北米YouTubeチャンネルにゲスト出演した中国人女性は、2006年、天津泰達病院を訪ねた際、37人のサウジアラビア人患者が新疆人ドナーからの肝移植を受けていたと話した。アラブ人は宗教上の理由から「ハラール臓器」を必要としており、新彊イスラム教徒のハラール臓器を大量購入しているという。
【大紀元(2020年9月7日)】
2020年1月19日、艾麗(アイリー)という中国人女性は、北米の華人向けYouTubeチャンネルの時事討論番組「路徳時評」にゲスト出演した際、臓器狩り問題について自身の体験を語った。
それによると、アイリーさんは2006年、アラブ人の友人に同伴して天津泰達病院を訪ねた際、37人のサウジアラビア人患者が新疆人ドナーからの肝移植を受けていたという衝撃的な事実を知ったという。
アイリーさんはこの経験から「臓器狩りが現実に行われていることを実感した。以前に法輪功学習者から話を聞いたとき、まったく信じられなかった。しかし、すべてが事実だ。中国共産党は需要に応じて人を殺している」と述べた。
2006年3月17日、アニーさん(仮名)を名乗る中国人女性が大紀元時報(エポックタイムズ)に、「家族の一人は法輪功学習者の臓器摘出に関与している。腎臓、肝臓、角膜、心臓などの重要な臓器は強制的に摘出され高値で販売されていた。外国人購入者も多かった。他の国では、臓器提供者が現れるまでの待ち時間が長い」との情報を寄せた。
同年4月20日、中国遼寧省瀋陽市の看護師だったアニーさんは米ワシントンでの記者会で「瀋陽市蘇家屯区には地下強制収容所があり、そこでは大量の法輪功学習者が拘束されている。私の元夫は蘇家屯血栓病院の外科医で、約2000人の法輪功学習者の角膜を摘出した」とした。
この証言は世界中に衝撃を与えた。中国政府主導の大規模な臓器強制摘出(臓器狩り)の黒幕の存在が初めて明るみに出た。
あれから14年。その間、法輪功学習者など良心の囚人を対象とする臓器狩りに関する目撃証言や証拠、調査報告が次々と浮かび上がっていた。しかし、摘発されたのは氷山の一角にすぎず、多くの内情は依然として不明なままである。この人類史上未曾有の犯罪は今も続いている。
アラブ人37人の「ハラール肝移植」 待機期間1カ月弱
中国新疆のウルムチ市で臓器狩りを経験した亡命中の医師アニワル・トフティ・ブグダ(Enver Tohti Bughda)氏は2019年3月、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)のインタビューで、近年、アラブ人が新疆イスラム教徒の「ハラール臓器」を大量に購入していると語った。また、新疆人を収容する中国の沿海都市の刑務所付近にはいずれも臓器移植センターがあることも明らかになった。
同氏によると、新疆ウイグル人の臓器の最大の買い手はサウジアラビアを中心としたアラブ人で、宗教上の理由から「ハラール臓器」を必要としている。これらの「ハラール臓器」はイスラム教徒からしか取れない。アラブ人は自国で登録し代金を払い、中国へ臓器移植を受けに行くという流れだったという。
大規模な臓器狩り、法輪功学習者への大量虐殺から始まる
1999年7月20日、当時の江沢民国家主席が「3カ月以内に法輪功を消滅させよ」「肉体を消滅させ、名誉を失墜させ、財力を奪え」との方針を定め、全土規模の弾圧政策を始めた。
法輪功(ファルンゴン)は、「真・善・忍」の原則に基づいた佛家修煉法であり、過去21年間、中国共産党から厳しい迫害を受けてきた。中国共産党による法輪功学習者への絶滅政策が始まってから1年ほど経った頃、中国で臓器移植の件数が急増した。中国共産党が法輪功を迫害した時期は、中国の臓器移植産業の拡大と重なっている。
広州中山大学附属第一医院の何曉順副院長は中国の週刊紙「南方週末」のインタビューで「2000年は中国の臓器移植の分岐点だった。2000年、全国の肝移植件数は1999年の10倍にまで増加し、2005年にはさらに3倍に増えた」と語った。2000年以降、中国政府は臓器移植産業を5年おきに発表する政策目標「5カ年計画」に盛り込み、優先的国家発展戦略として位置付けてきた。
国際NGO(非政府組織)「法輪功迫害追跡調査国際組織(WOIPFG)」(略称「追査国際」)の調査によると、中国本土で臓器移植を行っている病院や移植施設の数は1999年以降、急増している。少なくとも865の病院が各臓器の移植部門を新設または急速に拡大し、法輪功学習者からの強制的な臓器収奪に関与した疑いのある医療機関は全国の22省、5つの自治区、4つの直轄市および217の地級市に分布しているという。
臓器狩りの対象、ウイグル族に広がる
中国共産党主導の大規模な臓器狩りの対象は、すでに法輪功学習者から新疆ウイグル人に広がっている。2019年10月、国際的な人権団体「フリーダムハウス」のシニア研究員であるサラ・クック(Sarah Cook)氏は、米ワシントンで行われた大規模集会で、中国共産党は新疆ウイグル人への迫害で、法輪功学習者に使った手段を踏襲したと述べた。
カナダ元国務省アジア太平洋外務担当大臣で国際人権活動家のデービッド・キルガー氏、ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏、人権派弁護士デービッド・マタス氏が2016年6月、米首都ワシントンで共同研究報告書を発表した。それによると、中国の臓器移植件数は年間約6万~10万件で、2000年から2016年にかけての合計件数は150万件超と推定される。これらの臓器の主な供給源は法輪功学習者だという。
7月14日付け法輪功の情報サイト・明慧ネットによると、7月9日に米政府の制裁対象となった新疆ウイグル自治区トップの陳全国・党委員会書記は、2010年1月から2011年8月まで河北省の行政トップ(省長)を務めた際、法輪功学習者迫害に積極的に加担していた。陳氏は新疆のトップに就任後も、地元の法輪功学習者に対し、空前の弾圧と迫害を実行し続けているという。
ロバート・デストロ米国務次官補(民主主義・人権・労働担当)は7月20日、国務省で法輪功学習者の代表5人と会談した。国務省で信教の自由を担当するサム・ブラウンバック大使は電話で会談に参加した。
両氏は、法輪功学習者への迫害について、特に臓器狩りや香港の「国家安全法」が及ぼす法輪功学習者への影響などについて詳細な内容を求め、強い関心を示した。ブラウンバック氏は会談で、中国共産党は法輪功迫害と同様な手法を用いて他の団体を迫害していると述べた。
中国共産党、国外に臓器狩りの罪を輸出
アラブ人臓器移植事件について、ネットユーザーのスライマン・グー(Sulaiman Gu)さんはブログサイトMedium(ミディアム)への投稿で、「犠牲者の臓器は『国際友人』の体に積み込まれたのか。命は『一帯一路』の潤滑油になったのか」とのコメントを寄せた。
中国共産党による臓器狩りの過酷な事実が明るみに出るにつれ、より多くの国や団体、個人がこれに反対する行動を起こした。国際社会の圧力の下で、中国共産党は自らの悪行を隠蔽し続ける一方、美化しようと躍起になっている。同時に「一帯一路」や経済的利益を利用し、臓器狩りの罪を国際社会に輸出しようとしている。
そんな中、スペインは政治や経済分野のみならず臓器移植分野でも中国共産党と緊密な関係を築いている。2019年12月に中国・昆明で開催された第4回中国国際臓器移植・提供会議では、主催団体の一つであるスペイン国際臓器提供・移植(TPM-DTI)財団が、中国政府と「一帯一路」国家臓器提供・移植共同開発提携を締結した。
中国の臓器移植を推進する政府機関「中国臓器移植発展基金会」の黄潔夫理事長は会議で、中国政府の「人類運命共同体」という理念に基づき、一帯一路諸国間で臓器移植の協力を積極的に推進し、「中国(中国共産党)の経験」を世界に広めていくと述べた。
中国共産党は自らの罪を覆い隠すことに腐心する一方で、臓器移植の分野でリーダーシップの世界的権威を誇示しようとしている。中国政府は今年6月下旬、チャーター便を利用し、心臓病を患った中国人実習生・孫玲玲さん(24)を日本の名古屋から帰国させた。
その後、武漢聯合病院の医師が10日以内に孫さんのために4つの心臓を用意し、手術を成功させた。この出来事は中国の国営メディア各紙に、「中国ならではの奇跡」として国内外で大きく取り上げられたが、臓器提供者については一切触れられていない。
ニューヨークに拠点を置く非政府組織(NGO)「中国臓器狩り研究センター」は昨年7月15日、米ワシントンDCの全米記者クラブ(National Press Club)で開かれた記者会見で、91ページにわたる報告書を発表し、中国共産党による臓器狩りが「21世紀で最も恐ろしい人権災害の一つ」であると指摘した。
報告書によると、中国の移植システムは、罪のない人を殺すことで維持されている。中国共産党は、臓器提供・移植システムの影響力を拡大するために、アジア諸国や一帯一路地域と臓器共有協定を結び、国際社会を臓器狩りの罪に引きずり込んでいるという。
英国民衆法廷「宗教的マイノリティが臓器狩りの標的に」
米CNNは1月26日、アラブ人37人が天津で肝移植したとの証言を報じた際、英国で実施された中国臓器狩り問題に関する民衆法廷の判決にも言及し、「宗教的マイノリティが臓器狩りの標的にされている。法輪功学習者とウイグル人が迫害される可能性が最も高く、彼らは何の罪もない良心の囚人である」とした。
人道犯罪について第三者による調査と結果を示す「民衆法廷」の中国臓器狩り問題・最終裁定が2019年6月17日、英ロンドンで開かれた。50人以上の証言と1年に渡る調査の結果、議長は、中国では移植手術の供給のために臓器狩りが行われているとの事実は「避けられない」「相当な規模で行われている」と結論を下した。
民衆法廷の議長を務める元検事総長ジェフリー・ナイス卿(Sir Geoffrey Nice)は、すべての政府や企業などは、共産党政権の中国における、国家的な人道に反する罪を認識するよう呼びかけた。
裁判ではまた、決定的な証拠はないものの、中国当局によって設置された新疆ウイグル自治区「再教育キャンプ」に拘束さていたウイグル族は、臓器狩りの犠牲者になりうる危険性があるとした。米国務省や専門家らは、百万人以上のウイグル人や他の少数民族が思想教育の名目で、収容所に拘禁されていたと推定している。