オーストラリア上下院、人権侵害制裁法案可決 対中共制裁で足並みをそろえるも日本は慎重論

人権
オーストラリアの首都・キャンベラにある連邦議会 (Photo by Rohan Thomson/Getty Images)

12月1日、オーストラリア議会上院は、深刻な人権侵害を犯した個人や組織に制裁を課す人権侵害制裁法案(マグニツキー法)を全会一致で可決した。2日には下院でも可決し、今後は総督の署名を経て成立する。オーストラリアのマリズ・ペイン外相は今年8月、今年中にマグニツキー法を成立させると明言していた。新疆ウイグル自治区などで人権侵害を繰り返す中国共産党を念頭に置いたものと見られている。

オーストラリア上院、人権侵害制裁法案を全会一致で可決

オーストラリア議会上院は1日、深刻な人権侵害を犯した個人や組織に制裁を課す人権侵害制裁法案を全会一致で可決した。2日には下院に送付して審議を行い、年内の施行を目指す。

人権侵害制裁法案は国際的に「マグニツキー法」とも呼ばれている。同法案が可決されれば、オーストラリア政府は人権侵害を行った個人や団体の資産を凍結し、入国を拒否することが可能となる。同法対象はサイバー攻撃を行う者や海外の汚職高官も含まれる。

同国で「マグニツキー法」の議論が加速したのは今年8月、ペイン外相が米国やEUと足並みをそろえると発言してからだ。当時、中国共産党による新疆ウイグル自治区での人権侵害に対し、法整備を終えていた米国が英国とEUと共に制裁措置を発動させた。

オーストラリアのマリズ・ペイン外相は(Photo by LUONG THAI LINH/POOL/AFP via Getty Images)

「マグニツキー法」の制定のため、オーストラリアは国内法の改正を行い、政府が制裁を課すことができる範囲を拡大させた。この法案が可決されれば、オーストラリアの制裁法体制は、米国、英国、欧州連合(EU)、カナダなど他の民主主義国と同等の効力を揃えることになる。

ペイン外相は、同法制定で「オーストラリアが国際的な懸念事項について同盟国と同じような行動を取ることができる」と述べた。そして「私たちの経済システムから、悪質な行為に加担した者やその受益者を切り離すことは必要不可欠だ」と強調した。

国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の現地責任者エレーヌ・ピアソン氏は声明のなかで、「マグニツキー法」の可決は「重要なステップ」であり、「深刻な人権侵害を行うことの代償を引き上げた」と述べた。

オーストラリア下院、人権侵害制裁法案可決 対中共制裁で欧米と足並みそろえる 世界で34カ国目

オーストラリア議会下院は2日、人権侵害に関与した外国政府当局者に制裁を課す内容を含む「2011年自主制裁法」改正案を可決した。同様の法案は「マグニツキー法」と呼ばれ欧米諸国が導入しており、モリソン政権も足並みをそろえた。「マグニツキー法」により、オーストラリア政府は人権侵害を行った個人や団体の資産を凍結し、入国を拒否することが可能となる。同法の制裁対象にはサイバー攻撃を行う者や海外の汚職高官も含まれる。

ペイン外相は法案について、オーストラリアが「制裁対象とその資産にとっての避難所になることはない」と強調した。同様の法案がますます多くの国で施行されていることを「マグニツキー運動」と例え、志を共にする国々と行動を共にする意欲を示した。

今年3月、米国やEUが連帯して新疆ウイグル自治区の人権状況に「重大な懸念」を表明し制裁措置を発動させたが、オーストラリアは法整備が不十分なため具体的な行動を取ることができなかった。

法案審議にあたり、議会では中国共産党による複数の人権侵害の事案が取り上げられた。

労働党のオコナー議員は、昨年、中国武漢における新型コロナウイルス(中共ウイルス)感染拡大の状況をSNSで発信したため収監された女性市民ジャーナリスト・張展氏の例を挙げた。議員は、張氏が刑務所でハンストを続け生命の危険にさらされているにもかかわらず、当局は医療措置を施していないと批判した。

同じく労働党のワッツ議員は、香港の抗議活動に対する中国共産党政権の高圧的な取り締まりに言及したほか、少数民族や宗教マイノリティーへの弾圧に関する報告書を引用して議論を行った。

中国共産党を批判してきた自由党のジェームズ・パターソン議員は「オーストラリアはこの危険な世界において、自国の民主主義と主権、そして自由を守るための手段を手に入れた」と述べた。

マグニツキー法を推進してきた実業家のビル・ブラウダー氏は同日、「オーストラリアは、マグニツキー法が施行されている世界で34番目の国となった。世界的なマグニツキー運動への参加を歓迎する」とツイッター上でコメントした。

【引用記事】
https://www.epochtimes.jp/p/2021/12/82726.html

https://www.epochtimes.jp/p/2021/12/82778.html

 

オーストラリア議会上院で可決された人権に関する動議:法輪功関連

1999年7月に法輪功への迫害が始まって以来、オーストラリアの国会議員や元国会議員たちが迫害されている人々を支持しており、集会に参加したり、動議を支持したり、保護ビザ申請を支持したり、請願書を提出した。

2003年12月から2016年11月の間に、オーストラリア議会上院で4つの動議が可決された。最初の2つは、法輪功迫害の問題に具体的に対処しており、次の2つは、強制臓器摘出の問題に対処することを目的としていた。

  • 2003年12月1日 第704号動議
    (要約)上院は…オーストラリア国民の親族が法輪功を実践するために中国で継続的に拘禁されている問題を提起し、信仰の実践が個人の投獄の基礎を形成してはならないことを強調する。そして、オーストラリア国内での信仰の自由へのコミットメントを再確認し、嫌がらせを恐れることなく法輪功を実践するオーストラリア人の自由を認める。
  • 2008年6月24日 第127号動議
    (要約)「…市民的および政治的権利に関する国際規約は、世界中の法輪功学習者の扱いに適用され、…上院は、中国における法輪功学習者の迫害の終結を支持することを表明している…
  • 2013年3月21日 第1212号動議
    (要約)2013年3月21日、オーストラリア議会上院は、オーストラリア政府に中国での非倫理的な臓器摘出の慣行に反対するよう求める動議を満場一致で可決した…「この申し立ての規模とこの問題に対する国民の反応は驚異的です。この請願書に署名する人の数は、2012年にニューサウスウェールズ州参議院に提出されたすべての請願書に署名した人の3倍以上です。…
  • 2016年11月24日 外国での臓器調達に関する動議
    (要約)「上院は、次のように述べている。…国家主導のプロセスで処刑された囚人や良心の囚人からの強制臓器摘出を含む、外国での非倫理的な臓器調達手続きの報告について深く懸念している…」

【引用記事】
Australian Government – 法輪大法情報センター (faluninfo.net)

【関連記事】海外在住の法輪功学習者に対する中国共産党の邪悪な迫害の手口
【実話】法輪功の学習者、もう中国共産党の奴隷にはならない(回想録)

 

マグニツキー法先送りの日本、中国(人権弾圧側)の「避難先」になる?

「オーストラリア版マグニツキー法」と言える法案が出てきた背景に、中国の存在があるのは明らかだ。同国では、中国企業が2015年にダーウィン港の99年リース契約を地元州と結んだり、国内の有力政治家に中国マネーの政治献金が流れ込んだりするなど、中国側の浸透工作が表面化して近年問題になっていた。

衆院議員時代に超党派の「対中政策に関する国会議員連盟」で共同代表を務めた弁護士の菅野(山尾)志桜里氏は2日、ツイッターで今回のオーストラリアの動きに言及。「オーストラリアは人権弾圧者のSAFE HAVEN(避難場所)にはならない」と述べたペイン外相の発言を引き合いに、「このままいくと、先送りを続ける日本がSAFE HAVENになりかねない」と苦言を呈した。

関連記事:豪上院で人権侵害制裁法案が全会一致可決、菅野志桜里氏、日本も「待ったなし」

日本政府は、自民党の中谷元衆院議員が人権問題担当の首相補佐官に就任したものの、制裁法には慎重な構えを見せている。岸田政権はどこへ舵を取ろうとしているのか?

殺人国家である中国共産党の本質を見極め、民主主義国家間の信頼を裏切ることがないよう、切望する。