【NTDTV (2020年7月31日)】
中国では27の省が洪水に見舞われ、甚大な被害を受けていますが、党メデイアは洪水を美化し、長江2号洪水を「愛くるしい」と表現し、「洪水災害は悪いものではない」「まるで桃源郷のようだ」と報じています。これらの表現はネットユーザーの怒りを買っています。
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「上流の河南省と下流の江蘇省を守るために私たち安徽省人が支払った代償はあまりにも大きい。災害が去った後、もし安徽省人があなた方の家にやってきて食べ物が欲しいと言ったら、どうか食べさせてやってほしい」
これは洪水で家が水没した、ある安徽省住民の叫びです。しかし中共メディアは洪水を「愛くるしい」ものとして報じています。
長江の2回目の洪水ピークが武漢を通過する際、新華網が掲載した「洪水文」が民衆の怒りをさらにあおりました。
文中では「長江2号洪水」が擬人化され、幼児口調で次のように記されていました。
「もし君が『1号洪水』がぼくよりすごいと思っているなら
それは間違いだよ
ないしょだよ
二日前にぼくは出発したんだ
三峡ダムへ入る水はすごい速さで増えていった
…
だけど三峡ダムはぼくを遊びに行かせてはくれないんだ
…
でもぼくは逃げ出してきた
…
きみたちを怖がらせるつもりはないんだ
…
ぼくはあまり機嫌がよくないから
気を付けないと山津波や冠水が起きるかもしれないよ」
あるネットユーザーは「知的障碍者の口調をまねて数万人の命や財産に危険が及ぶことを知らせるなんて。こんなことをするのは中共しかいない」と怒りをあらわにし、別のネットユーザーは「報告します。私は無数の家屋や農地、工場を冠水させたほか人も溺死させ、数えきれないくらいの人を路頭に迷わせました。ですが私は長江2号洪水です。私はとても愛くるしいです」と皮肉を込めて投稿しています。
中国在住の余さん
「これを読んで本当に腹が立った。あの洪水のせいで庶民は苦しんでいる。災難については一言も伝えない。それなのにかわいらしさを装うなんて。あの洪水を冗談にするなんて。だから中国のメディアはすべて当局の装飾品だ。彼らのために美しい嘘をついて飾り立てる。まともなメディアではない」
多くのネットユーザーは党メディアが宣伝に失敗したと考えています。「あの火神山病院の建設工事でネットユーザーが工事車両に名前を付けたのと同じように、悲劇の娯楽化は一種の宣伝手段だ」「このように低俗で俗悪なうえ、知性がなく頭の足りない報道が、国家レベルのメディアに頻繁に登場する。党の宣伝能力がここ数年で急激に低下していることを示している」
今回最も深刻な被害が発生した地域の一つ、江西省鄱陽県(はようけん)でも党メディアは宣伝に失敗しました。この地域では堤防が決壊したため、多くの村落が海と化し、約2万世帯が被災したうえ、約5万軒の家屋と約10アールの農地が冠水しました。
しかし、鄱陽県共産党委員会が主催する鄱陽新聞社の公式アカウント「鄱陽発布」には「洪水災害は完全に悪いものだとは言えない」と投稿されました。「洪水は大きな被害をもたらした一方で再生と洪水に抵抗するという偉大な精神をもたらした」「天と地と闘うための闘志を高揚させた」としたうえ、「洪水の悪はすべてが悪ではない。善もまた生み出した。洪水が完全に悪いものだと言えるだろうか」と疑問を投げかけています。
この投稿は全国のネットユーザーから強烈な「マイナス評価」を浴びました。
安徽省在住の靳さん
「庶民を騙そうとしているに違いない。中国のメディアは見るに堪えない。彼らは共産党の統治のため、この政権を維持するためにできることをしている。仕方がない!私は中国人だ。この国で生きていくしかない。嫌だがどうしようもない。文句を言えば彼らは国内安全保衛支隊を動かして嫌がらせをしてくる」
安徽省柘皋鎮(しゃこうちん)でも深刻な被害が発生しました。
安徽省柘皋鎮の住民
「私の村の西側は水に沈んだ。浸水したこの家を見てみろ。うちのトイレも浸水した。今回は91年と98年の時を上回っている。98年の時は、水はここまで来ていなかった」
一夜ですべてをなくしてしまった商店の店主が泣き崩れているとき、「人民網」安徽チャンネルは「柘皋鎮の共産党委員会は常に民衆の生命と財産の安全を守ることを第一とし、全力を挙げて防災と災害救助の各活動を実施している」と報じ、同時にウェイボーは安徽省巣湖(そうこ)の災害状況を意図的に縮小し、安徽省の大量のネットユーザーの反発を招きました。
27の省を襲った今年の洪水災害の中で、党メディアは災害の娯楽化という宣伝手段を何度も採っています。湖北省襄陽市(じょうようし)漢江の洪水を風景画のように撮影し、「めったに見ることのできない景観だ」と称えたほか、鳳凰古城の水害を「桃源郷にいるようだ」と報じました。
また、浙江省新安江ダムで7月上旬にやむなく放水が行われ、下流の民衆に危害が及んだときにも党メディアの環球時報は、「新安江ダムから流れてきたのは洪水ではなく、550mlが2元〜3元のミネラルウォーター「農夫山泉」と、1キロ数百元の千島湖(せんとうこ)特産の魚「コクレン」だ。下流の民衆は魚を捕まえるのに夢中になり、大漁だった」と報じています。
あるユーチューブ自主メディアは、「政府メディアは『南方の水害地域は桃源郷のようで、洪水にはポジティブなエネルギーにあふれている』と報じているが、家が流され人が死んだのは別の国の話か?」と疑問を投げかけています。
【引用元】https://www.ntdtv.jp/2020/07/44509/