カナダ連邦裁判所は1月、中国国務院僑務弁公室の元幹部と妻の移民申請を却下した移民局の判断は合法だとする判決を下し、僑務弁公室が「カナダの利益に反する」諜報活動に携わっていると判断した。一方、中国共産党のスパイやプロパガンダの機関と指摘されている「孔子学院」について、米ニューヨーク州立大学は各キャンパスの孔子学院を閉鎖したという。
僑務弁公室は、中国国務院の海外の華僑・華人対策を担当する部署である。
元幹部は夫婦で移民申請を行ったが、カナダ移民局は、元幹部が僑務弁公室に20年間勤務し高級幹部だったことを理由に申請を却下した。
カナダの法律では、スパイ活動に関与しカナダの国益に損害をもたらす組織のメンバーの移民を禁止している。移民局は、僑務弁公室はこの法律の規制対象に該当すると判断した。
元幹部夫婦は移民局の判断に不服があるとして、カナダ連邦裁判所に司法判断を求めた。
バネッサ・ロチェスター連邦判事は、僑務弁公室が「カナダの利益に反する」スパイ活動に従事しているという移民局の見識には十分な根拠があるとして、移民局の判断を支持する裁決を下した。
カナダ紙ナショナル・ポストによると、駐中国カナダ元外交官で、マクドナルド・ローリエ研究所(MLI)の上級研究員であるチャールズ・バートン氏は、僑務弁公室は長年、カナダで中国系市民を監視するなど強い影響力を発揮してきたが、カナダ当局はこの問題に触れることはなかったとして連邦裁判所の判決を評価した。
同氏の話では、カナダ安全情報局(CSIS)も連邦警察もこれまでに、中国共産党組織の干渉活動について連邦政府に報告してきたが、政治家は両国の貿易関係へのマイナスの影響を恐れて、情報を抑え込んでいた。
トロントの中国民主化団体の元幹部・関卓中氏は、連邦裁判所の判決を歓迎した。
関氏はナショナル・ポスト紙の取材に対して、中国共産党がカナダで反体制派を抑圧しスパイ活動を繰り広げているという事実から「これ以上目をそらしてはならない」と語った。
3年前、僑務弁公室は海外でのプロパガンダを統括する中共中央統一戦線工作部に統合された。 オーストラリアの中国問題専門家アレックス・ジョスク氏は、共産党政権が海外で影響力を拡大するために「より多くの資源」を投入していることを意味すると分析した。
カナダ連邦裁判所が、中国国務院僑務弁公室について「カナダの利益に反する」諜報活動に携わっていると判断した意義は大きい。
一方、米国や欧州などでは「孔子学院は中国共産党のスパイやプロパガンダ(政治宣伝)の機関」と指摘され、2013年から、海外で孔子学院の閉鎖が始まった。その中で、カナダのマクマスター大学の孔子学院は世界で初めて閉鎖された孔子学院となった。
米ニューヨーク州立大学、各キャンパスの孔子学院を閉鎖
大紀元によると、米国のニューヨーク州立大学(SUNY)が2021年12月、各キャンパスにある孔子学院を閉鎖したことがわかったと、ニューヨーク州の地元紙タイムズ・ユニオンが2月27日に報じたという。
報道によると、SUNYは昨年末、ナッソー・コミュニティ・カレッジ(Nassau Community College)、ストーニーブルック校(Stony Brook University)、ビンガムトン校(Binghamton University)を含む各キャンパス内の孔子学院を静かに閉鎖した。SUNYが事実上、ニューヨーク州内にあるすべてのキャンパスで設置されていた孔子学院を閉鎖したこととなった。
SUNYは州内に64のキャンパスを持つ。
ニューヨーク州立大学オールバニー校(The University at Albany)の広報担当者はタイムズ・ユニオン紙に対して、孔子学院との提携関係を続ければ、「連邦政府から研究資金を受け取ることができなくなる」と話した。
米国では近年、国会議員やシンクタンクが、孔子学院は中国当局の対外プロパガンダ宣伝機関で、中国共産党政権の主張を展開していると批判を強めてきた。2020年、トランプ前政権は孔子学院を「外国使節団」に指定した。
全米学識者協会(NAS)の統計によると、米国内の孔子学院は17年の110校から現在は10数校まで激減した。
18年の時点で、世界各国で設置された孔子学院の数は500以上あった。
過去1年間、南カリフォルニア大学とジョージ・ワシントン大学が相次いでキャンパス内の孔子学院を閉鎖した。
【引用記事】
・大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2022/02/87293.html
・大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2022/03/87664.html
文科相、孔子学院の情報公開を設置大学に促す
2021年5月13日、萩生田光一文科相(当時)は参院文教科学委員会で自民党の有村治子氏の質問に答弁し、孔子学院がある大学に対し「大学の主体的な研究活動が妨げられることがないよう組織運営や教育研究内容などの透明性を高めるべく情報公開を促していきたい」と表明した。
あわせて「同盟国である米国、自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を持つ欧州の国々からも廃止や情報公開を求める懸念の声が高まっている」と指摘。「運営の透明性が求められている」との認識を示した。
孔子学院は日本国内では早稲田大や立命館大など14の大学にあるが、文科省によると、海外の教育機関が日本の大学と連携する際は、国の認可を必要とせず、大学側に教育プログラムの提供などを自由に行えるという。
【引用記事】
・産経新聞 https://www.sankei.com/politics/news/210513/plt2105130007-n1.html