NEWSポストセブン(2020年7月18日)によると、中国内モンゴル自治区の通遼市政府は9月1日から始まる小中学校の新学期から、これまでは中国語とモンゴル語の両方で教えていた中国共産党理論や道徳、中国の歴史、政治などの科目を中国語だけで教え、今後はモンゴル語での教育は行わないことを通知していたという。
400万人以上のモンゴル民族が暮らす内モンゴル自治区で中国当局の出した通達の衝撃が、SNSなどを通じて世界各地のモンゴル人に広まっている。抗議の意を表したプラカードや横断幕を掲げた画像などがSNSやインターネットで次々と拡散された。習近平氏が内モンゴルを訪問した時の映像が公開され「嘘つき。モンゴルの伝統、文化、遺産を守ると言って今日9月1日モンゴル語教育廃止法を執行。ウイグル人と同様な弾圧始まる」とツイートされた。
「双語教学」の大義名分のもと、これまで二つの言語を用いながらモンゴル民族が守ってきたモンゴル語への事実上の廃止宣告は、中国が進めるモンゴル文化抹殺にさらに拍車を掛けるものといえる。
中国共産党によるモンゴル統治に反対し、内モンゴル自治区を「南モンゴル」と呼んで、同自治区の独立を目指している「南モンゴル・クリルタイ(議会)」(本部・ドイツ)のシ・ヘミン議長は米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」の取材に回答。「漢人(中国人)は中国語で学ぶ権利があり、モンゴル人はモンゴル語で学ぶ権利がある。中国共産党は我々の権利を奪おうとしている。また、彼らはモンゴル人を文化的に虐殺しようとしているが、これは少数民族と漢族の56民族の協和を謳った中華人民共和国憲法に反している」と指摘している。
中国では新疆ウイグル自治区やチベット自治区でも小中学校などの教育機関での少数民族の言語の使用を禁止し、中国語だけでの授業を実施するなど、2012年の習近平政権発足後、少数民族の伝統・文化をないがしろにする傾向が強まっている。
【参考資料】
①NEWSポストセブン「中国内モンゴル自治区がモンゴル語教育廃止、抗議広がる」(2020年7月18日)
②世界日報(2020年8月24日))「中国当局 モンゴル語教育廃止へ」