香港では「シンプソンズ」の天安門エピソードが見られない? 中国の検閲強化か

時事

香港で今月、ディズニー公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」が始まったが、米国の人気アニメシリーズ「ザ・シンプソンズ」シーズン16のエピソード12が配信されていないことを利用者らが発見した。


エピソード11と13は視聴可能だが、12は見ることができない。今年になって香港より先にDisney+が導入されたシンガポールでは週末、12も視聴可能だったという。

このエピソード12は2005年に初めて放送され、シンプソンズ一家の中国旅行を描いたもので、1989年の天安門事件にも触れている。

一家は北京の天安門広場に行き、その中で「この場所では1989年、何も起こらなかった」と記された記念碑が登場する。これは、民衆を武力弾圧した事件の風化を図る中国共産党当局を揶揄している。

ほかにも一家の母親マージが戦車の前に立つ描写もあり、実際に天安門事件で1人戦車の前に立ちはだかった青年「タンクマン」を暗示した。

毛沢東についても、同エピソードでは、シンプソン一家が、中国共産党の指導者だった毛沢東の遺体安置場所も訪問。主人公(父親)のホーマーが、「5000万人を殺した清き人だ」と話す場面がある。

シンプソンズの作品検閲により、中国共産党当局が香港で大陸式の検閲手段をさらに強化するのではないかとの懸念が広がっている。

ロンドンを拠点とするSOAS中国研究所のスティーブ・ツァン所長はウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に対して「自己検閲であれ、直接的な検閲であれ、ディズニーやその他の米国企業が中国市場の重要性を計算した結果だ」「中国(共産党)政府が目的を達成するために、市場規模に基づく経済力を利用することによって自身の目的を達成しようとしている」と述べた。

香港バプテスト大学で映画検閲を専門に研究しているケニー・ヌン准教授は「米国のストリーミング大手が香港でコンテンツを検閲し、周知となったのは今回が初めてだ」と指摘。「基本的にストリーミング各社は全体のストーリーを中国の視聴者向けに加工し、中国政府を怒らせないようにしている。中国で稼ごうとする企業が増えており、今後もこうしたことが続く公算が大きいと」と述べた。

10月27日、香港では「国家の安全を守る」ためとし、新たな映画検閲法が可決された。中国当局の利益や中国の国家安全保障に悪影響を与えると見なした映画を対象としている。違反者には、禁錮3年や罰金100万香港ドル(約12万8400ドル)の刑が科せられる可能性があると定められている。

【引用記事】
大紀元「ディズニープラス、香港で開始「シンプソンズ」天安門事件の回は配信されず」
Bloomberg「ディズニー+、香港で「シンプソンズ」の天安門事件巡る放送回外す」