中国共産党(中共)の「改正反スパイ法」が7月1日から、施行された。これを受け、米国や日本、韓国などの国は自国民に対し、中国への渡航について再考するよう注意喚起している。日本も警戒を呼びかけ、松野博一官房長官は6月30日、在留邦人への注意喚起について言及した。
米国務省は先月30日、中国、香港、マカオへの渡航警告を発令し、現地の法律の恣意的な施行や不当な拘束の危険性があるため、中国への渡航は再考する必要があるとしている。また、香港やマカオへの渡航にも十分な注意が必要だとしている。
在中国の韓国大使館も6月26日、中共の改正反スパイ法で、スパイ行為の範囲が大幅に拡大されたことを公式サイトに掲載し、予期せぬ被害が発生する可能性を警告するとともに、「中国に滞在している国民や中国訪問を予定している国民は注意するよう」促した。
韓国外交部もまた、中共の改正反スパイ法に対抗するための、関連する戦略を多く採用している。
在米の華人作家・李勉映氏
「この新しい反スパイ法の下では、あらゆるところに危険があると思います。あらゆるものが危険であり、危険でないものはないに等しいです。この法律はとても広範で、どんなことでもスパイ行為として犯罪に当てはめることができるのです」
米国在住の作家である李勉映氏は、自由と民主主義は西側諸国における普遍的な価値観であると述べた上で、自由と民主主義のための戦いは正常な政治活動だが、中共の下では、スパイ活動として扱われる可能性があるという。
中国の元人権派弁護士・呉紹平氏は、「反スパイ法」は中共が外国人に対して公布した騒動挑発罪のようなものであり、すべての外国人、外国組織、機関、企業などに適用され、「反スパイ法」の名の下に起訴される可能性があると話している。
中国の元人権派弁護士・呉紹平氏
「中共政権にとって脅威となるような外国との交流があれば、習近平氏はそのような交流は避け、政権の安全を確保したいと考えるでしょう。習氏は権力を握って以来、いわゆる国家の安全を第一に考えてきました。国家安全保障とは、国全体の安全のことではなく、基本的には中共政権の安全のことをいうのです」
呉氏は、中共ウイルスが流行していた3年間で、中共が国民の生活や経済について無関心であることがみてとれたと指摘する。すべては自身が支配する集団の利益を中心に考えているといい、習氏にとって、経済が衰退しようが、中国が国際的に孤立しようがどうでも良いといえる。
6月28日付の韓国紙「朝鮮日報」は、中共が近い将来、より厳しい反スパイ法を施行すると聞いて、中国の一部の都市に住む韓国人駐在員などがパソコンやオフィスに保存されている業務に関するデータや分析資料を削除し始めたと明らかにした。
また、韓国メディア「朝鮮放送」も韓国と中国の関係が悪化していると報じ、今年に入って中国に旅行した韓国人は、パンデミック前に比べて9割減であり、中共が外国人の入国制限を解除した後も、4月の旅行者数は85%減少したという。
これを受け、大韓航空やアシアナ航空も一部路線の運休や減便を余儀なくされている。
呉紹平氏
「中共と米国、日本、韓国などの国々との関係を考えれば、中共はいつでもこれらの国の国民に対して逮捕や取り締まりを実行し、『人質外交』のような役割を果たすことが出来ます。自国民を危険にさらし、自国企業を危険な状態に陥れることを避けたいのであれば、中共政権との交流は減らすべきです」
呉氏はさらに、これらの外国人は、中国に到着すれば、中共の人質になるのだと指摘した。
李勉映氏によれば、中共の目的は政権を維持することであり、経済は二の次であるという。
李勉映氏
「以前は、経済によって政権を維持してきましたが、今はそれではもう維持することができません。景気を回復させ、それを使って自身の能力をアピールすることはもうできないのだと自分でもわかっています。それは、国際社会からも見抜かれています」
李氏は、「中共が経済的にもう打つ手がないと知っているために、彼らはただ西洋の国々と決裂し、それどころか、これを利用して権威を確立し、自分たちがどのように西洋に対抗する勇気があるかを宣伝するだろう。また、米国と西洋がどのようにスパイ活動を通じて国家を転覆しようと試みているかを描くだろう」と指摘した。
日本側も中国反スパイ法について警戒を呼びかけている。松野博一官房長官は6月30日の記者会見で、「在留邦人への注意喚起をしてきており、今後も取り組みを続けていく」と述べた。
外務省は海外安全ホームページで、同法について注意した。国家安全に関わるとみなされた事案は「国家安全部門に長期間の拘束を余儀なくされるのみならず、裁判で有罪となれば懲役などの刑罰を科されるおそれがある」と述べた。
【引用記事】
・NTDジャパン (2023年7月4日)
・大紀元(2023年7月5日)