心臓移植希望の中国人実習生が帰国 「中国臓器ビジネス」を伝えない日本メディア 【連載1】

人権

6月13日心臓移植希望の中国人実習生(名古屋)が中国のチャーター便で入院先の武漢に渡った。日本のメディアは「日本では移植までの待機期間は3年必要だが、中国では1~2カ月で受けることができる」と伝えた。この件について、大紀元は日本のメディアの現状と中国の臓器ビジネスの実態を報道した。

「中国臓器ビジネス」を伝えない日本メディア

愛知県名古屋に技能実習生として来日中に心臓病を患った中国人女性(24)が6月13日、中国のチャーター便で入院先の武漢に渡った。「心臓外科の先進」である武漢の病院で心臓移植を待つという。日本のメディアは「日本では移植までの待機期間は3年必要だが、中国では1~2カ月で受けることができる」と伝えた。しかし、なぜ中国で他国と比較して何倍も早く移植手術を受けることができるのかは、報道していない。

人権団体などは10数年前から、中国は系統的に、良心の囚人を含む収監者から強制的に収奪した臓器を移植用として医療ビジネスに利用していると指摘している。

この中国人女性は、藤田医科大病院で心臓の機能を補助する「体外式補助人工心臓」を装着する手術を受け、治療していた。しかし、器具を付けずに生活するには、心臓移植以外の方法はなく、この女性と家族は帰国して中国で移植手術を待つことを決めた。

なぜ短期間で臓器移植が受けられるのか

この中国人技能実習生の帰国について、地元の中日新聞や東京新聞、NHK、フジテレビ「とくダネ!」などが取り上げている。しかし、これらのメディアの報道で、「短期間で患者が心臓移植を受けられる」という中国側の事情や背景について伝えていない。

東京新聞はまれな心臓病のため藤田医科大病院(愛知県豊明市)で人工心臓を付けて長期入院している中国人女性(24)が、心臓外科の先進医療で有名な中国・武漢の病院で移植手術を受けるため、近く出国できることになった。新型コロナウイルス感染拡大で渡航制限が続く中、懸命の治療と闘病に加え、中国総領事館も奔走し、望みをつないだ。」元記事はこちらへ

NHKは、「渡航制限が続くなか、女性の命を救おうと日中の関係者が国境を越えて協力した」と報道している。東京新聞によれば「心臓外科の先進医療で知られる中国・武漢の病院」に入院し、移植の日を待つという。両国関係者は尽力して難病患者を救うことに奔走したとの側面を強く伝えた。

フジテレビの番組「とくダネ!」に出演した医療ジャーナリスト・伊藤隼也氏は、「武漢は待機期間が非常に短い、数カ月で移植を受けることができる」と説明した。伊藤氏は出演者から「どうしてそこまで短期間で受けられるのか」と質問を受けると「日本との制度の違い、人口が多い、移植に対する考え方も違うのだろう」とコメントした。

しかし、中国のドナー数が移植件数に対して全く合っていないことを、中国側の資料を分析する医療専門家や人権団体などがたびたび指摘している。

中国には、伝統的な身体を重んじる価値観から、自由意志による臓器提供は非常に少ない。米国では、臓器提供の登録者は1億5500万人(2018年)で、米国の成人人口の58%を占める。いっぽう、中国臓器移植開発財団の「臓器提供有志登録ネットワーク(器官捐献志願者登記網)」では、同年3月2日までで、登録寄付を完了した市民は125万8600人。人口15億人の0.08%程度だ。

共産主義犠牲者記念基金(VCMF)の2020年3月12日の報告書によれば、中国衛生部(厚生労働省に相当)は毎年、何万件もの手術を可能とする「豊富な臓器提供」は、市民による「自発的なドナー」と主張しているが、VCMFが中国の病院の医療レポート、内部の演説原稿、中国共産党からの病院への通達、指南書、ウェブサイト掲載情報をまとめると、臓器提供希望者はごくわずかで、移植手術件数と臓器提供数は一致しないという。

さらに、2000年以降の死刑執行の数を最大値で推計したとしても、移植件数は死刑囚の死体の数の数倍は必要だという。中国政府が、実際の死刑執行数を公表していないため、人権団体の推計に基づいている。

「死刑囚が移植用臓器の出所でないならば、調達された臓器は、良心の囚人から摘出されたものという説明が最も妥当だ」とVCMFは指摘した。

どうして「武漢が移植医療の先進」なのか

このほど、名古屋の中国人技能実習生を受け入れた湖北省武漢市は、移植界の成長をけん引してきた都市として知られる。

2015年、武漢で開催された中国臓器移植会議で、中国衛生部元副部長の黄潔夫氏は「湖北と武漢がなければ、中国の臓器移植はない」とまで言い切っている。現地メディア・湖北日報は2019年4月10日、武漢市の同済病院では1日に平均1件以上の移植が行われていると報じた。

しかし、武漢市は自発的な臓器提供は全国でも非常に少ない。同紙によると、武漢市では年間で1600体の臓器提供を必要としており、そのうち同済病院だけでも、500体は必要だったというが、武漢市全体で提供されたドナーの総数は300体にとどまる。移植医療では、ドナーひとり当たりで適合者が見つかる確率は、移植希望者20人のうち1人程度とされている。

少ないドナーにもかかわらず、武漢市の同済病院1カ所だけでも、毎日移植手術が施行可能となっている。この数字の不一致から、合法的で自由意志に基づく提供ではない臓器が利用されている可能性が高いと考えられる。

1年あまりかけて多数の証拠を検証し、人道犯罪を裁量するロンドン民衆法廷は、2019年6月、良心の囚人から強制収奪するという非人道的な中国の「臓器ビジネス」は相当な規模で行われ、現在も続いているとの最終裁定を下した。

中国共産党は組織的に「良心の囚人」つまり無実の罪で収監されている信仰者や少数民族、政治異見者から、臓器を強制摘出しているとの疑惑が消えない。

中国・北京青年日報は3月1日、江蘇省無錫市で「世界で初めて新型コロナウイルス患者への両肺移植を成功させた」と伝えた。臓器はわずか5日で提供された。また、ドナー情報が少なく「新疆ウイグル人か、法輪功学習者か、香港抗議者か」などのうわさがネットで飛び交った。

日本や米国では通常、両肺移植は十数年の待機期間を必要とする。さらに、健康な両肺を持つ人が「タイミングよく」脳死して、血液とHLA(ヒト白血球抗原)のマッチングテストが適合した臓器が、5日間という短時間で提供されるというのは極めて低い確率になる。

「米国のせい」?

昨年末に武漢市で発生した中共ウイルス(新型コロナウイルス)の流行について、中国外交部の趙立堅報道官が根拠を示さずに「ウイルスは米軍が持ち込んだ」との米国陰謀説を広げ、米国をはじめ世界各国関係者を驚かせた。

こうした中国共産党による極端な責任転嫁は、臓器ビジネスでも行われている。

2017年、共産党機関紙・環球時報のインタビューに応じた「中国臓器移植界の父」と呼ばれる中国衛生部元副部長・黄潔夫氏は、米国について「世界で最も臓器売買が横行している国」と非難した。黄氏によれば、2016年には「280人の外国人患者が臓器移植のため米国に渡った」という。

黄氏はまた、中国が囚人臓器を収奪しているとの疑惑について「ナンセンスだ」と一貫して否定している。

医師ら専門家による医療倫理団体「臓器強制摘出に反対する医師の会(DAFOH)」は、これに反論した。DAFOHは声明で、米国には中国と異なり、透明性のある医療報告システムがあると前置きし、「中国の臓器移植トップの役人が、米国での移植医療についてウソを広げ、中国の恐るべき臓器収集から国際的な注目をそらそうとしている」と書いた。

さらに、DAFOH代表のトルステン・トレイ博士は次のように述べている。「もし、中国では良心の囚人が臓器の供給源として使われているという主張が『ナンセンス』であるなら、なぜ中国の収容所において独立した国際的な調査を許可しないのか」と指摘している。

日本の藤田医科大学病院と連携を図った協和医院の董念国教授は、女性の容体は安定していて「近い将来、移植を受けることができる」とその予定を同紙に語った。

【引用元】https://www.epochtimes.jp/p/2020/06/58432.html

次の【連載2】「武漢心臓移植、中国大使館ツイッターへの反論」では、移植手術後の彼女の様子を中国駐日大使館がツイートした内容とその反響について語る。

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