米国司法省は28日の記者会見で、米国に逃れている中国の出身者を脅迫して強制的に帰国させる違法な活動に関わったとして中国人ら8人を訴追したと発表した。この8人は、中国の習近平国家主席が掲げた「キツネ狩り作戦」と称する活動に関与していたとみられ、その実体は反体制派の拘束が目的だとFBIは批判している。
米当局 「中国出身者脅迫し強制帰国」関わった8人訴追|NHKニュース
米国司法省は28日の記者会見で、米国に逃れている中国の出身者を脅迫して強制的に帰国させる違法な活動に関わったとして中国人ら8人を訴追したと発表した。
8人は、中国政府の指示をうけて、政府に批判的な人物に、帰国しなければ、中国に住む家族に危害を加えるなどと脅迫する手紙を送りつけたり、周囲の人に嫌がらせのメッセージを送ったりしたという。
連邦捜査局(FBI)は、中国の習近平国家主席が海外に逃れた汚職官僚を摘発するためとして掲げた「キツネ狩り作戦」と称する活動について、実体は政府に批判的な活動家などを拘束することが目的だと批判していて、8人もこの活動に関わっていたとみられている。
8人のうち5人は米国内で逮捕され、残る3人は中国国内にいるとみられる。
記者会見でFBIのレイ長官は、「米国内での中国政府による監視や脅迫、嫌がらせはあってはならない。あらゆる手段で打ち負かす」と述べ、国内でのこうした活動を厳しく取り締まると強調した。
国を越えてつきまとう「キツネ狩り作戦」
BBCニュース(2020年10月29日)によると、裁判所に提出された書類には、訴追された8人が共謀して、中国の不法工作員として活動していたとされる。
そのうち6人は、州や国を越えたつきまとい行為を共謀した疑いがかけられている。対象者を監視し、中国に帰国させようとしたとされる。
FBIのクリストファー・レイ長官は、「今日の訴追は、中国が広範囲で進行させている違法行為の新たな例を示すものであり、私たちがそれを容認しないことを示している」と述べた。
裁判書類によると、工作員らは、ニュージャージー州在住の男性を脅迫、監視、帰国強要した疑いがもたれている。2017年には、男性の高齢の父親を米国に連れて来て、男性を脅して中国への帰国を迫ったとされ、2018年には、男性の家の玄関ドアに手紙を置き、中国に戻って刑務所で10年の刑に服せば、家族はそっとしておくと伝えたという。
2019年2~4月には、男性の自宅に小包を送付。中に入れた手紙やビデオを通して、男性に帰国を迫り、中国にいる家族に危害が及ぶと脅したとされる。
訴追された8人は有罪となった場合、最長5年の禁錮刑を受ける。さらに、つきまといの容疑がかけられた6人には、最長5年の禁錮刑が追加される。
FBIのレイ長官は、「米国の市民や米国にいる合法的な永住者に、中国政府が図々しくも監視や脅迫、嫌がらせをしようとするのは、中国が米国や世界で盗みをはたらき、悪影響を広げようとするさまざまな活動の一部だ」と非難した。
レイ長官は今年7月、「キツネ狩り作戦」に言及しながら、中国が米国にとって最大の安全保障上の脅威となっていると警告。中国の習近平国家主席が作戦を「先導している」と述べた。
「キツネ狩り」は2015年に開始され、当局が探している数十万人の身柄確保につながったとされている。
・BBCニュース「米FBI、「中国工作員」ら訴追 反体制派に帰国迫った疑い」(2020年10月29日)