中国の王毅外相は8日、情報セキュリティーに関する国際基準の設定を提案した。しかし、米国は対中包囲網構築に動いており、インターネット二極化の概念が現実化のもよう。豪州の報道機関などは14日、日本、欧米の政治家ら約240万人分の個人情報を、中国国有企業グループが収集していたと明らかにした。
中国がデータ保護の国際ルールを提唱
Bloomberg(2020年9月12日)によると、中国の王毅国務委員兼外相は8日、情報セキュリティーに関する国際基準の設定を提案した。外国政府による国内保存データの取得を防ぐことを目的とした提案などを打ち出し、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」や「ウィーチャット(微信)」が慎重に扱うべき利用者情報を中国当局と共有しているとの米トランプ政権の批判に対抗する。
提案はデジタル分野で世界基準を設定するという中国の取り組みの一環だ。王氏は先週の20カ国・地域(G20)外相会議で、デジタル領域の国際基準を中国主導で定める試みの一環として、独自の情報セキュリティー構想を説明していたが、8日発表された声明によると、提案には各企業の海外事業が取得したデータへの政府によるアクセスを禁じることも盛り込まれた・・・。
“ネット二極化の概念”浮き彫り
一方、米国は同盟国との間で、中国の先端技術排除に向けた対中包囲網構築に動いている。ティックトックやウィーチャットに対する米政府の動きは、米中対立が深まる中でインターネット二極化の概念がいかに現実のものとなっているのかを浮き彫りにしている。
トランプ政権は対中政策で、中国がユーザーデータにアクセスできないようにする「クリーン・ネットワーク」を構築しようとしている。米国は中国の法律が企業に対し、中国当局との情報共有を強いていると主張。ポンペオ米国務長官は8月、米国が中国を信頼できるかどうかとの質問に対し、信頼できないと強調していた。
中国の国有企業、240万人分の個人情報収集…「脅迫の標的探しに使われた可能性」
読売新聞(2020年9月14日)【ジャカルタ=一言剛之】
豪州や英国の報道機関などは14日、豪州や日本、欧米の政治家や軍事関係者ら約240万人分の人物情報を、中国の国有企業グループが収集していたとの調査結果を明らかにした。SNSへの書き込みに加え、銀行の与信情報など非合法に入手したとみられる情報も含まれ、工作活動に利用された疑いがあるとしている。
豪フィナンシャル・レビュー紙などによると、情報を収集していたのは中国の国有企業傘下の「中国振華電子集団」グループ。内部関係者からデータの提供を受け、豪サイバーセキュリティー企業と報道機関、学者らが分析した。
情報収集の対象は、米海軍の幹部やミサイル専門家、豪州の現役大使、英王室の一員など多岐に及んでいた。大半は、メディアの報道などインターネットで集められた公開情報だが、就職時の履歴書などハッキングなどで盗まれたとみられる情報も含まれているという。
汚職などの犯罪歴も集められ、データの解析に当たった豪チャールズ・スタート大のクライブ・ハミルトン教授は「脅迫する標的を探すのに使われた可能性がある」と指摘している。
読売新聞が入手した日本人関連リストによると、安倍首相ら558人の政治家や企業経営者らが「重要公人」として記載されていた。これとは別に、逮捕された暴力団組員ら358人もリスト化されていた。