中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)が日本の私立・県立の中学校、高校で情報技術の講義を行っている。中国専門家は、米欧で定着するネガティブな印象を払拭するために、日本の教育現場で良い印象を与えようと試みているのではないかと指摘する。
ファーウェイは、若い世代のICT(情報通信技術)人材を育成する「Seeds for the future(未来の種)」と呼ぶ国際的なCSR(企業の社会貢献)プログラムを、同社事業を展開する国で大学生向けに実施している。公式ホームページによればプログラムは2008年に開始され、世界130カ国、合計8774人の学生が参加している。
いっぽう日本では2020年以降から福岡や東京、和歌山など10以上の私立・県立の中学校、高校で講義が対面式・オンライン式で行われている。「未来の種JAPAN」と名付けられ、講演者は華為日本株式会社の幹部社員や実業家などが務める。朝日新聞社と共同開催するケースもある。
エポックタイムズは、ファーウェイの講義を行った学校法人に取材を申し入れたが記事掲載までに回答は得られなかった。
授業内容は、日本の地方政策や課題、そして国連のアジェンダであるSDGsに焦点を当てたものが多い。たとえば少子高齢化・労働者不足対策、伝統産業・技術継承対策、インバウンドツーリズム、空き家対策、ICT活用によるSDGsの実現、太陽光パネル設置によるカーボンニュートラルシティ推進など。
「日本の警戒不足に驚く」
ファーウェイの創業者・任正非氏は中国軍の工兵部隊に所属していた経歴を持ち、同社も中国軍とのつながりが強い。補助金や支援を受けて資本を拡大した経緯がある。2019年に任氏の実娘で最高財務責任者(CFO)兼副会長の孟晩舟氏を米当局が逮捕・起訴した際も、カナダ人を人質的に拘禁するなど党をあげて釈放に働きかけた。
米国はトランプ政権以降、電子通信詐欺やイラン制裁法違反、技術窃盗などを追及してきた。5G関連製品など同社の通信機器は情報セキュリティリスクが高いとして、国内州知事や海外同志国へファーウェイ排除を呼びかけた。
世界的なファーウェイ排除が進むなか、「日本の警戒不足には非常に驚くものがある」と、中国や台湾問題に詳しい時事評論家・唐浩氏は述べた。
ファーウェイの5G通信関連製品は欧米国家やアフリカなどで、ユーザー情報を収集して中国境内へ送ることのできるバックドアが仕掛けられていると実証されている。国家の機密情報の漏洩防止、中国共産党によるハッキング部隊を通じたサイバー攻撃を防ぐために、世界的にファーウェイのネットワークや設備を禁止する国が増えている。
「こうしたなか、日本は警戒が明らかに足りない。もしこれらのサービスのインフラがファーウェイ設備ならば、中共当局はファーウェイを通じて、個人情報や健康記録、生活習慣、企業の受注、パラメータ設定など、日本の企業や国民のあらゆる情報を入手できるようになる。日本は北京の手のなかにある『ガラス張りの家』になりかねない」
いっぽう日本を含む世界各地の教育現場に出資するのはなぜか。「ブランドイメージの向上と、将来的な人材を発掘・育成を狙っているのではないか」と唐浩氏は分析する。
「日本のハイテク研究開発の実力は中国よりも強く、また、日本には中国にないハイエンド技術を多く持つ。ファーウェイは研究開発力と競争力を持つ未来の人材を将来的に自分たちで使えるよう、大学から発掘したいという狙いがあるのかもしれない」と唐浩氏は語った。
また、自社の主力製品である遠隔医療やIoT(モノのインターネット)など、テクノロジーと生活を融合した未来のライフスタイルの概念を日本の若者にアピールして、ブランドの宣伝や、将来の日本での市場拡大に向けた下準備ではないかと分析した。
唐浩氏は、中国共産党がファーウェイの5Gネットワークを使って日本の自衛隊基地や発電所などさまざまなインフラを麻痺させたり、国家の防衛能力を奪うような戦略もできるだろうと指摘。
「ファーウェイは中国軍と切っても切れない深いつながりがある。ファーウェイは中国軍の隠れ蓑で、海外に浸透し、拡張するフロント企業である可能性が非常に高い」と警戒するよう呼びかけた。
【引用記事】大紀元(2023年3月30日)