【大紀元(2020年8月8日)】
安全保障専門家によれば、中国が南シナ海の海底に監視システムを構築しているという。海中にセンサー・ネットワークを広げ、米軍など他国の動きを監視している可能性があると指摘する。
中国による海中の監視装置について、公開情報を分析する組織オリオン・インスティチュートはこのほど、米紙フォーブスに寄稿した。それによると、多くの装置は中国海域にあるが、いくつかは国際海域に設置されている。中国は表向き、民生利用としているが、このシステムが軍事目的の利用も可能になるよう設計されている。オリオンは、中国軍による利用の可能性が高いとした。
中国共産党は、民間の技術力を活用して国防力を強化する「軍民融合」を推進している。
国際戦略研究所CSISのアジア海事透明性イニシアティブによると、この海中監視システムは「ブルー・オーシャン・インフォメーション・ネットワーク」と呼ばれるものの一部だ。関連情報は2019年のランカウイ国際海上航空宇宙展で公開された。
オリオンによれば、この無人装置には、大型のレーダードームをはじめ、さまざまな通信装置やセンサーが搭載されている。光電子・赤外線センサー、高周波無線、携帯電話電波の受信機が含まれる。
水中の万里の長城
「水中万里の長城」と呼ばれる海底に敷設された監視システムは、インド太平洋地域で水中、陸上、航空機などすべての活動を監視するシステム。中国国家造船会社(CSSC)が開発した。
「水中監視システム」構想自体は、米軍が冷戦中に配備した水中音響監視システム(SOSUS)に似たものだ。しかし、中国の公式説明によれば、水中万里の長城は、アクティブソナーシステム、遠隔操作型水中ドローン(UUV)、遠隔操作型の水上艦艇(USV)、その他のインフラ建造・配備がある。計画の一つによると、システムの最初の要素は2016年から南シナ海に展開されている。
システムの基礎となるのは、水深3000メートルまでの海底に設置された水音響センサーという。スプラトリー群島に建設中の人工島の軍事基地に設置される予定だとしている。
これらの監視システムは南シナ海における中国軍事の優位性を高めるものになりうる。中国は現在、南シナ海パラセール諸島とスプラトリー諸島を軍事拠点化し、レーダーも備えている。パラセール諸島のウッディ島には長い滑走路があり、7月に米海軍空母ロナルド・レーガンら打撃群が訓練した際、戦闘機8機を配備していたという。
南シナ海は、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾などが領有権を争っている。中国は多くの島々と岩礁を含むほぼ全域を主張し「九段線」と例えるが、それらの一部地域は事実上、他の国が実行管理している。
2020年7月上旬、米国は南シナ海における沖合資源の大部分の領有権を訴える中国の主張を拒否する声明を発表した。
4年前、オランダ・ハーグ常設仲裁裁判所は国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約/UNCLOS)に基づき、南シナ海の海域に対する中国の主張には法的根拠がないとの判決を下した。しかし、中国側はこれを受け入れず、他国の了解を得ず島の拡張工事や海洋調査を続けている。