中国の臓器移植について、かねてから違法な臓器売買が行われているとの懸念があるなか、中国の複数の地方行政機関がこのほど、移植手術に使用する心臓や肝臓等の臓器取得にかかる基準価格を設定し、発表した。では、臓器基準価格を公表したそのワケとは何なのか。
移植用臓器に価格設定
大紀元によると、河南省の衛生や財政、市場監督等の6つの行政部門は、移植用臓器の取得にかかる基準価格を発表した。価格は臓器そのものの「価格」のみならず、臓器の機能維持や摘出、保存輸送などで生じるコストに応じて設定されているという。現地紙「大河報」が10月28日、報じた。
公開された価格リストによると、成人の肝臓が26万人民元(約461万円)で、子供が10万人民元(約177万円)となっている。成人の腎臓1つが16万人民元(約284万円)で、2つだと23万人民元(約408万円)となる。そのほか、心臓1つが10万人民元(約177万円)、角膜1つが1万人民元(約17万円)だ。
移植用臓器に価格を設定する動きは他の地域でも見られた。湖北省の衛生健康委員会は8月30日、移植用臓器の取得にかかる基準価格の設定についてパブリックコメントを募集した。広東省でも9月22日、同様の事柄にパブリックコメントを募集していたことが確認できる。
中国北部の大都市・天津では、医療機関が「臓器調達機関(OPO)」を成立させた。臓器調達機関とは一般的に、移植用臓器を調達し、評価を行う組織で、米国では、非営利のNPO法人の形式を取る。
いっぽう、天津では天津市第一中心病院に臓器調達機関が設置され、他の複数の病院と共同で運営する方針となった。そして、天津市第一中心病院が臓器調達機関に代わり、臓器の基準価格を9月6日に発表した。
臓器基準価格を公表したそのワケとは
中国の移植用臓器は、法輪功学習者以外にもウイグル人やチベット人からであるとの調査報告が十数年前から指摘されている。
中国の臓器移植問題を追跡してきた国際団体「中国での臓器移植濫用停止 ETAC国際ネットワーク」のスージー・ヒューズ事務総長は、英デイリー・メール・オーストラリアのインタビューで、中国当局発表の1万件よりもはるかに多い移植手術が行われていると、統計報告を引用して語った。
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この統計は、中国臓器移植問題について十数年にわたり警告を発してきた、デービッド・マタス弁護士、デービッド・キルガー氏(カナダ元閣僚)らによる「Bloody Harvest/ The Slaughter:更新版」(2016年6月)にある。中国移植病院の収益、病床利用率の統計、手術チームの数を分析、中国各地域の保健当局、病院の資料を元に推計している。
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中国共産党による法輪功学習者への弾圧および臓器収奪問題を追跡する国際NGO「法輪功迫害追跡国際組織(WOIPFG、略称:追査国際)の責任者・汪志遠氏は、臓器の取得価格の公表について、中国共産党が国際的に非難を受ける臓器収奪疑惑を否定し、移植事業を「公認」して正当化を図っているのではないかと分析する。また、臓器売買といった医療ビジネスを助長しかねないと警鐘を鳴らした。
汪志遠氏は、臓器基準価格の公表の目的は「1つ目は、中国共産党による臓器移植の闇から人々の関心をそらすこと。2つ目は、(移植用臓器に)値段をつけることで、臓器が売買できることを明確に伝えていること」だと述べた。
追査国際の調査からは、中国共産党が長期にわたって臓器の代金を請求していたことが分かっている。一方、中国衛生当局は、臓器が「自主的な有志者からの」提供であると主張している。