欧州議会「中国の法輪功への迫害を非難する」決議に中国のスパイか 独極右政党の側近を逮捕

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欧州議会で採択された中国の法輪功への迫害を非難する決議をめぐり、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の欧州議会議員マクシミリアン・クラー氏の側近が、中国のスパイ行為の容疑で逮捕された。ドイツ連邦検察庁は4月24日、クラー議員の元で働くドイツ国籍の中国系男性、ジャン・G.容疑者(43)を「特に重大なスパイ行為」の容疑で逮捕したと発表した。

検察によると、ジャン容疑者は今年1月、中国の法輪功への迫害に関する欧州議会の決議案を含む、議会内部の交渉や決定に関する情報を中国の情報機関に繰り返し流していたという。また、欧州連合(EU)のインフラに対する中国の影響力など、安全保障や防衛政策に関する議論の内容も漏洩していた疑いがある。

さらに、ジャン容疑者は、ドイツ国内の中国人民主活動家の監視活動も行っていたとみられる。検察は容疑者が2019年にクラー議員の側近になる以前から、中国の情報機関と関わりがあったとみており、逮捕には、ドイツ連邦憲法擁護庁の情報が役立ったという。

一連の疑惑を受け、欧州議会は容疑者を即時に職務停止処分にした。「暴露された内容の重大性を考慮し、当該人物を直ちに職務停止とした」と議会報道官は述べた。クラー議員は当初、容疑者のスパイ行為を把握していなかったとしながらも、「容疑が事実なら直ちに解雇する」と述べた。

週刊誌「シュピーゲル」によると、ジャン容疑者は過去にチベット亡命政権のダライ・ラマ14世と面会するなど、中国の反体制派の間で活動。しかし外国の情報機関は、容疑者が実際は中国共産党政府と緊密な関係にあるとの疑いを以前から持っていたという。

事実、クラー議員は近年、AfD内で親中路線を押し進めてきており、2019年11月には中国を訪問し、通信機器大手ファーウェイの研究所を視察。AfD議員団に対し、ファーウェイを5Gネットワークから排除する方針に異議を唱えていた。ウイグル族の強制収容施設に関する報道も「怪談」呼ばわりするなど、中国寄りの姿勢を鮮明にしてきたという。

ロビー活動監視団体は、ジャン容疑者のスパイ疑惑が昨年から知られていたにも関わらず、クラー議員が何の措置も取らなかったと指摘。クラー議員はAfDの欧州議会選挙の党首候補だが、「もはや立候補資格はない」として議員辞職を求めている。

欧州では近年、極右勢力と中国の蜜月関係が指摘され、機微技術(軍事転用可能な技術)の流出も問題視されてきた。親中姿勢を隠さないクラー議員の側近による、中国の法輪功への迫害を非難する決議への妨害工作の疑惑は、欧州の価値観を脅かす新たな事例として、厳しい批判にさらされている。

※法輪功は1992年中国で伝え出された気功で、宗教や政治に関与することはなく、身体の健康と道徳心の向上に顕著な効果があったため、わずか数年の間に1億を超える人々に愛好されるようになった。しかし、当時の国家主席・江沢民(2022年11月30日に死去)は法輪功の爆発的な人気に強く嫉妬し、自分の権力を乱用し中国共産党を利用して、1999年7月20日に法輪功に対する弾圧を発動した。以来、生体臓器狩りにまで及ぶ残虐な迫害を続けている。

【引用記事】大紀元2024年5月2日