大紀元(2020年11月16日)によると、日本、中国、韓国とASEAN各国、そしてオーストラリアとニュージーランドの15カ国は11月15日、東アジア包括的経済連携協定(RCEP)に署名した。地政学者らは、知的財産窃盗やルール順守を怠る中国共産党(中共)の影響が強い多国間協定になると懸念している。
世界の人口および国内総生産の約3割を占めているRCEP加盟15カ国は、世界最大の貿易圏を形成することになる。
2012年に最初に提案されたRCEPは、発効後20年以内に、署名国間の輸入品に対する関税の約90%を撤廃することになっている。さらに、知的財産権、電気通信、金融サービス、電子商取引、専門サービスに関するルールが確立している。
RCEPの構想は、2006年4月7日に日本の二階俊博経済産業大臣(当時)が掲げた「二階イニシアティブ」(東アジアEPA)が土台になったといわれている。
インドの地政学研究者であるBrahma Chellaney氏はソーシャルサイトで、「インドが参加しないということは、(RCEPは)中国が影響力を持つことを意味する。米中経済関係が悪化するなか、中国はRCEPを地域諸国との貿易拡大や地域貿易ルールの策定に利用するだろう」と書いた。
RCEPは、中国が初めて参加する多国間自由貿易協定(FTA)となり、人口で中国と肩を並べるインドは、国内生産へのダメージを考慮し参加を見送った。
Chellaney氏が公式サイトで発表した記事によると、インドの対中貿易赤字は国内総生産(GDP)で見れば米国の対中貿易赤字よりも深刻で、2018年はインドのGDP2.2%を占めたという。
グローバルな多国間経済圏は共産主義体制の中国がメリットを得ることが多い。米経済学者でトランプ政権ホワイトハウス通商会議委員長を務めるピーター・ナバロ氏は、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟してから、自動車、コンピュータ、船舶などあらゆる国際市場で中国の占有率が高まり、各国の製造業や雇用に打撃を与えたとしている。
中国共産党がグローバル経済を求める姿勢は、李克強首相の発言からも汲み取れる。「RCEPの調印は東アジア地域協力の画期的な成果であるだけでなく、多国間主義と自由貿易の勝利でもある」と署名式で李首相は述べた。
中国共産党の機関紙・環球時報は11月14日「RCEPは、西太平洋における米国覇権に終止符を打つだろう」という香港城市大学王江雨教授の記事を掲載。米トランプ政権の中国封じ込めで、地政学的イニシアチブでもある「インド太平洋戦略」を批判し、アジアおよび西太平洋の米国不在の経済圏の成立を支持した。
国際研究機関・欧州大学院(European University Institute)は2020年2月、中国の貿易と投資に関する報告で、RCEPは、WTOのように、世界レベルで国際的な法の支配が崩れることを予防できるような国際司法に基づく審議システムを提供していないと指摘している。
欧州大学院はさらに、米国に取って代わり、世界覇権の野心のある権威主義的な中国は、二国間協定や一帯一路(BRI)、そしてRCEPなど「中国中心のユーラシア貿易システム」を構築して、「多国間協定のルール・メーカーになる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。