アメリカ政府は、中国共産党(中共)によるサイバー攻撃やスパイ活動に対し、ハッカーや留学生の逮捕、農地買収規制など断固たる対抗措置を開始した。2025年7月8日、アメリカ司法省が発表した複数の逮捕・規制措置は、米中間のサイバー戦争が“新たな局面”に突入したことを世界に示すものである。
ハッカー「HAFNIUM」の実態
7月8日、アメリカ司法省は、中共国家安全部の支援を受けていたハッカー、徐澤偉(じょたくい)をイタリア・ミラノで現行逮捕したと発表した。アメリカ当局は、彼をただちにアメリカへ引き渡し、裁判にかける方針を示した。
33歳の徐澤偉は、「HAFNIUM」というコードネームで知られるサイバー攻撃作戦に関与し、世界中の数千台のコンピュータおよび1万2千を超えるアメリカの機関に被害を与えた。とくに2020年、パンデミックが深刻化する中、彼はテキサス州の大学が行っていた新型コロナワクチン研究を標的に選び、重要な研究データや研究者の個人メール情報を盗み取った。
さらに、徐は国際的に著名な法律事務所のネットワークに侵入し、アメリカ政府関係者の通信情報を取得しようとした。
徐澤偉は、イタリアに休暇で入国した直後、空港でアメリカの逮捕状に基づきイタリア警察に拘束された。イタリア通信社ANSAは、飛行機を降りた直後の現行逮捕であったと報じた。
アメリカ司法当局は現在、徐に対し電信詐欺、身分盗用、不正コンピュータ侵入など9つの重罪を適用し、とくに電信詐欺には、最長20年の懲役刑が科される可能性がある。共犯者である張宇は逃走中であり、FBIは、全米指名手配を発令し、情報提供を求めた。
FBIヒューストン支局は、X(旧Twitter)上で中共国家安全部に対し、中国語による公開警告を発した。「お前たちの犯罪はもはや隠せない。国際社会はすでにお前たちの本質を見抜いた。法も道義も踏みにじり、アメリカの資源を略奪してきた国家である。なおもサイバー攻撃を続けるなら、必ず重大な代償を払うことになる」と警告した。
中国人留学生によるビザ詐欺事件
同日7月8日、アリゾナ州では、中国人留学生の張佳学模(ちょうかがくも)が、ビザ申請時に中共軍民融合機関との関係を隠していた事実を認め、ニューヨーク西地区連邦判事から判決を受けた。移民・関税執行局(ICE)は彼を拘束し、国外追放の手続きに入った。
張佳学模は2023年8月、北京航空航天大学(中共の国防工業に深く関わる7つの有力大学の一つ)で機密研究を行っていた経歴を申告せず、ビザ詐欺の罪でアメリカ当局に逮捕された経緯がある。
中国資本の農地買収規制
7月8日、アメリカ政府は、中共による農地買収にも注視し、アメリカ農務省は中共など「敵対国」による農地購入を全面的に禁止する新方針を発表した。現在、中国資本が保有する土地は、外資全体の1%未満にすぎないが、その多くが米軍基地の周辺に位置し、スパイ活動や監視のリスクが高いと判断された。農務省はこれら中国系資本による敏感な土地の回収手続きに着手した。
ウクライナでも中共のスパイ事件
同時期、ウクライナでも中共のスパイ活動が明るみに出た。ウクライナ保安庁は7月9日、中国人親子をスパイ容疑で逮捕したと発表した。親子はウクライナの最新鋭「ネプチューン」対艦ミサイルの技術を盗み出そうと企てた。
24歳の息子はキエフ工科大学に在籍していたが、2023年に成績不良で退学処分を受け、その後スパイ活動に転じた。父親は中国から頻繁に渡航し、現地でスパイ活動の指揮を執っていた。ウクライナ当局はこの親子に対し、最長15年の禁錮刑および財産没収を科す方針だ。
中国の学術界による電力網攻撃のリスク
さらに、アメリカの『今日の国土安全保障(HSToday)』は最近、中国の学術界がアメリカおよびヨーロッパの電力網を無力化する方法を、詳細に論じた数十本の論文を発表した事実を明らかにした。これらの論文は表面的には理論研究の体裁を取っているが、実際には最小のコストで最大規模の停電を引き起こす手法を記述しており、まさにハッカー向けの「攻撃マニュアル」だった。
近年、中共のハッカーが西側のインフラに対する攻撃を繰り返している現実と照らし合わせると、これらの研究の意図は極めて明白である。
こうした一連の事件を受け、アメリカは中共による脅威と浸透に対し、ついに本格的な反撃を開始した。中共のサイバー戦やスパイ戦に対して、アメリカは国家として断固たる姿勢を明確に示したのである。
【引用記事】大紀元(2025年7月12日)