一帯一路の「債務の罠」 危機拡大のスリランカ

時事

スリランカは、中共の「一帯一路」構想の重要なパートナーだが、債務が返済できず、中共の影響力拡大のために新興国を借金漬けにする「債務の罠」に嵌(はま)ったと言われている。1月9日、中共の王毅外相がスリランカを訪問した際、ラジャパクサ大統領は負債償還の再調整を求めたが、王氏の反応は分かっていないという。

 

中共の王毅外相は1月9日にスリランカを訪問し、ゴタバヤ・ラジャパクサ(GotabayaRajapaksa)大統領と会談した。その際、ラジャパクサ大統領は、中共ウイルスの流行により拍車がかかった経済危機への解決法として、巨額の対中債務の返済条件の緩和を求めた。

中共の巨大経済圏構想「一帯一路」の参加国として、スリランカは中国共産党にとって重要なパートナーだ。過去10年間、中共当局はスリランカの高速道路、港、空港、石炭発電所などのインフラ建設に50億ドル(約5730億円)を超える投資を行ってきた。しかし、多くのプロジェクトは建設コストが高く、見返りが少ないため、結果的にスリランカは債務危機に陥っているという。

財政難から昨年、さらに10億ドル(約1146億円)を借り入れた。今後12か月で、スリランカ政府と民間部門は73億ドル(約8366億円)の内外債務を返済しなければならず、1月18日には5億ドル(約573億円)の国際ソブリン債が償還期日を迎えた。

観光業が中心のスリランカ経済は、中共ウイルスの流行による影響でこの2年間、大きな打撃を受けている。外貨準備が枯渇し、日用品の不足が深刻化し、粉ミルク、LPガス、灯油などの生活必需品を買うために、長蛇の行列ができている。原油を輸入するための外貨がないため、1月8日からは電力制限が始まった。

物資の不足により、価格も高騰している。同国の中央銀行によると、インフレ率は昨年11月の9.9%から、12月には12.1%に上昇し、同時期の食品インフレ率は22%以上に上昇した。

また、スリランカ南部のハンバントタ港の建設に投入された14億ドルのうち、およそ11億ドルが中国からの借り入れだが、返済不能となったため、2017年7月より運営権を99年間、中共の国有企業に租借することになった。

それでも親中派ラジャパクサ氏が率いるスリランカの対中接近は修正されていない。昨年11月には、日印と協力して進める予定だった最大都市コロンボの港湾開発事業を中国企業に発注することを決めた。

米国在住の経済学者・鄭旭光氏は、1月10日、大紀元のインタビューを受けた。中共が2017年に、スリランカのハンバントタ港の経営権とその周辺15,000エーカー(1 エーカー は1辺が約63.4mの正方形に相当)の土地の又貸し権を得たことについて、鄭旭光氏は「勝者は中共ではない」と指摘。鄭旭光氏は「港の運営権は与えられてもお金を稼ぐことができない。これはいわゆる「白象プロジェクト」であり、見た目だけで役に立たないただの巨額の負債に過ぎない。結局は人を害し自分自身をも害したことになる」と批判した。

同じく10日、米国在住の政治評論家・王赫氏も、大紀元のインタビューに対して「中共の対外拡大は政治目的があり、金をばらまいてもほんとんど回収できない」と語った。
また「中共の政治会計は経済会計ではなく、すでに多くの人々の蓄えを台無しにした。中共が商業貸付をした場合、相手が不正をしたり、債務返済を拒否したりしても、中共はそれについて責任を負わない」と述べた。

鄭旭光氏は、中国(中共)は「一帯一路」において5,000億米ドル以上を投資したと分析し、中共の外貨準備は実際には中共の対外債務であると述べた。中国の経済が縮小し、外資を撤退する時には「中国(中共)政府は対外債務危機を引き起こす可能性がある。中国(中共)は何を持って対外債務を返済するのか?そうなると国民の所得から搾取するだろう」と指摘。

経済学者の程曉農氏は「中共はいま外貨準備のジレンマに直面している。中共は現在2兆7,000億米ドルに近い対外債務を抱えており、債務返済のため外国為替を残す必要がある。同時に、3兆4,000億米ドルの対外直接投資があるが、もし、資本を撤回するとなるとこれにも外国為替が必必要となる」と書いている。

鄭旭光氏は、中国の経済が衰退し続けるにつれて、「一帯一路」は中国に悪影響をもたらしていることはますます明らかになっていると分析した。

 

王赫氏:「一帯一路」政策の最大の敗者は中共であると指摘

中共の「一帯一路」の開発モデルは、ほとんどが中共当局が一部の開発途上国への資金の貸付に依存している。これらの国々は指定された資金を使って中国の会社にインフラ等を構築してもらい、債務は数十年分割で返済することになっている。

ウィリアム&メアリー大学(College of William and Mary)のAidData研究所が2020年9月29日発表したレポートによると、中共はこれまでに165か国で13,427件のプロジェクトを実施しており、8,430億米ドルに相当するという。

王赫氏は、中共が推し進めている金のばらきまである「一帯一路」政策は、実は中共が最大の敗者であると指摘した。たくさんの金をばらまいても、それに相応した利益が得られるわけでもなく、出た金は戻ることはない。次に、中共から借り入れをした国にとっても利益にならない。受入国は多くのプロジェクトを実施することにより資金不足に陥り、それによって大規模なインフラが完成しても収入がないため、債務返済できなくなる。そうなると、受入国は債務危機に陥ってしまうという。

王赫氏はまた、国際情勢の変化に伴い、「中国経済は持続不可能であるため、中共の野心が浮き彫りになってしまった。一帯一路を利用した対外拡大構想は最終的には泥沼に陥るだろう」と指摘した。

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【参考記事】
・NHKhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20220110/k10013423051000.html
・産経新聞https://www.sankei.com/article/20220111-SXA4Y2EOT5JZZCGFYGCVRIGWY4/
・大紀元https://www.epochtimes.com/gb/22/1/10/n13495938.htm