中国・新疆ウイグル自治区などでの人権侵害に反発する欧米諸国で、来年2月の北京冬季五輪をめぐり、開会式などへの高官派遣を見送る「外交ボイコット」を求める声が高まっている。
英タイムズ紙(電子版)は20日、2022年2月の北京冬季五輪を巡り、英国のジョンソン首相が選手団以外の外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を検討していると報じた。バイデン米大統領も18日に外交ボイコットを検討中と明言していた。欧州などでも議論が高まる可能性がある。
報道によると、外交ボイコットは米国での検討も踏まえて、英政府内で「活発に議論」されており、トラス外相がボイコットに賛成しているという。閣僚派遣は見送り、駐中国大使が出席する選択肢も考えられる。
アメリカに続き、イギリスではジョンソン首相が、来年行われる北京オリンピックの外交的ボイコットを検討しているとのことだ。
時事ドットコムニュースによると、欧州では、英下院の外交委員会が6月、新疆の人権問題を受け、政府当局者による五輪式典の全面不参加を勧告。7月には外交ボイコットを求める非拘束決議が採択された。政府の方針は未定だが、決議案を主導したロートン議員(保守党)は「トラス外相が真剣に検討しているようだ」と述べ、ボイコット発動に期待を示した。
欧州議会も中国の人権問題に厳しい姿勢を見せる。7月8日に採択した決議では、中国政府が香港や新疆などでの人権侵害について「検証可能な改善」を示さない限り、政府代表や外交官に対する北京五輪への招待を辞退するよう加盟国や欧州委員会などに求めた。
欧州連合(EU)のミシェル大統領は15日、習氏との電話会談で、中国の人権状況への懸念を改めて表明。人権問題をめぐる対話継続の必要性を訴えた。
ドイツは政権移行期ということもあり、正式な立場は表明していない。ただ、第1党として政権獲得の可能性が強まる社会民主党(SPD)のフライターク下院スポーツ委員会委員長は11日、DPA通信に対し、ペロシ氏が提案した外交ボイコットに「共感する」と表明している。
一方、中国外務省の趙立堅報道官は19日の定例会見で、米大統領の冬季五輪外交的ボイコットの検討発言に対する立場を問う質問に「新疆ウイグル自治区の問題は中国の内政だ」と釘を刺した。
趙立堅報道官は「(新疆ウイグル自治区の問題に対して)外部勢力がいかなる名目と方式によって干渉することを容認しない」とし「米国が人権問題と関連して中国を非難するのは事実と一致しない」と主張した。
続けて、「米国が新疆ウイグル自治区に強制労働が存在すると中国を非難することは、中国人の立場では冗談にしか映らない」とし、五輪に対するボイコットはスポーツを政治化することであると米国を非難した。
日本ではどうなのか。自民党内では中国の人権状況を問題視する議員を中心に「人権問題が改善されなければ、北京五輪に政府派遣はすべきではない」との声もある。中国政府もこうした声を警戒しており、孔鉉佑駐日大使は今夏以降、自民党議員に接触して日本政府の要人派遣に反対しないよう働きかけている。
19日、岸田文雄首相は首相官邸で、バイデン米大統領が人権問題などで北京冬季五輪での「外交ボイコット」検討を明言したことについて、記者団の質問に「それぞれの国で立場や考えがあると思う。日本は日本の立場で考えていきたい」と答えた。
首相はその後、毎日新聞などとのグループインタビューで「現状は何も決まっていない。(今後)いろいろな動きも生じるだろうし、日本の国益も考えながら総合的に判断していく」と語った。
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ニューヨーク市に本部を置く人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)によると、中国政府は五輪を利用して「自分たちによる人権侵害を隠し、世界がそれを認めているかのように見せかけている」と非難した。
日本政府は欧米と共通する『自由』『民主』『人権』といった価値観に基づき、行動しなければならないと同時に、中国の法輪功やウイグル、チベット、南モンゴルなどの人権弾圧に対する明確な姿勢を示すべきだ。特に今世紀最大の人権侵害である、法輪功への迫害を忘れてはならない。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB201D80Q1A121C2000000/