ドキュメンタリー映画『偽の儒教』の監督に聞くー「孔子学院」はなぜ問題?

時事

高度な中国語教育と文化を提供することを謳い、全世界の大学から小学校までの教育機関に設置されている孔子学院。しかし一方では中国共産党の対外宣伝の役割を果たしており、現在、欧米諸国など様々な国で、次々と廃止にする教育機関が増えてきた。このような中、日本では2019年に山梨学院大学が孔子学院を新設しており、世界の動きとは逆行している。それは一体どうしてなのか?

インタビュー「孔子学院」はなぜ問題?映画『偽の儒教』監督に聞く

インタビューの相手は、ドリス・リュー氏。中国系カナダ人で現在トロントに在住、15年間カナダで生活。数年前に「偽の儒教(In the name of Confucius)」というドキュメンタリー映画を制作。中国政府が数十億ドルを投じて世界中に設置した中国語教育プログラム・孔子学院の実態を暴露した初めての映画という。

孔子学院は中国共産党の対外宣伝の役割を果たす機関であるともいわれ、2004年11月に韓国で発足して以来、16年近くの間、常に議論の的となっている。孔子学院の授業では、共産主義や毛沢東や党を称賛しているが、チベットや台湾について議論することが禁じられているからだ。

そしてついに、2013年2月カナダの名門・マクマスター大学は5年間設置していた孔子学院を閉鎖すると発表し、孔子学院を閉鎖した世界初の大学として知られている。

その後から孔子学院をめぐる論争はさらにヒートアップし、その共産主義的なプロパガンダから欧米大学の自由への干渉、共産党に不都合な話題の禁止、さらにスパイ活動までが発覚した。

孔子学院を受け入れた国の国家安全保障への懸念が高まっている。また同学院が中国で中国人教師を採用する際に、法輪功学習者への差別など人権侵害問題も明るみに出て、本当に様々な議論を引き起こしている。

欧米諸国は2年以上前から孔子学院に注意を向けていて、孔子学院を排除するためのいくつかの法律を成立させている。たとえば、米国では政府は大学に対して直接「閉鎖」を命じることはできないが、法律を通じて大学側に閉鎖させるように仕向けている。

政府が「孔子学院を設置している大学は連邦政府の補助金を申請することができない」という法律を作った。2018年に米国でこの法律が可決され、すでに40以上の孔子学院が閉鎖された。実際、米国だけでなく、オーストラリアやドイツ、スウェーデンなどの国でも「孔子学院に対する審査や見直し」がなされていて、すでに4 院も閉鎖されている。

ところが、日本ではこの問題についての議論は比較的に少く、まだあまり注目されていないような感じだ。米国やヨーロッパではすでに続々と孔子学院を閉鎖しているのに対して、日本では2019年に山梨学院大学が孔子学院を新設している。

世界の流れに逆らってまで新設するのはきっとその提携計画にも関係していると考えられる。なぜ、孔子学院が中共のプロパガンダだとわかっているにも関わらず西側はそれでも受け入れているのか? そのメリットは一体何なのか?

簡単に言えば日本の大学が「中国語教育コースを開設したい」といえば大学は一銭もかからず資金、教科書そして中国人教師まで何もかも全て中国政府から提供されるという。

孔子学院の教師は中国政府が大学や社会から採用し政治的考えなどが厳しく審査され、訓練を受けた後に海外の孔子学院へ派遣される。もちろん中国語の授業が上手な先生ばかりだ。

欧米の大学にとって費用がかからず質の高い中国語教育プログラムを利用することができるということが、一つ目のメリットで最も直接的なメリットでもある。孔子学院は中国政府によって積極的に推進されているため、非常に控えめに見積もっても、中国政府は2014年から今までに同学院の運営に20億ドル以上を費やしていると言われている。

もちろん孔子学院の開設となれば、中国政府とは良好な関係を築く必要がある。
今では日本を含め多くの中国人留学生が海外に留学していて、つまり中国政府と良好な関係を保てばこれらの欧米大学にとっても、中国人留学生を募集する上で、非常に有利になり、中国人留学生が増えれば学費など多くの収入を得られる。そのことも間接的な利点となっている。

そのため、欧米の大学や社会はこれらのメリットや甘い汁に目がくらんでしまい、開設に伴う人権、学術自由、イデオロギー、外国勢力からの干渉などの脅威には眼をつぶってきた。

それでは、なぜ、日本の大学が欧米の閉鎖ブームに逆行して開設に踏み切ったかという事だが、先ほど話したメリットの他、人々のこの問題に対する認識の欠如があると思われる。おそらく孔子学院が日本社会にもたらす「脅威」について、日本の政治家からマスコミ、教育部門そして一般国民に至るまでの人々はまだ十分認識していないのか、もしくは認識していたとしても抗議する声がまだ小さいのかもしれない。

米国のシンクタンクである戦略国際問題研究所が発表した「日本に対する中国の影響力について」の報告書は、2018年から2019年の間に40人の専門家に対しインタビューを行ったものだが、一部には「日本は中国の浸透工作に対する警戒心が欠如している」という意見もあったという。

孔子学院の存在やそれに対する警戒心を呼び覚ますために、ドリス氏は3年かけてこのドキュメンタリー映画を制作した。映画の内容や制作中の苦労話・エピソードなどについては、動画の続きをどうぞ・・