10月7日台湾当局は、インドTV局WIONによる「双十節」に関する番組放映をPRするため、複数のインド紙に全面広告を掲載した。これを見た中国大使館は抗議レターを送りつけた。さらに10月21日に台湾外相を独占取材したWION宛に、再び抗議書簡を送りつけたので、「中国は指図しようとしている」として猛反発が起こったという。
インドメディアの反発を買った中国大使館からのレター
10月7日、インドの日刊紙「The stateman」によると、この日、台湾当局は、10月10日にインドのテレビ局WIONが双十節(台湾の建国記念日)に関する特別番組を放映することをPRするため、「インドエクスプレス」紙ほか複数のインド紙にカラーの全面広告を掲載した。
これを見たニューデリーの中国大使館はSNSと電子メールで、インドのメディアに「中国大使館からのレター」と題された文章を送り付けた。「親愛なるメディアのみなさん」と呼びかけ、「世界には1つの中国しかない。中華人民共和国の政府はすべての中国を代表する唯一の政府である」と、中国の立場を強く主張する内容だった。
⇑インドのメディアに送り付けられた「中国大使館からのレター」
中国大使館のレターは「私たちは、中国関係の報道を通して、メディアみなさんとのコミュニケーションを維持する用意がある」という言葉によって締めくくられている。Rej氏によると「これを無視すると、中国大使館へのアクセスが失われる可能性がある」という意味で、中国大使館は「協力しなければ中国に関する取材は許さない、記事は書かせない」という圧力をかけているといえる。
このレターは、インドのジャーナリストらによってツイッターで拡散された。折しも国境地帯での対立をきっかけに、インドでは国民が中国製品のボイコット活動を展開し、インド政府はTikTokをはじめとした59種類の中国製スマホアプリの利用を禁止している最中だった。そんなインドに、中国大使館からの“高圧的なレター”が送りつけられ、波紋を広げた。
・中国に喧嘩売ってる?インドに現れた禁断のポスター(JBpress 2020年10月27日)
中国大使館が再び「指図」、印メディアが猛反発 台湾をめぐって
大紀元(2020年10月27日)によると、在インド中国大使館は10月23日、21日に台湾の吳釗燮外交部長(外相)を独占取材した印メディア、「Zee News」放送局傘下の国際報道チャンネル「WION」宛に、抗議の書簡を送った。これに対して、Zee News側などは、中国大使館は「印メディアの報道の方向性について指図をしようとしている」として猛反発した。
台湾メディア「中央社」によれば、中国大使館は22日、「Zee News」放送局傘下の国際英語ニュースチャンネル「WION」宛に書簡を送った。書簡は、台湾は中国の領土の一部であるとする「一つの中国の原則」を順守し、台湾を「国家」としてを扱わないよう要求した。また、書簡は「WIONは、インド政府の長年の立場を無視し、台湾の民進党当局の分裂活動にプラットフォームを提供していることに強く抗議する」とした。
Zee NewsとWIONは、中国大使館の威圧的な態度に怒りを露わにし、各ニュース番組を通じて、中国側が「常にインドメディアの報道の方向性を指図しようとしている」と批判を展開した。
WIONは22日夜、政治評論番組で、中国当局によるインドの報道の自由に対する「乱暴な干渉が絶えない」と非難した。また、番組は、中国当局による台湾への軍事的威嚇、インド領土への「侵入」、東シナ海や南シナ海などでの軍事的拡張などを取り上げた。
一方、21日に台湾の吳外相の取材を担当したWIONのキャスター、Palki Sharma氏は、ツイッターに中国大使館からの書簡を掲載し、「中国大使館はWIONに、『一つの中国』の原則を守れと求めたが、では中国側も『一つのインド』を順守すべきではないか」「中国当局は先にカシミール(Kashmir)地方、ラダック(Ladakh)地方、アルナーチャル・プラデーシュ州(Arunachal Pradesh)がインドの一部であることを承認してくれるのか」「主権の尊重は双方向である」などと反論した。
インドとパキスタンは、カシミール地方について、長年「自国領土だ」と互いに主張している。中国当局はパキスタン側の立場を支持している。また、中国とインドは、ラダック地方とアルナーチャル・プラデーシュ州の主権をめぐって対立している。今年5月、中印が国境地帯で衝突して以降、両国の軍がラダック地方で対峙を続けている。これまでの衝突で、両軍に死傷者が出たほか、実効支配線周辺で45年ぶりに発砲があった。
インドの政治家や報道機関関係者の多くは、書簡を送り続ける中国大使館は、インドの報道の自由に干渉したと糾弾し、「報道の自由も言論の自由も許さない中国側が、いかに報道の自由と言論の自由を妨害しているかを浮き彫りにした」とした。専門家らは、「インドは民主主義国家である」とし、報道機関が中国側の指示に従うことはないと強調した。
インド外務省のAnurag Srivastava報道官も記者団に、「インドのメディアは、自らが適切だと判断した内容を自由に報道する権利がある」とした。
台湾の吳釗燮外相は23日、ツイッターで「中国の外交官は再びインドのメディアを黙らせようとした。幸いに、Palki Sharma氏とWIONは引き下がらなかった。彼らは称賛に値する。台湾は民主主義国家であり、善の力でもあり、決して黙ってはいられない」と示した。
中国政府による言論や表現の自由に対する弾圧の実態ー日本でも
中国政府が日頃から言論や表現の自由をいかに弾圧しているかという実態を認識することが必要だ。インドの例を見るように、各国にある中国大使館は「協力しなければ中国に関する取材は許さない、記事は書かせない」という圧力をかけているという。日本でも、2017年初めにアパホテルに圧力がかかった。
中国政府が、日本のアパホテルが客室に置いている書籍にかみついた
2017年1月17日、中国外務省の報道官は記者会見で、アパホテルの客室に「南京大虐殺」や「慰安婦強制連行」を否定する内容の書籍が備えられていることを取り上げ、「日本国内の一部勢力は歴史を正視しようとしない。正しい歴史観を国民に教育し、実際の行動でアジアの隣国の信頼を得るよう促す」と述べた。
・アパホテルに言論弾圧、中国政府がこれまでしてきたこと(JBpress 2017年2月1日)
これは、ほんの一部分であり、2020年6月30日に香港国家安全維持法が施行されたが、「日本人が、日本で中国の悪口を言ってはいけない」という法律で、中国が「世界の言論の自由に宣戦布告した」ようだとの見方もある。
香港や北京の日系企業の本社の誰かが日本で中国批判をすると、香港や北京の日系企業が処罰される。つまり、日本で出版される新聞や雑誌、日本で放映されるニュースで中国批判をすると、その会社の中国にいる特派員が被害を受けるらしい。
となると、中国に特派員を置いている外国メディアは、中国批判は一切できなくなり、ますます、中国側の一方的なプロパガンダしか流れず、真偽を判別することが難しくなる。
最近の各国政府、インドやチェコ、スウェーデンなども対中政策をはっきりと打ち出してきている。今後の日本の対応が注目される。