略を策定すること。

4.アメリカの外交官や連邦法執行機関、地方当局の職員に対し、デジタル監視や家族への脅迫といった手口を正しく識別し対応するための訓練を行うこと。

5.外国政府から嫌がらせや脅迫を受けるリスクの高い団体や個人に対し、連邦政府が情報提供や相談窓口の設置など必要なサポートを充実させ、アメリカ国内で連邦政府としての保護と対応体制を一層強化すること。

このように、法案は「越境弾圧」への包括的な対抗体制の構築を目指している。

なぜ中共の越境弾圧が問題なのか
法案を共同提出した議員は、共和党のダン・サリバン上院議員(中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)委員長)、民主党のジェフ・マークリ上院議員、共和党のクリス・スミス下院議員(CECC共同議長)、民主党のジム・マクガバン下院議員(CECC委員)である。

ジェフ・マークリ上院議員は「アメリカは加害者が誰であれ、すべての越境弾圧行為に断固反対する。この超党派法案は問題の重大性を外交において強調し、連邦機関を総動員して危険に晒されているコミュニティを守り、人権と言論の自由に対する深刻な脅威を克服する政府全体の明確な戦略を示している」と述べた。

ダン・サリバン上院議員は「中共のような専制政権が、抑圧やテロの手法を我々の領土に持ち込み、アメリカ市民を脅かしている。このような行為は決して容認できない。この法案により、アメリカは外国政府が自国の住民に対して脅迫や威圧、言論封殺を行うことを断固として拒絶する姿勢を明確にする」と語った。

クリス・スミス下院議員は「中国共産党は海外で脅迫活動を繰り返し、我々の都市、大学、家庭にまで侵入し、暴政に反対する者を黙らせようとしている。この法案は、米国内での越境弾圧行為を容認しないという強いメッセージを発するものだ。独裁政権の代理人がアメリカで異議人士や活動家、移民コミュニティを攻撃すれば、その行為は必ず明るみに出され、訴追される」と断言した。

ジム・マクガバン下院議員は「越境弾圧は国境を越えた深刻な人権侵害であり、近年ますます頻繁に発生している。我々は被害者を支援し、政府の対応力を高め、再発防止に取り組まなければならない。マークリ上院議員、サリバン上院議員、スミス下院議員と共に《越境弾圧政策法案》を再び提出できることを誇りに思う。この法案は、法的枠組みの下で抑圧行為を規制し、政府間の連携を強化して国境外での弾圧行為を防ぐ」と語った。

◆米国社会や被害団体への影響
米中関係に関する米連邦議会・行政府委員会(CECC)のスタッフ長ピエロ・トッツィ氏は、中共による米国内での「越境弾圧行為」への迅速な対応が必要だと警鐘を鳴らた。特に地方レベルでの法執行機関がその実態を十分に認識していないため、教育の徹底が求められている。
2023年11月のAPECサミット期間中に、サンフランシスコで起きた事件では、中共の領事館が関与した暴力により、平和的に抗議していた市民が攻撃の標的となった。トッツィ氏はこのような行為は米国では容認されるべきではないと断言した。
さらに同氏は中共による法輪功や神韻芸術団への越境弾圧についても言及した。「神韻芸術団のアメリカでの公演中に爆破を予告する脅迫が行われたり、法輪功を支持する米国議員に対しても圧力や威嚇行為があった。いずれも看過できない行為である」と語った。

神韻芸術団は、法輪功学習者によって結成され米国・ニューヨークに拠点を持つ世界的な芸術団である。五千年の歴史を有する中国文化の復興を目指しており、中国五千年の文化を基盤にした中国の古典舞踊と音楽を各国で披露している。神韻の公演は、世界中の観客から高く評価されており、観客に勇気、慈悲、希望をもたらすと称賛されている。

2024年以降、中共による神韻芸術団への脅迫行為は増加している。法輪大法情報センター(FDI)によれば、2006年から2024年までに130件を超える妨害の試みが記録されているほか、2024年から2025年5月の間だけでも110件以上の妨害未遂が発生し、その多くはアメリカ国内で確認されている。

2025年2月には、ワシントンDCのケネディ・センターで爆破脅迫事件が発生し、神韻芸術団の公演を妨害しようとする中共の狙いが明らかになった。

「彼らはアメリカの都市に秘密警察の拠点を築き、中国系米国人やウイグル族、チベット族といった少数民族を標的にしている。アメリカでこのような弾圧行為を許すわけにはいかない。いかなる場所でも抑圧は容認できず、米国ではなおさらである。我々は絶対にこれを許さない」と語った。

法輪功は、1992年中国で伝え出された気功で、身体の健康と道徳心の向上に顕著な効果があったため、当時の中国政府も推奨し、わずか数年の間に1億を超える人々に愛好されるようになった。ところが、当時の国家主席・江沢民(2022年11月30日に死去)は法輪功の爆発的な人気に強く嫉妬し、自分の権力を乱用し中国共産党を利用して、1999年7月20日に法輪功に対する弾圧を発動した。しかも、この弾圧を正当化するために、あらゆる手段を使って国内外へ捏造した情報を流し、徹底的に法輪功を悪者に仕立て上げた。中国共産党による法輪功への前代未聞の迫害は現在も続いており、不法逮捕や拷問、強制労働、性的虐待、集団レイプなど更には生体臓器狩りという国家犯罪にまで及んでいる。

【引用記事】大紀元(2025年8月3日