中国鄭州市の地下鉄5号線出入口 禁じられた追悼祭典

時事
中国河南省鄭州市5号線地下鉄駅の入り口(ツイッターより)

中国・河南省鄭州市で発生した洪水災害の犠牲者の「初七日」にあたる26日、多数の犠牲者を出した同市地下鉄沙口駅の出入り口で市民による献花が行われた。一方、政府は花束などを隠すため障害物を設置し、批判を集めた。障害物を外した市民や記者が警察に連行された。

犠牲者の初七日 大量の花で追悼

7月20日の豪雨とダムの放流で大洪水が発生した鄭州市では、地下鉄5号線で亡くなった犠牲者が初七日(26日)を迎え、地下鉄駅の出入り口には大量の花が供(そな)えられ、家族や友人に哀悼の意を表していた。 現場では「花が多すぎて、供える場所がなくなった」という声も聞かれた。

ツイッター上の動画によると、現場の階段の上に座って見守る人たちや、手に花を持って供える場所を探す人たちの姿が映っていた。地下鉄の出口から外に向かって、花束がびっしりと並んでいた。

現場で撮られた映像によると、地下鉄の出入り口に置かれた花束には、それぞれメッセージカードが添えられており、カードには犠牲者の名前が書かれていた。

駅の入り口には、花や「7・20」と飾られたキャンドルがあり、そして食べ物が供えられている。ネットユーザーは、「左は河南人の最も伝统的な朝食である胡辣汤(フーラータン)。下にはポテトチップスがあり、女の子は生前ポテトチップスが好きだった。これは被害者の中には子供や女の子がいたということだ」と述べた。

地下鉄出口の献花にフェンス 抗議の市民が連行される

中国紙「紅星新聞」の記者である潘俊文氏は、「初七日を迎えた鄭州地下鉄5号線の犠牲者の遺族は出口で追悼を行ったが、見物人がいる中、関係部門は黄色いブロック板を設置して追悼現場の花を囲った。午後には別の出口も囲まれた」と投稿した。

その夜、民衆が自発的に仕切り板を取り払った。27日、当局は再び仕切り板を張ったが、市民から強い反発を招いた。結局、仕切り板を撤去したという。

鄭州市地下鉄出口で、多くの市民が献花したが、当局はフェンスを設置した(微博)

「(当局は)タイムズ誌の表紙を飾れるほどの恥知らずだ」「愛する家族を弔う権利すらない強大な国」とネットユーザーたちは皮肉を混じりながら嘆いた。

市民の王さんは、SNSに「これからやることがある」と投稿した後、数人の鄭州市民と共にフェンスを撤去した。王さんは、「何をブロックしているんだ? 人の帰り道を塞ぐな」とその後も投稿した。

さらに、「パトカーが私を連れ去るのを待っている、パトカーが来た」「故人の家への帰り道を照らしてあげたい。ただそれだけだ」と王さんは最後に書き残し、当局に連行された。

翌日、警備員はより長いフェンスを設置した。しかし、多くの鄭州市民が不満を表明した後、当局は最終的にフェンスを撤去した。

フェンスを撤去した王さんに関する情報は今のところまだない。

中国メディア「財新網」の撮影記者である陳亮氏も当局に連行された。陳氏は27日夕方、現場の写真を撮影した後、鄭州市南陽路派出所によって連行されたという。陳亮氏はその後、釈放された。

27日、鄭州市政府は、同市で発生した地下鉄5号線の浸水事件により14人が死亡したと発表し、死者の名前を公表した。

しかし、中国当局が公表する死亡者数の信ぴょう性は疑問視されている。

同地下鉄の出入口で、連絡の取れなくなった家族や友人の情報を求め、連日のように大勢の人たちが現場にとどまっている。

地下鉄の出入口に座り込み、娘の帰りを待つ父親の姿も見られた。ぼんやりとする父親のそばに止められた自転車には「娘よ、お父さんはもう一度あなたを家に連れて帰りたい」と書かれた板が掲げられていた。

当局は27日、地下鉄5号線で女性11人、男性3人、計14人が死亡したと発表した。しかし、供える場所がないほど多い追悼の花束に対して、公式に発表した数字を信じる人がどれぐらいいるだろうか。

【引用記事】
朝日新聞「中国豪雨、14人犠牲の地下鉄出口に壁 ネット上で非難」2021年7月27日
看中国「鄭州市、犠牲者の初七日 大量の花で追悼」2021年7月28日
大紀元「鄭州の洪水、地下鉄出口の献花にフェンス 抗議の市民が連行される」2021年7月28日

【参考動画】
大紀元[新聞観点]なぜ若者は死ななければならなかったのか?2021年7月29日

あとがき

今回の鄭州市の洪水災害は自然災害のみならず、ダムの放流などの人災が大きく影響し、帰宅ラッシュの人命を飲み込んだ。多くの行方不明者を出し、溺死した遺体はトレーラーの荷台に積んで火葬場へと運ばれた。当局は犠牲者や被害状況の把握もままならず、責任逃れに走っている。地下鉄出入り口の献花の動画を見るにつけ胸が痛くなる。

写真の「7・20」の数字を見て、あることを連想した。

1999年7月20日、当時の国家主席・江沢民は法輪功に対する弾圧を発動し、残虐な迫害は22年経った今もなお続いている。何の罪も無い、ただ良い人になりたいと願う法輪功学習者に対し、不法に拘束し、拷問や過酷な強制労働を科し、挙句には生体から臓器を収奪し移植用に売買するという国家犯罪まで犯している。

毎年7月20日は、各国の法輪功学習者たちが中国共産党の邪悪な本質を世の人々に暴露し迫害停止を呼びかけると同時に、迫害の犠牲者を追悼する重要な日となっている。

NTDジャパン「米国務省:法輪功への迫害を即刻停止せよ」2021年7月20日