澤西さんは、中国最大の経済メディアグループでニュースセンター記者部の主任を務めていた。最近、『中国禁聞』の独占インタビューに応じ、中国共産党(中共)の管理下にあるメディアの実態や、ニュース捏造の実情について詳細に語った。
ベテランジャーナリスト 澤西さん
「たとえ100件のニュースのうち99件が実際に起きた負の出来事であったとしても、当局はそれらを一切取り上げません。代わりに、いわゆる“正のエネルギー”を持つニュースだけを選び、中共を称賛する内容に仕立てます。中共の支配下において、報道に携わることは非常に屈辱的な職業になってしまいました」
澤西さんは、中国最大の経済メディアグループで20年以上にわたり勤務し、ニュースセンター記者部の主任を務めた。これまでに執筆した経済に関する調査報道や評論記事は、総計100万字を超える。長年の経験と観察に基づき、澤西さんは中国のメディア環境を4つの主要な領域に分類している。
澤西さん
「第一のカテゴリーは、新聞や雑誌、テレビ、ラジオなどの伝統的なメディアです。第二のカテゴリーは、インターネットメディアで、主に官製メディアの公式サイトを指します。伝統的なメディアは、各級の党の宣伝部門によって管理されています。私の知る限り、世界で宣伝部のようなイデオロギー管理機関を有する国家は、ごくわずかしかありません。この管理体制は縦割りの構造を採用しており、上から下へと一段階ずつ圧力をかけ、下から上へと責任を問う仕組みになっています。この縦割りの統制システムが結果的に、自発的な自己検閲へとつながるのです」
澤西さんは、中国のメディアが長年にわたる統制下に置かれている結果、すべての記者や編集者が自ら検閲を行い、問題を起こさず、党のレッドラインを越えないことを最優先にしていると明かした。また、全国で唯一、新華社だけが一部の敏感な話題を取り扱うことができるが、それも内部資料として作成され、一般には公開されない。さらに、中共にとっての敏感な話題は非常に多岐にわたり、限りなく存在すると指摘した。
澤西さん
「例えば、中共には「7つのタブー(七不講)があり、普遍的価値の否定、報道の自由の否定、市民社会の否定、市民の権利についての言及禁止、党の歴史的誤りの指摘禁止、特権階級の批判禁止、司法の独立についての言及禁止です。これらの話題を報道すれば、その記者自身だけでなく、所属するメディアの責任者にも影響が及ぶ可能性があります。さらに、六四天安門事件、法輪功※、新疆、チベット独立、ダライ・ラマ、台湾独立、香港の民主化運動なども報道禁止の対象です。その他、権利保護運動、陳情、医療トラブル、重大事件や災害に関する話題なども報道が制限されています」
澤西さんはかつて、大規模な不動産取引紛争の取材を担当した。事実関係は明確で、証拠も十分に揃っていたが、長時間にわたる取材の末、最終的に編集長によって掲載が却下された。その理由は、多くの政府高官が関与していたためであった。
澤西さん
「要するに、中共の安定に関わるあらゆる話題が『敏感』とされ、現在の中共にとっては『社会の安定維持』が最優先事項となっています。この異常なまでの過敏さの中で、どうやって真実の報道ができるでしょうか?もはや報道の自由は存在しません。その一方で、ニュースの捏造が横行し、特に中国中央テレビ(CCTV)では顕著です。例えば、習近平が地方視察に訪れる際の報道を考えてみてください。実は、訪問の1〜2か月前にはすでに現場の『清場』が行われています。ニュース映像で彼の周りにいる市民は、すべて厳選されたエキストラであり、厳格な政治審査を経た人物だけが出演を許されています。また、出演者には暗黙の圧力がかけられ、もし不適切な発言をしたり、政府の意向に沿わない行動をとったりすれば、家族にまで影響が及ぶと脅されることもあります。これは、まさに暴力団的なやり方と言えるでしょう」
メディア環境の分類について、他の2つのカテゴリーは民間に属す。
澤西さん
「第三のカテゴリーは、大手民間ニュースサイトです。これらも厳格に管理されています。専用の統制機関こそ設置されていませんが、その上には『国家インターネット情報弁公室』が存在し、ウェブサイト運営者に対して圧力をかけます。そのため、サイトの経営者は編集部に指示を出し、会議を開いて統制を強めるのです。これは実質的に、管理組織が存在する状態に等しいのです。第四のカテゴリーは、個人メディアです。この分野は比較的自由に見えますが、全く管理機関がないわけではありません。たとえば、WeChatの運営会社には検閲システムがあり、『国家インターネット情報弁公室』の指示に従っています。そのため、アカウントやグループが突然凍結されることが頻繁に起こります。私自身も4〜5回アカウントを凍結されましたが、これは比較的少ない方です。私の知人の中には、20回以上アカウントを凍結された人もいます」
個人メディアの分野は一見すると比較的自由に見えるが、個人に直接関わるため、一般市民への影響が最も直接的に及ぶ分野でもある。
澤西さん
「私の友人の一人は、WeChatのグループチャットで『習近平の就任は憲法に違反しており、選挙を経ていないため違憲だ』と発言したことで逮捕され、8か月の懲役刑が下されました。彼によると、運が良かった方だそうです。同じような発言をした別の人物と一緒に裁判を受け、関係者が働きかけたことで2人とも8か月の刑に軽減されました。しかし、当初の判決では4年の刑が求められていました。彼が釈放された後、一緒に食事をしましたが、彼は以前とはまるで別人のように衰弱し、精神的にも疲弊していました。大まかな統計によると、ここ数年で言論に関する発言を理由に拘束された人は全国で20万〜30万人にのぼるとされています。その中には、いまだに獄中にいる人も少なくありません。これが現在の中国の言論環境なのです」
澤西さんは、このような環境の中で、職業倫理を守り続けるメディアは極めて稀な存在となっていると指摘している。また、多くのジャーナリストは当局の意向に従わざるを得ず、良心に背きながら選択的な報道を行わざるを得ない状況にあるという。
※法輪功:
1992年中国で伝え出された気功で、身体の健康と道徳心の向上に顕著な効果があったため、わずか数年の間に1億を超える人々に愛好されるようになった。ところが、当時の国家主席江沢民(2022年11月30日死去) は、法輪功の爆発的な人気に強い嫉妬心を抱き、自らの権力を乱用して中国共産党を利用し、1999年7月20日に法輪功への弾圧を発動した。以来、法輪功愛好者は不法逮捕や拷問、強制労働、性的虐待や集団レイプなど、更には「生体臓器狩り」にまで及ぶ残虐な迫害を受けている。
しかも、この弾圧を正当化するために、中共はあらゆる手段を使って国内外へ虚偽の情報を流布し、法輪功を徹底的に悪者に仕立て上げた。その結果、世界中の多くの人々が毒害を受け、法輪功について誤解し、憎悪が増幅した。
中共は、このような残虐な手段と残虐な手口で爆発的に人気のあった法輪功に対する迫害を今なお続けていいる。
【引用記事】NTDジャパン(2025年3月10日)