【大紀元(2020年8月24日)】
豪シンクタンク・戦略政策研究所(ASPI)はこのほど、中国共産党が違法または不正な手段で、海外から高度技術を持つ人材を獲得しているとの報告を発表した。中国の「千人計画」をはじめとする人材獲得運動は、知的財産の窃盗やスパイ行為に関連し、人民解放軍の現代化に使用されている。その中国の求人ネットワークは、日本を含め600拠点あり、規模は拡大しているという。
ASPI研究員アレックス・ジョスク(Alex Joske)氏による新報告「鳳凰狩り(Hunting The Phoenix)」は、中国共産党が米技術大手テスラや米ハーバード大学などに所属するような世界トップクラスの科学者を中国に迎え入れるために、秘密裏の広範な求人ネットワークを活用していると指摘した。
中国共産党は「千人計画」をはじめ200あまりの海外高度人材獲得計画を持つ。中国当局は、これらの計画で2008~16年の間に6万人もの海外の科学者や専門家を採用したとしている。しかし、ジョスク氏によれば、これとは別に、存在が公にされていない世界600カ所ほどの「海外人材獲得センター」が存在し、高度人材をリクルートしている。
この人材獲得センターの表向きの正式名称はないが、この役割と運営を、中国の同郷会、同窓会、専門家組織、技術・教育系企業、大学キャンパスにいる中国留学生や教師らの学友会、現地の中国友好会、友連会などの組織に委託することが多いという。大半は統一戦線部と連携していると、ジョスク氏は指摘している。
日本に46カ所
中国の地方友好会や科学技術局と提携する日本国内の人材獲得センターは、東京(18)、長野(23)、京都(3)、大阪(2)、さらに福岡、栃木、愛知にも拠点があるという。
報告は、日本での人材募集計画の一例として、中国留日同学会(All-Japan Federation of Overseas Chinese Professionals)を取り上げている。これは、在日中国人科学者・技術者のための組織で、中国共産党中央統一戦線部および欧美同学会(注釈・欧米に渡航した中国研究者組織)が1998年に設立した。
中国留日同学会は、日中間の学者や留学生の交流を通じて、中国共産党の影響力を海外に及ぼすための組織とされる。同学会のトップは、統一戦線部や欧美同学会の幹部が歴任している。
中国留日同学会は少なくとも8つの人材獲得センターを運営し、日本で高度人材紹介イベントを開催したり、中国での同様な高度人材招聘の企画に日本人科学者を招いたりしている。福建省だけでも、日本から30人の科学者を採用したと言われている。
報告書は特記して、2014年、鳩山由紀夫元首相が統戦部組織である欧美同学会による初の海外連絡拠点の開所式典に出席していることを取り上げた。中国共産党系メディア・中国僑網によると、鳩山氏は同席の演説で、中国人留学生から自身の肖像画をプレゼントされたエピソードを語った。「この絵を見れば、日中両国の人々は友好的な心を共有していることがわかる。両国が友好的にならない理由もない」と述べたという。
記録になりにくい方法で人材獲得
世界各地にある中国共産党の人材獲得センターは、中国との科学的協力の締結や学術交流を促進する役割を担う。さらに、印象を良くするために対象となる人材を中国旅行に招待したりしている。
人材獲得センターは中国当局から年間最大15万元(約225万円)の運営費が充てられている。また、「人材獲得に成功」したら、高度人材一人につき最大20万元(約300万円)のボーナスが支給されているという。
報告書によると、中国共産党による人材募集計画に対する米国当局の捜査が進行し、海外の報道も活発になっていることから、人材獲得は地下化しつつある。2018年9月、中国政府は千人計画に関する情報をインターネットから削除し始め、記録に残りにくい方法を使用するよう組織に命じた。
台湾中央社は2018年10月、中国当局の千人計画に関する指示書を暴露した。そこには、「海外人材計画の安全・安心の向上のため、全部門は(海外の獲得人材に対する)面接・回答の電子メールの使用を控え、電話・FAX等を使用する。帰国後の学会・フォーラム等への招待状は、文書通知に『千人計画』の文字を入れない」などと明記されている。
また、ジョスク氏の報告によると、これらの人材獲得センターは統一戦線部など党関係組織と連携することが多い。海外の党組織は、情報収集、海外から中国への技術移転の推進、反体制派運動の打破など、中国の他の政策や党の目標に関する在外中国人に対する指導などを行っている。
2018年、習近平主席は中国の科学者と技術者に「技術競争の優位性を獲得し、高く発展する」よう要請した。中国共産党が主導する海外人材募集計画は、すべての先進国を対象に、世界最先端技術を中国に移転する狙いがある。こうして獲得した技術を持って、2025年までに技術大国になるとの国家目標「中国製造2025」の実現を図る。さらに、中国共産党体制では、海外の革新技術が中国本土に移れば「軍民融合」政策のもと中国軍へ提供される。