【中共の浸透工作】米地方議員に影響力を行使 中国有利の政策に

時事

米国でパンデミックが猛威を振るっていた2020年2月26日、米ウィスコンシン州上院のロジャー・ロス上院議長のもとに、中国の趙建・在シカゴ総領事(当時)の妻である呉婷氏から一通の電子メールが届いた。ロス議長は先月、英文大紀元(The Epoch Times)のインタビューでその一部始終を語った。

呉氏はメールの中で、ロス議長に対し、「中国政府は武漢でのロックダウン(都市封鎖)を含め、新型コロナウイルス感染症の蔓延を防ぐために、前例のない抜本的な対策を講じている 」と述べ、新型コロナウイルスと闘っている中国を支援する決議案を可決するよう要請した。

このメールには、「参考までに」と書かれた決議案の草案が添付されていた。草案には、「在シカゴ中国領事館は、中国とウィスコンシン州の互恵関係と人的交流の促進、とくに貿易、農業などの分野での交流に力を入れており、両国の関係を前進させようと中国総領事はウィスコンシン州を訪問することを期待している」という内容が盛り込まれていた。

ロス議長は英文大紀元のインタビューで、決議案について「中国政府のコロナ対策が透明だと自画自賛している」とし、「最初は冗談に違いないと思った。 領事館の公式アカウントではなく、個人のアカウントからのメールだった」と述べた。彼はそのメールを削除し、頭の中から消し去った。

しかし、その後何度か同じメールを受け取ったロス議長は、州政府の情報機関を通じて確認したところ、中国領事館の職員が米国の政府関係者と連絡を取る際には、通常、個人のメールアカウントを使用することが分かった。また、呉氏が在シカゴ中国総領事夫人である事実も判明した。

これが冗談ではなく、正式な依頼であることを知ったロス議長は激怒し、部下に「Nuts(バカめ)!」と書いた返事を中国領事館に送るように指示した。

第二次世界大戦中、ドイツ軍の降伏勧告に対するアンソニー・マコーリフ准将の有名な返答にちなんだこの一言が、ロス氏と在シカゴ中国領事館との最後のやりとりとなった。こうしたやりとりがきっかけで、彼は中国共産党の脅威からウィスコンシン州の防衛に携わることになった。

ロス議長はその後、中国領事館の要求とは正反対の決議文を起草した。中国共産党が武漢肺炎の発生を隠蔽したことを非難するものであった。

ロス氏は英文大紀元の取材に対し、今回の事件で「中国共産党が米国にどのような脅威を加えているかを体験した。(中略)ほとんどの人はこうした脅威を感じていないが、彼らは私たちの地域に黒い手を伸ばしている」と話した。

ユタ州議会、中国領事館の要請に協力

中国共産党は、外国の中央政府だけでなく、地方当局、議会、地方政治家にも影響を広げている。

中国領事館がウィスコンシン州のロス上院議長にメールを送ったのと同じ頃、西部のユタ州議会では「中国人民との連帯」を表明する決議が採択された。決議文の文言は呉氏の提案と似ており、ユタ州と中国の「友好的な関係、経済、文化、人と人との強い結びつき」や「ユタ州と中国遼寧省との14年にわたる交流と協力関係」を強調するものであった。

ユタ州の政治家たちは中国領事館の「要請」を受け入れた。ユタ州議会は2020年2月25日、新型コロナウイルスに関する決議を採択した。この決議では、連邦政府に対し「不必要に海外旅行と貿易を妨げ、恐怖と嫌悪を助長する防疫措置を撤廃する」よう促した。

当時、トランプ政権は、中国・武漢で発生した新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大への対応として、米中間の航空便の運航停止を検討していた。この動きは、中国政府と世界保健機関(WHO)から激しい非難を浴びたが、結局、パンデミックの拡大とともに世界のほとんどの国で採用されることになった。

ロス議長は、「ユタ州議会のような地方政府は決議を起草したとき、何が起こっているのか知らなかったし、中国によって利用されていることも知らなかった」と指摘した。

米国連邦政府が新型コロナウイルスの米国への感染防止に取り組む一方で、州議会や地方自治体は中国領事館の「要請」を受け入れ、中国政府に代わって「防疫措置の撤回」を求めていた。これは中国政府の利益を代弁する行為であり、中国共産党が長年にわたって米国の地方当局に浸透してきた結果である。

英文大紀元の記者は、この決議案を提出したユタ州上院議員のジェイコブ・アンデレグ(Jacob Anderegg)氏と下院議員のエリック・ハッチンス(Eric Hutchings)氏にコメントを求めたが、いずれも回答は得られなかった。

ほぼ同時期に、ジョージア州とニューヨーク州でも「中国デー」の決議が採択された。

ジョージア州上院は2020年2月3日、ジョージア州と中国との特別な友好関係を称える決議案を可決した。決議案の採択に先立ち、在ヒューストン中国総領事(当時)の蔡偉氏は、ジョージア州の上院議員の前で、中国政府のコロナ対策を賛美する演説を行った。議員たちは、この演説に拍手を送った。

その5カ月後、在ヒューストン中国領事館は米国務省によって閉鎖された。当時のマイク・ポンペオ国務長官は、ヒューストンの中国領事館を「スパイ活動と知財盗用の拠点」と呼んだ。

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一方、ニューヨーク上院は2019年6月、10月1日(中国共産党政権樹立の日、中国共産党が正式に中国を支配した日)を記念する決議を採択した。この決議の発案者であるジェームズ・サンダース(James Sanders)上院議員は、中国領事館がこの決議の採択に何らかの役割を果たしたかという英文大紀元の問い合わせに対して、回答しなかった。

従わない者への圧力と脅迫

中国共産党に批判的な立場をとる者に対して、中国政府は圧力や脅迫を加え、その努力を阻害する。

15年前にカリフォルニア州議会に初当選したジョエル・アンダーソン(Joel Anderson)上院議員は、5月13日の「世界法輪大法デー」を祝う決議案を提出したことで、中国政府からの脅しに遭った。

※法輪功(ファルンゴン)は、法輪大法(ファルンダーファ)とも呼ばれ、1992年中国で伝え出された気功で、身体の健康と道徳心の向上に顕著な効果があり、多くの人々が実践していた。しかし、当時の国家主席・江沢民は、法輪功の爆発的な人気に強く嫉妬し、1999年7月20日、全面的な弾圧を発動した。以来、何の罪もない法輪功の学習者たちとその家族は、想像を絶する迫害を受け、その残虐さは生体臓器狩りにまで及んでいるという。

 

アンダーソン議員は英文大紀元に、この決議案が原因で中国当局から、彼のことを「テロリスト」と呼ぶ6ページの手紙を受け取ったと語った。「その手紙には、もし私が中国に渡航すれば、テロリストとして逮捕・起訴されると書かれていた」とした。

数年後、アンダーソン氏は、米中の貿易関係を促進するために、州の上院議員の一人として中国を公式訪問するよう招かれた。中国での身の安全が保障されるかどうか、州政府の事務室に確認したところ、彼の中国行きは中止となった。

その後10年ほど、彼は他の連邦政府や地方政府の高官と同様に、中国当局から訪問、メール、電話などを通じて、中国に有利な政策をとるよう圧力をかけられていたという。

2017年、アンダーソン氏は中国政府による法輪功への迫害を非難する決議案を提出した。この決議が州上院司法委員会を5対0で通過した後、サンフランシスコの中国領事館は、この決議が通過すれば「カリフォルニア州と中国の協力関係を著しく損ない、中国人の感情を著しく傷つける」恐れがあると警告する手紙を州上院議員全員に送付した。

「これは同僚(上院議員)たちの投票に影響が出た。彼らは全員、決議に賛成していたが、この手紙を受け取った後、賛成から反対に変わってしまった」とアンダーソン氏は言う。

ユタ州でも、中国共産党による臓器収奪を非難する決議案が州議会で暗礁に乗り上げた。

決議案は、2020年2月下旬にスティーブ・クリスチャンセン(Steve Christiansen)下院議員によって提出された。ところが数日後、クリスチャンセン氏は、一緒に議案を作成したユタ大学医学部の腫瘍学教授であるウェルドン・ギルクリスト氏に電話をかけ、議案から手を引くと告げた。

ギルクリスト博士は英文大紀元に対し、「つまり、プレッシャーにさらされているということだ。事実と思えないから撤回するのではなく、『中国人コミュニティの声を聞け』と言われたから撤回したそうだ」と明かした。

「私にとって、これは中国共産党の声だ。この人たちは、明らかに私たちの役人に圧力をかけている。中国共産党は、そのチャンネルを使って、私たちの議員に圧力をかけて何もさせないようにしている」と指摘した。

この決議案は上院で第3読会を通過したものの、2020年3月12日の記録では、この法案が失効していることが示されている。

「自由のために立ち上がれ」

ウィスコンシン州のロス上院議長は中国領事館の「要請」を拒否した後、同州における中国の影響力を制限するための一連の措置を提案した。その中には、ウィスコンシン大学の組織内での中国軍人の就労禁止や、大学組織内での中国人採用やアウトリーチプログラムの制限などが含まれている。

「私たちが地方議員として行うことは、すべて大きな物語に反映される。限られたものではあるが、私たちには機会がある…私たちは自由を支持し、現在中国で自由を愛する人々、あるいはこの残忍な政権の人質となっている人々を支持する機会があるのだ」と彼は熱く語った。

そのためには、全国の議員たちが中国共産党の影響力を排除する必要があるとロス氏は言う。

「今こそ米国人が目を覚まし、自由のために戦うことを認識すべきだ。人はいつもそれを当然のことと思っているが、自由は壊れやすいものだ」と語った。

【引用記事】大紀元 https://www.epochtimes.jp/2022/07/109853.html