米国務省、ヒラリー氏の電子メールを公開ー王立軍氏亡命を拒否した経緯

時事
2012年2月6日、中国四川省成都市の米国総領事館に駆け込んだ、王立軍・元重慶市副市長(ネット写真)

2020年10月10日、米国務省はトランプ大統領の指示を受けて、ヒラリー・クリントン元国務長官が削除した3万件余りの私的電子メールを公開した。この中で、2012年2月、重慶市の王立軍・副市長(当時)による米国総領事館駆け込み事件に関する内容があり、オバマ政権が王氏の亡命を拒否した理由は、2012年11月に中国最高指導者に就任する予定の習近平氏との間で「良好な関係を築きたい」からだったという。

王立軍氏亡命巡るオバマ前政権の対応

大紀元(2020年10月15日)によると、公開されたヒラリー氏のメールの中には王立軍氏による米国総領事館駆け込み事件に関する内容があった。王立軍氏は、 四川省重慶市元トップ薄熙来の側近で、薄が主導したマフィア取り締まり運動で主要責任者を務めた。2012年2月6日、王氏は突然、同省成都市にある米国総領事館に駆け込んだ。

一部の報道では、当時、女装した王氏は米国総領事館に汚職、殺人、権力闘争、クーデターなど中国共産党内の機密情報の資料を提出した。王氏の亡命を知った薄熙来は同氏の身柄を奪還するため、武装警察を派遣し米国総領事館を囲んだという。

当時、米国の駐中国大使ゲイリー・フェイ・ロック氏は、米国務省に報告し、王立軍氏の亡命を認めるよう要請した。しかし、2月7日、オバマ政権から亡命を許可されなかった王氏は米国総領事館から出て、中国国家安全部(省)の職員に連行された。中国側に身柄を渡された王立軍氏は、2012年9月、中国・四川省成都市の中級人民法院(地裁)から、職権乱用や収賄などの罪で禁錮15年の刑を言い渡された。

その後、中国当局は薄熙来、薄熙来の妻などを次々と拘束し、英国人実業家を殺害した殺人罪や収賄罪、職権乱用罪などで有罪判決を言い渡した。

米国務省が公開したヒラリー・クリントン氏の電子メールによると、オバマ政権が王氏の亡命を拒否した理由は、2012年11月に中国最高指導者に就任する予定の習近平氏との間で「良好な関係を築きたい」からだったという。同年2月14日、訪米した習近平氏は、ホワイトハウスでオバマ前大統領と会談した。

クリントン氏の電子メールは、オバマ前大統領が「習近平氏の来訪を重要視していた」「中国側が米国と良好な関係を築こうとしている。中国(国民)がより開放的な新しい指導部を迎えようとしている中、(王立軍氏の亡命で)苦しい立場に陥っている中国側から短期的な利益を得るのは賢明ではない」とした。メールによれば、米国務省は自ら中国指導部に連絡し、王氏の亡命について話したという。

クリントン氏の電子メールによると、当時オバマ政権は、王氏の米国総領事館駆け込みを中国の内政問題として捉えていたという。習近平氏が最高指導者となれば、中国当局がさらに市場を開放する可能性があるため、緊密な関係を作らなければならないと判断した。

米ニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」は2012年2月14日、米政府高官の話を引用し、王立軍氏が米国総領事館に駆け込んだ後、薄熙来や周永康が習近平氏に対してクーデターを企んでいることを米側に提供したと報道した。一方、当時、大紀元が独自に入手した情報では、王氏は、中国当局が法輪功学習者を対象にした強制臓器収奪に関する情報も提供したという。

【参考動画】王立軍の上司の重慶市元トップ薄熙来と「法輪功」迫害について
NTDTVジャパン(2013年8月28日)

【参考記事】
・大紀元「王立軍事件の内幕 米政府が王立軍亡命を拒否した理由=米メディア」(2016年9月12日)